山村美紗サスペンス「殺意の果てに」 2015.08.11


笛木透55歳弁護士である。
後輩の中村弁護士と共同で法律事務所を構えているがセクハラのえん罪を晴らしたり労災を認定させたりと儲けにならない仕事ばかりを手がけているので台所はいつも火の車である
(笛木佐知)お父さん!すみません…私が。
(中村弁護士)重いよ。
じゃ事務官と次の日程詰めてきますから。
(笛木透)頼むよ。
ごくろうさま。
(発進する車の音)
一人娘の佐知…昨年国立大学の法学部を出て司法試験に臨んだが失敗。
今はいわゆる司法浪人である
(急停車する音)お父さん!ああ。
(少年)テメエ…この野郎!ヘッヘヘ…。
やっちまえ〜。
この野郎!こら〜っ!何をする!
(少年)やべえ!行くぞ〜!大丈夫ですか?
(飯島貢)え〜い!畜生!ああ…痛い痛い!うるせえ〜っ!チキショウ…。
お父さん…病院へ。
うん。
さあ…。
痛てえ…。
ほっといてくれよ〜!ご苦労さまです。
通報をくれた方ですね?はい。
で…被害者は?今中で治療を。
どうぞお入りください。
(医師)少し打ち身傷がありますが骨に異常はなさそうです。
そうですか。
念のため今夜は入院を…。
変化があれば明日CTで診ましょう。
これに患者さんのお名前とご住所を…。
はあ…それが私たち行きずりでして…。
うう…あ〜あ…うう…。
こら!君…。
起きなさい!警察だ!ああ…?あ〜っ!あなたの名前と住所は?住所なんかねえよ。
家はどこなの?家は…ダンボールだ。
そうか…。
どんな男にどういうふうにやられた?忘れた!忘れたって君!警察は大嫌いなんだ!帰ってくれよ!君…!わ〜っ!何にも無いわね。
名前は書いてないか?無いわ…。
あれ!?何か入ってる…。
六法全書だ。
飯島貢。
関東刑務所だって…。
刑務所の許可印だ。
許可印って?受刑者がこの本を持っていてもよいという許可のハンコだよ。
じゃあの人刑務所に居たの?
(ドアをノックする音)
(石川所長)やあお待たせ…。
所長しばらくです。
まあどうぞ…。
受刑者に面接?それともまた冤罪ですか?あいや…実はホームレスとかかわって入院させたんですが名前も住所も言わないんです。
そしたら所持品の中にこれがあったんで…。
ほう…ここの検印ですね。
飯島貢…。
あああの飯島!ご存じでしたか…。
(電車の走る音)ごめんください。
飯島さん。
飯島さ〜ん!
(ドアを開ける音)失礼…飯島貢さんのお宅ですね?
(飯島太一)居ねえよ。
じじいは出てった。
他にご家族は?おふくろ。
(子供たちの声)飯島弓江さんですね?
(弓江)はい。
飯島貢さんの娘さん?そうですが…。
父に何か?俺は帰る。
いけません!今迎えの方が。
そんなの来ねえよ!来ますよ…あっ!行く!待ってください!離せ!駄目です。
いいんだったら!痛い…。
お父さ〜ん!お前どうしてここが…!?飯島さん…これあなたのですね?あんたは?心配いりませんよ。
住所が知りたかっただけで何も詮索しませんよ。
さっき診察を受けて異常はないそうです。
いろいろとありがとうございました。
さ…お父さん帰ろう。
俺は帰らない。
何言ってんの家に帰るのよ…。
あんなとこは俺の家じゃねえ!お父さん待って!さあ家に帰ろう。
ねえ…お父さん!ええ〜い!離せ!お父さん。
うん。

(ドアを開ける音)さあ…お父さん。
じじい!もう帰らないって言ったくせに!ナニ!太一!…お父さんも。
(弓江)太一〜!太一!急ぎますか?あいいえ…。
3時までに戻れば…明日の支度だけですから。
まだ時間ありますね一休みしませんか?・
(店内のBGM)
(ウエートレス)お待たせしました。
何か事情がおありのようですが…。
はあ…。
詮索する気はありませんが…話していただければお手伝いできるかも…。
はあ…。
あの男の子は学校へは?まだ中学生ぐらい?ええ中3です。
実は…それで困ってるんです。
よろしかったらどうぞ…。
ああ…私弁護士です。
プライバシーを洩らすようなことはしません。
はい…もうご承知のように父は関東刑務所に入ってました。
どれくらい?ちょうど15年です。
15年も!?一体…何を…?…それが…。
ううっ!あっ…あっ…お恥ずかしいことですが…。
そうでしたか…。
しかし15年といったら満期でしょう?…はい。
普通は3分の2くらいで仮釈放になるんですがねえ。
はい…。
父は無実だと言い続けてたんです。
無実?冤罪だということですか?はい。
あの中でもそれを訴え続けて…。
なるほど…だから仮釈放にならなかった。
はい…でやっと満期になって…娘の私が迎えに行ったんです。
父は私が結婚してると思ってました。
なさらなかったんですか?約束した人は居ましたが父の事件が起こり「殺人犯の娘とは一緒になれない」と…。
別れたんですね?別れたというか捨てられたというか…。

(佐知)じゃあの男の子は?その時もうあの子がお腹に…。
随分悩みましたが決心して産みました。
孫が生まれたことは伝えてあったんですが父親のことは…出所したとき初めて告げたんです。
ここよ。
ほう…。
(ドアを開ける音)太一…。
おじいちゃんよ!太一!ああそうか…。
お前が…太一か。
うん…大きくなって…。
おお…いくつだ?…15歳よ。
15歳か…そうだよなあ。
あの後すぐに産まれたんだからな。
よく…育ってくれたなあ太一…。
…ん?どうした?太一…お前のおじいちゃんだぞ。
おい!太一!太一ったら…慣れるまではと思ったんですがず〜っと駄目でした。
口もきかず…顔も合わさず。
そのうち学校の友達がどこからか聞きこんできて「刑務所帰りの家」とか「お前は殺人犯の孫だ」とか言って…。
ちょっと!何すんのよお!金だよ!金はどこだ!やめなさい!金よこせよ!太一!この…バカ!何しやがる!テメエが来たんで俺は殺人犯の孫だって言われんだぞ!違う!じいちゃんは殺ってねえ…無実だ。
デタラメ言うな!デタラメじゃねえ!これ見ろ…こうやって「再審願」を書いて何度も何度も最高裁へ…。
何度やっても駄目じゃねえか!アイツら聞く耳持たねえだけだ。
違うわい。
テメエが嘘つきなんだ!何だと!殺人犯は死刑になれ!太一!さっさと縛り首になっちまえ!太一…お前はそんなにこの…じいちゃんが…。
大嫌いだ!消えて無くなれ!そうか…分かった…。
分かったよ!消えてやるよ!お父さん…。
二度と帰って来ねえからな!お父さ〜ん!そうですかそれでホームレスに…。
はい…。
警察に人捜しをお願いしようとしてたその矢先に…こんなご迷惑をおかけして…。
いえいえ…それでお父さんの事件はどこで?高山です。
岐阜県の高山?はい。
(村山奈津)また首突っ込むんですかお金にならない仕事に?冤罪かもしれないんだ。
ほっとけないだろう。
だって…その男弁護士は嫌いなんでしょ?それをわざわざ…。
じゃ横浜の件頼んだよ。
ええ…僕もそこまで一緒に。
先生!もっと稼げる仕事をしてください。
ここの家賃も払えなくなるんですよ。
(ドアを閉める音)んもう…。
ふ〜っ…。
あんたには助けてもらったが…。
でも俺は弁護士なんて信用してねえんだ。
ふん…話すことなんて何もねえよ!しかし…15年もの間六法全書まで読んで無実を言い続けた…。
それなりの根拠があるはずでしょう?根拠も何も…。
殺ってねえものは殺ってねえんだよ!それを…検事も裁判官も弁護士までもが話を聞いてくれなかったんだ。
ヤツらには人間の声が聞こえねえんだ。
それを…私に聞かせてください。
ふん!フフフ…。
聞いたからって何が分かんだい!ムショってとこはな檻の中なんだよ。
鉄格子の向こうに少しだけ空が見えるんだよ。
あの空の下に帰りてえ…。
うっ…帰りてえってどんなに思ったことか。
入ったことのねえヤツには分かんねえよ。
仮釈放の話があったでしょう?ああ10年目にな。
3分の2だから出してやってもいいが…。
こんなものが…。
こんなもの書いてるうちは絶対に出せねえって…。
日記ですか?これは…!?カレンダーよ。
1日が終わると塗りつぶす。
毎日毎日…。
毎日毎日…。
365日がどれほど長いか…。
これが15年も…。
朝起きて書いて夜寝る時書いて。
これを書いてるかぎり仮釈放にはしないと…?…ああ…。
出たかった…娘のところに帰りたかったよ。
だから…書くのをやめて出してもらおうと…何度思ったことか…。
でも…俺は殺ってねえんだよ!書くのをやめたら認めたことになる。
…やっぱりできねえ…。
だから…書き続けたんだ。
それ…書くことで辛抱したんだ。
飯島さん…。

(貝塚美樹子)はい…貝塚法律事務所。
まあ!先生…いきなりどうなさったんです?いやあ…久しいね。
何年になるだろう?今年でちょうど17年です。
ほう…そんなになるか。
いつも年賀状ありがとう。
ああ…いいえ。
で突然のお電話…私に何か急用ですか?
(鉄橋を走る列車の音)
(駅の騒音)先生〜っ!うわ〜っ…。
お会いしたかった。
厄介なことを頼んですまないね…。
いいえ…。
で…事件の概要はもうつかめた?はい分かる範囲ではほとんど…。
ところで先生あの事件の時の刑事部長は私の父だったんです。
何だって!?狭いところですがどうぞ…。
これが犯人の飯島貢。
「太陽電気」のサービスセンターに勤めていて電化製品の修理にこのバイクに乗ってたそうです。
彼がレイプし絞殺したという被害者の「盟輪製機」工場長夫人遠山信子当時38歳。
夫の栄…45歳。
今はマンションですがこれが当時の遠山家。
「盟輪製機」が社宅として借り上げてたものです。
なるほど…。
この写真君は…どこで?裁判所と新聞社とそれから父の名前を無断借用して警察から…。
そう…たった5日でこれだけのものを…。
さすが貝塚君だ。
いいえ…。
で飯島は遠山家に度々修理に来ていて夫人とも顔なじみで家の様子も知ってたようです。
それで修理に来て犯行を…。
はい…家の角でバイクを止めて勝手口から侵入…。
飯島:奥さん!
(遠山信子)何なの!?今時分。
奥さん!あっ!何するのよ〜!奥さ〜ん!や…やめて!この〜!く…く苦しい!で…抵抗されたので首を絞めレイプ。
事後絞殺したと彼は自白してます。
自供してるんだね?はい。
この起訴状もそうなってますが…。
公判では一転して無実を主張してるんです。
飯島:殺ってない。
私は殺ってない!
(裁判長)その発言を禁じます。
被告人は聞かれたことだけを答えてください。
(飯島)遠山さんの家に最初に伺ったのは約半年前です。
直りましたよ。
はい…どのチャンネルもいいようです。
どう…電気屋さん飲めるんでしょ?えっ!?いやいや駄目ですよ。
いいじゃないの一杯ぐらい…。
いけません。
まだ仕事中なので…。
いいからホラ…。
それじゃ。
失礼しま〜すそれからも冷蔵庫などの修理で度々呼ばれているうちに気安くなり一杯ぐらいならつきあうようになったそうです。
さあどうぞ…。
ああすみません。
でも…奥さんのように昼間から飲んでたら体こわしますよ。
いいのよ。
飲んでる時が私の天国。
お酒に救われてるの…。
そうはいっても飲みすぎると今に入院なんてことにも…。
フフフ…。
(遠山栄)信子…信子!
(ドアが開く音)あら!どうしたの?書類取りに…何だまた飲んでるのか!ご主人ですか?奥さんにアルコールを控えさせないと体こわしますよ。
何っ!?この人優しいでしょう?サービスセンターの…。
飯島と申します。
それじゃ私はこれで失礼します。
ご苦労さま〜。
ごちそうさまでしたそしてまた何日か後何かの修理で呼ばれて行くと。
失礼しま〜す。
遅くなってすみません。
奥さん!?奥さん…こんなところに寝てると…風邪ひきますよ。
さあ…奥さん…。
う〜ん。
はい奥さん。
抱いて〜っ!いや…あの…奥さん!はあ〜ん!奥さん…。
いけませんよ!ご主人に…。
あんなヤツいいの!女を作って…私はほったらかし。
仕返しよ!いや…奥さんちょ…ちょっと…。
ふう〜ん!奥さん…いけません!それで「つい関係を持ってしまった」と公判ではそう証言しています。
なるほど。
で事件当日についてはどんな証言を?あっああ〜っ!奥さ〜ん…。
(外に車が止まる音)あっ!!…うちの人!それは当日の…何時頃?夜の8時頃だったと飯島は証言しています。
被害者の死亡推定時刻も8時から9時。
この解剖所見にそう書かれています。
その証言どおりだとすると帰って来た夫が…。
いえ夫はまだ帰ってません。
えっ!?その時間彼は行きつけのバーに…。
アリバイも証明されてます。
すると死体の発見者は?その夫ですが12時頃タクシーで帰って発見しすぐに110番を。
じゃ車の音を聞いて奥さんが「うちの人」と言ったのは…?嘘…。
つまり…被告の作り話とされました。
で「奥さんとは合意のうえ」という彼の主張は退けられました。
全くの作り話とも思えないが…。
だとしたらどうして自分が殺ったと…自白を?その点はこう言ってます。
裁判長:合意だと言うならなぜ自供したのですか?
(飯島)私は酒に救いを求めている奥さんがかわいそうでかわいそうで…。
道ならぬ仲になってからはその思いが一層強くなり奥さんを…本当に好きになってしまいました。
奥さんも私のことを好いてくれて…。
ああ〜っ!うれしい〜。
このまま死んでもいい…。
奥さん…。
あ…ああ〜っ!あんなヤツの女房でいるよりあなたに抱かれて…このまま死んだ方がどれほど…幸せか…。
ねえ…殺して。
私を…殺して!奥さん!さあ…早く!ギュッと絞めて!奥さん…。
かわいそうな奥さんが楽になるのなら…一思いに絞め殺して自分も死のうと…。
私は…女房に先立たれた独り者。
娘にも結婚相手が決まったことだしいつ死んでもいい。
…それなら…大好きな奥さんと一緒にと…。
結局はできませんでしたが…。
あの時はそう思いました。
心では殺していたんです。
だから警察で昼も夜も責められ続けて…頭がぼ〜っとなった時刑事さんに…。
(山梨刑事)殺ったろう!この野郎!え〜いっ!ほ〜ら!
(飯島)ハアハアハア…。
吸いな…。
ほ〜ら。
…どうも…。
お前の好きだった奥さんは死んだが…お前が強情張ってんでかわいそうに…まだ仏になれんでほ〜ら…この辺りを…うろついとるんだわ。
いいかげんに成仏させてやれよ。
その方がお前も楽になるよ。
な…肩の力を抜いてさ…。
《奥さん一人で成仏できんじゃかわいそうだから…。
それなら死刑になって一緒にあの世に行こうと…》殺ったな!殺ったんだな!あ…あ〜っ…。
う…ううう…
(泣き声)
(貝塚悠造)この間からそんなこと調べとったんか?わしの名まで騙りよって。
そうではなくてお父さんが有名人だから貝塚の名を出すと警察が親切に教えてくれるのよ。
この親不孝もんが!すみません。
私が頼んだんです。
この飯島という人は一貫して無実を主張してますので何か根拠があるのではと…。
根拠もクソも…。
わしらの捜査に間違いはない!しかし獄中で15年も無実を訴え続けたということは…。
バカな男やさ。
ねえお父さん。
彼の主張もまるで嘘とも思えないけど…。
嘘に決まっとる。
考えてもみい。
工場長夫人ともあろう女性があんな男に色目を使うと思うけ?あヤツは流れ者の臨時雇いやったんや。
ヤツの作り話や。
お言葉ですが…。
(悠造)あ?今「流れ者の臨時雇い」と言われましたが取り調べでそのような偏見があったのでは?偏見?ええ。
こう申してはなんですがとかく警察は身分の不安定な人たちを差別する傾向があるように思うんです。
私が扱った事件でもある板前さんが…。
差別なんかないわい!「包丁一本晒に巻いて…」じゃねえが体ひとつで流れ歩くヤツの証言は信用できんのや!しかしそれが差別でしょう。
そういう先入観が冤罪を生むんじゃないですか?じゃあんたわしらが冤罪をでっちあげたとでも?失礼な!美樹子帰ってもらえ!お父さん!お前の恩師か何か知らんが警察を目の敵にする弁護士は大嫌いじゃ。
帰りたまえ!お父さん!お父さん…。
(山梨)それでお父さんにどなられたんかな?そうよ。
話にならないから山さんに聞こうと思って…。
強引だったんでしょ当時の取り調べ?まあな強引さもなかったとはいわんがその飯島の事件の時はお父さんのためでもあったんやさ。
父のため?ああ貝塚部長は初田署の署長栄転が内定しておってな。
だから早よヤマを片づけて勲章にしてやりたかったんや。
それで強引に自白を?強引強引ってあんた警察の持ち時間はたったの48時間や。
その間に吐かせて検察に送らにゃならんから多少の強引さはしかたないんやさ。
どこの警察でもやっとることやさ。
そうですか…。
山梨さんもうひとつお聞きしますが死体を発見したのは被害者の夫でしたよね?ああ確かそうやった。
第一発見者を疑うのが捜査の常識では…?そんなこと言われんでも夫のアリバイは部下の若い者がちゃ〜んとウラ取ってきてる。
うん。
公判の記録でも一応アリバイは証明されてる。
一応やない。
だから飯島の言い分は通らなかった。
裁判長ともあろうお人が臨時雇いの作り話に騙されるかいな。
(山梨)そうやろ!?流れ者の臨時雇いか…。
ええ二人ともそう言ってましたね。
先生は?あコーヒー。
じゃ2つ。
お父さんを怒らせてしまったが警察や検察にそういう先入観がなかったとは言えないな。
ええ私もそう感じました。
裁判官までがタクシーの運転手を「雲助」と表現するんですものね。
うん…。
さてこの先どう洗うか…?私はまず第一発見者の夫に会うべきだと思いますが…。
私もそう思う。
だからその人を捜してみるよ。
ご一緒します。
そこまで君につきあわせるわけにはいかない。
なぜですか?お父さんをますます怒らせる。
慣れてますから…。
そう軽いことではないよ。
ことによると捜査側の過ちを暴くことになるんだよ。
かまいません。
そうはいかないよ。
さっき山梨さんも言ってたね。
署長になるお父さんの勲章にするために取り調べを急いだって。
明らかに警察の点数稼ぎですね。
そのために無実の人を罪に陥れたとしたら見逃せない。
たとえ君のお父さんでも…。
先生だからやらせてほしいんです。
太一!いいからよこせよ!俺の金ダメだ!よこせ!あっ!何するの!何すんだよ!おじいちゃんに何するの!テメエに関係ねえよ!待ちなさい!大丈夫ですか?ああ。
なんだこりゃ?これだけか?ふざけんなよおい!邪魔なんだよ!やめなさい!なんだテメエはよ!ババアに用はねえ。
ババアですって!?いいから来い!何すんだよ!離しなさい!痛てててっ。
うっ!乱暴すると許さないわよ!うるせえ!えい!やぁ!俺にも空手教えてくれよ。
ダメ。
おじいちゃんに乱暴する子には教えられない。
もうしねぇよ。
本当に?約束する?する。
(玄関のチャイム)は〜い。
ただいま。
お帰りなさい。
いい匂いだな。
佐知のビーフシチューお母さんの匂いに似てくるな。
お父さんお風呂沸いてるよ。
ありがとう。
いやあうまい!あいや…こっちをいただこう。
う〜ん…うまい!佐知いつも母親の代わりをさせてすまないと思うよ。
何よ今更…。
いや本当だよ。
この前の試験の時はかわいそうだったな。
母さんのガンが見つかって入院…お葬式と…。
しかたなかった。
今度こそ合格してもらわないとな。
さあ今度もどうかな〜?おいおい…空手ばかりやってちゃ困るよ。
いいかげんにしないと彼氏も見つからないぞ。
お父さんはどうだったの何年ぶりかの恋人?恋人じゃない。
ゼミの学生だった人だよ。
でもその人お父さんに準じて大学やめたんでしょ?別に準じたわけじゃない。
でもすごいよね。
大学中退で一発で司法試験通っちゃう…。
あ〜あ私もそういう頭に産んでもらいたかったな。
悪かったな。
先生…!すみません。
君は昨日大阪に?はい。
遠山氏を調べておこうと思いまして…。
すまなかったね。
いえ。
でも特別なことは何も…。
事件の後2つほど地方の工場長を務めて現在はここ大阪本社の常務取締役。
ほぉ出世したもんだね。
あの後再婚した女性がオーナー社長の遠縁の方とか…。
そう。
しかしそういう人と新しい生活を築いていると昔のことを素直に話してくれるかどうか?あの事件は既に決着してますが今更何を知りたいのですか…?たまたまその犯人とかかわりが出来弁護士としてちょっと興味を持ったもので…。
当時のことを被害者の立場からお聞きしたいと思い…。
なんに興味があって…。
あんな忌まわしい事件など思い出したくありませんね。
不愉快な思いをさせまして…。
そうですよ。
つまらんことを聞かないでください。
はあただ犯人とされた男が釈放されましたのでね。
えっ?ほ〜そうですか。
ということは…?丸15年…。
刑期を満了しての釈放です。
そうですか。
一応お知らせしておいた方がよいと思ったので…。
私はもう別の生活をしており正直いって迷惑です。
ですから二度とそういう話はしないでほしい。
そうですか分かりました。
大変失礼いたしました。
(子供たちの掛け声)姿勢が悪い!背筋をチャンと伸ばして!そう。
はいもう一度!
(掛け声)わるいわるい。
お前遅いんだよ。
これな!はい。
チャリ貸せや。
ダメだ!貸せってんだろ!離せ!何するんだよ!こんなもん!やめろよ!邪魔だよ!やめろよ!何やってんだ!あっムショ帰り。
殺人犯だぞ!太一太一!大丈夫か?えらかったな。
大丈夫か?太一頑張れ!あと10軒だからな。
何?大阪へ行ってあの時の工場長に会った?うん。
お前はあの大学の恩師とかいう無礼なヤツと特別な仲か?えっ?何言ってんの。
そんなんじゃないわよ。
そやったらなぜそんな手伝いしとる?あの時の取り調べに不審な点があるからよ。
何が不審や!捜査にケチをつける気か?ケチじゃなくて間違いがあればただすのが弁護士の仕事です。
ちぇっ!生意気な。
だから亭主も見つからんのさ。
そっちの方はもういいの。
それよりお父さん当時山さんの下で聞き込みしてた刑事さんって今は?知らん…忘れた。
でも調べればすぐ分かるけど?行っても何も教えてくれん。
ふう〜っ。
(竹中課長)いやお待たせした。
今署長にお父さんから電話があったそうや。
え?娘が聞き回っても協力してくれるなって。
すみません。
今じゃ警察も情報公開…昔とは違うでな。
これが遠山栄の聞き込み資料。
ここにバー「睦月」とあるが彼はこの店の常連で…ママはこの人です。
進藤由紀さん?ええ。
このママが「遠山氏は犯行時刻店に居た」と証言しています。
聞き込みはこの私やで間違いありません。
今「常連」と言われましたがママと遠山氏はただそれだけの…?いやコレです。
えっ?愛人関係…。
皆が知っとることでした。
ではこの人にとって遠山夫人は邪魔者?えっ?だから殺害の動機があったと…?そうは考えませんでした?まさか…。
水商売プロの女性ですよ。
ネンネじゃあるまいし愛人の女房を殺すなんて…。
それにこの人は店におったんや。
誰の証言で?遠山さんですよ。
じゃ愛人同士がアリバイを証明し合った…そういうことになりますよね?そりゃそういえばそうやけどでも2日後には飯島が自白それで決着。
カタはついたんやさ。

(ママ)ええここが以前「睦月」って店やったけどとうの昔に名前も変わり…人も代わったから…。
じゃ睦月時代のママさんとは…?さあ?見たことも聞いたことも…。
はあどうも…。
いいえ。

(ママ)ああこの人見たことないな。
そう。

(ホステス)進藤由紀…?ええ。
(ホステス)進藤由紀さんって睦月でママやっとった人?ええご存じですか?つきあいはなかったけどお店がつぶれた後下呂温泉に流れてったんやて…。
下呂温泉?ええ。
仲居やってるとか…。
でもその噂聞いたの随分前のことやよ。
はあ…。
うちにはこういう人みえんね。
そうですか。
知りませんね。
すみません。

(マネジャー)いらっしゃいませ。
お尋ねしますがこの方を捜してるんですが進藤由紀さん。
私共の従業員です。
会えますか?ご案内します。
はい。
こちらで少々お待ちくださいませ。
(進藤由紀)あの〜私に用の人って?進藤さん?ええ。
以前睦月のママをしていらした進藤由紀さん?そうですけど…?はあ〜あ。
あっ私…。
こういう者です。
弁護士さん?はい。
弁護士の先生が私になんの?遠山栄さん…。
遠山?ご存じですよね?遠山さんのことをお聞きしたくて伺いました。
遠山の何を?ほ〜飯島さんがお仕事を?はい。
近くのリサイクルショップで電化製品の解体や組み立てを…。
元のお仕事に戻ったわけですね?はい。
これもみんな先生とお嬢さんのお陰です。
いや…娘が太一君に空手を教え出したというのでどうなることかと案じていたんです。
お陰さまですっかり気持ちがほぐれておじいちゃんとも笑顔で話をしてます。
そうそれはよかった。
あいにく娘が留守なもので…。
すみません。
お嬢さん今ごろきっと道場です。
太一と一緒に。
ああ…。
い〜ち!
(一同)えい!に〜っ!
(一同)えい!そうその調子!
(今泉)お〜すっ!
(一同)おすっ!各自稽古!
(一同)おすっ!太一君!はい。
大森西高校の今泉先生。
飯島太一です。
うん。
君のことは聞いてる。
来年の進学どうするんだ?働こうと思ってます。
そうか。
じゃ働きながら私の定時制に来ないか?でも俺…中3の出席足りないから。
中学には私が話をつける。
どうだ来ないか?先生のところは空手部もあるんだよ。
本当に?うん。
10人ほどだ。
どうだ?はいお願いします。
・笛木・中村法律事務所です。
お待ちください。
先生高山の…。
おお…。
もしもし私だ。
先生?すぐに下呂温泉に来てください。
下呂…下呂温泉?はい。
遠山栄氏についての証言を得ました。
本当か…?自宅にメールを送ります。
見たらすぐ発ってください。
うん分かった。
じゃ待ってるよ。
床屋行っとけばよかったな。
高山の彼女ってよほどいい女なんですね?そんなんじゃないよ。
半分は私用のようだから交通費も半分ですからね。
やあ。
先生…。
やってますね?いつぞやは失礼なことを申し上げまして…。
いやいや…。
広々として気持ちがいいな。
ええ。
座りませんか?はあ。
(船の汽笛)飯島さん先日伺った時あなた「もうどうでもいい」って言われたけど再審請求は諦めましたか?諦めるのはシャクだけど…。
でもどうあがいてみてもムショに入ってた15年は返ってきませんしね。
確かに返ってこない。
しかしあなたはご自分の名誉のために獄中でも六法全書を手にず〜っと無実を…。
そうですよ。
でも殺人犯の汚名を着せられたままこのまま死んで行くかと思うともう悔しくって…。
この辺がキリキリ痛んで夜中に飛び起きることがあります。
そうでしょうね。
それでね飯島さんことによると新しい手懸りが得られそうなんです。
あなたにその気があれば再審を手伝いますよ。
真…真犯人の目星でもついたんですか?それはまだなんとも言えない。
ただこの先踏み込んで行くとかなりの人たちを傷つけることになる。
私なんざ傷ついて傷ついてもうボロボロですよ。
だったらやってみませんか?その傷が癒されるかもしれない。
殺人犯の汚名が晴らせるんですね?晴らすんです。
太一君のためにも…。
太一のために?そうです。
そうか…よしやろう!先生お願いします!ええ。
やりましょう。
そうか…。
とうとう無実が…。
飯島さん!?ううっ…。
どうしました?飯島さん飯島さん!…がん?それも肝臓すい臓ひ臓に広がっていて手術は不可能です。
(弓江)…ということは?覚悟をしていただくよりありませんな。
じゃあじいちゃんは…後どれくらい…?保って3か月…。
3か月…。
お父さん。
じいちゃん…。
ああ弓江…先生も…。
弓江…がんだな。
えっ!?そんなこと…。
隠さなくていい…分かっている。
ムショにいた時からおかしかったんだ。
じゃなぜもっと早く…。
言ったらどうにかなったか?そりゃ中のお医者が…。
ハハ…あそこはそんな甘い所じゃない。
先生…。
飯島さん…。
間に合わなかったねえ。
いや間に合う…間に合いますよ。
15年も辛抱してきたんでしょう。
ここで負けちゃ駄目だ。
飯島さん。
先生…。
もうひと息のところまできてるんですよ。
頑張って。
先生…。
きっと無実を晴らしてあげますからね。
頑張りましょう。
…はい。
お待ちしておりました。
すみません。
昨日伺うつもりでしたがとんだ事態になって…。
ご説明しました。
早速ですがこの間この人に話した事をもう一度私に聞かせてくれませんか?またするんですか?あんなヤツの話…。
話のあらましはこの人が知らせてくれましたが分からない点もありますので…。
はあ。
じゃ私の方から確認させてください。
遠山さんとあなたは愛人関係でしたよね?ええ…。
それはいつごろから?「睦月」ってバーを開いて間もなくだからかれこれ20年も前。
それから5年くらいのおつきあい?ええ。
あの人私のとこがいちばん心が休まると言って毎晩のように来てたんです。
お一人で…?初めは一人で。
彼奥さんと反りが合わなかったんですよ。
「重役の口利きで一緒になった」と言ってたけど頭が上がらなかったみたいで…。
それで毎晩あなたの所に?ええ。
そのうちあなたのマンションにも来はじめたんですね?ただいま〜
(由紀)会社からまっすぐ私のとこへ帰って来てひと風呂浴びて…軽く飲んで…。
それから店に出る時間につきあってくれてました。
それが毎晩?ええほとんど毎晩。
奥さんに気づかれないわけありませんよね。
それでよく夫婦ゲンカしてたらしくて…。
それで奥さん…たまらなかったんでしょうね。
昼間からお酒飲むようになり…。
あんなヤツ…飲んで飲んで飲み潰れて死んじまえばいいんだ。
ひどい男ね!どうしてだよ?そうすりゃ由紀…一緒になれるんだぞ。
うまいこと言って!嘘じゃない。
本当にそう思ってるんだ。
本気にするよ。
ああしてくれ…。
俺はお前なしじゃもう…。
…あなた…じゃ遠山さんは奥さんが死ぬのを望んでいた?ええ。
彼だけじゃなく私もね…。
あなたも…?だって奥さんが死ねば工場長夫人になれるし…。
そりゃ初めはお酒のうえのたわ言って聞き流してましたよ。
でもね毎晩毎晩聞かされてればついその気になるでしょう?ということはあなたにも殺害の動機はあった…?えっ!?冗談じゃない!私殺ってませんよ。
分かってます。
そうですよね。
修理工の男が犯人なんだし…。
その飯島さんが無実を訴えてるんですよ。
この間もこちらの先生から聞かされましたけど…。
でもね15年も前の話蒸し返してどうしようっていうんですか?私たちは本当の事を捜しているんです。
本当の事…?ですから何か気づいたり思い出したりしたら聞かせてください。
この間あなた遠山さんが「女房に男が通って来てる」って言ったとか…?ええ。
おい由紀!由紀…面白くなってきたぞ〜。
どうしたの…?女房に男がデキた。
えっ?ありゃ間違いない。
一体何の事よ?うんきょうの昼間な…。
あらどうしたの?書類取りに帰ったんだ。
なんだ?また飲んでるのか!サービスセンターの…。
飯島です。
じゃ私これで…。

(飯島)失礼します。

(遠山)あの二人…絶対おかしい。
まさか奥さんがそんな男と…?いや俺に当てつけでやってるんだ。
だからあの男と必ずデキる。
そうにらんだ。
ハハハ…。
いつか現場を押さえてギューといわせて…。
そしたら離婚だ。
由紀…お前と一緒になれるぞアハハハ…事件当日遠山さんはあなたのマンションから同伴で店へ直行して11時すぎまで飲んでいた。
間違いありませんね?ホントは…。
え?ホント言うとちょっと違うのよ。
違う?どう違うんです?あの時聞きに来た刑事さんまだ警察にいるの?いますよ。
いるけどそれこそもう15年も前の話です。
時効が成立してますから今あなたが何を言われてもとやかく言われることはありません。
弁護士の私が約束します。
どう違うんですか?俺きょうは帰るから。
あら珍しいこと。
奥さん具合でも悪くなった?あ?とにかく…。
じゃ彼は家へ帰ったんですね?ええ。
何時ごろ?いつもどおりだから7時から7時半…。
でもその後すぐ店に戻って来たのよ。
え?何時ごろ?1時間くらい経ってたかしら…?じゃ8時か8時半…?…だと思います。
あなた…なぜその事を刑事さんに言わなかったの?なぜって…。
その後すぐ奥さんが殺されたって聞いたから…。
遠山さんに疑いがかかるとまずいと思って警察には言わなかった。
まあね…。
奥さん死んでことによれば私が工場長夫人になれる…。
余計なこと言わない方が彼のためと思って刑事さんには「ず〜っと店に居た」って答えたのよ。
それなのにあいつったら…。
え?そうやって庇ってやったのに事件の後すぐ横浜支店に転勤してまるでナシのつぶて…。
随分尽くしてやったのに薄情なヤツ…。
それっきりなの?アタマに来たから横浜に押しかけてやった。
すまん。
君とのことはしばらく伏せときたいんだ。
それどういうことよ。
奥さんがいなくなれば結婚すると言ったわ。
あれは嘘なの?嘘じゃない。
だが信子がああなってすぐ君と結婚したんじゃ世間体もあるし…。
世間体…?ああ。
会社でも今興味本位で見られてるんだ。
そんな時に待ってましたと君と再婚したら…。
怪しまれる?えっ?
(船の汽笛)ことによったら…犯人は修理工じゃなくてあんたかもしれないしね。
おい何をバカなことを…。
ハハ…じゃおかしいと思ってる事しゃべってもいい?おかしいと思ってる事…?そんなわけないだろう?第一犯人が自供し裁判で判決まで出てるんだ。
今更何しゃべっても…。
なあ由紀…バカなまねはやめろ。
君とのことはほとぼりが冷めたらきっとキチンとするから…。
ないいな?
(由紀)それこそその場の出まかせ。
悔しいから警察へ行って「あいつのアリバイは嘘」って言おうかと思ったけど。
…でもねそんな事しても1円の得にもならないし…。
そのうちこっちにも彼がデキたから…。
そのままになったのね?ええ。
分かりました。
では最後にもう一つ聞かせてください。
その晩8時すぎに戻った彼はどうだったんですか?どうって…いつもと同じだったと思うけど…。
あっ…?そうじゃないや。
あの時は会社の人たちがすぐにドヤドヤ入って来てカラオケで盛り上がったんだ。
盛り上がった?ええ。
なんだか…一人ではしゃいでいた…。
はしゃいでいた?ええ。
ふだんは歌わないのに下手な歌を何曲も歌って。
で引き上げたのは?11時すぎ…。
もう12時近かったかしら?ベロベロだったからタクシー呼んで送り返したの。
ポイントはここです。
この空白がちょうど1時間。
家まで往復する時間は十分あったはずだ。
飯島さんが証言した「車の音を聞いてあわてて逃げ出した」という時間がやはり8時ごろ…。
夫人の死亡推定時刻も同じく8時ごろ…。
つまり飯島さんが逃げ出した直後に遠山氏が家へ入り…。
奥さんを…。
それですぐに店へ戻った。
はい。
他には考えられません。
うん。
あなたたちねえ。
ご無理を…。
いいかげんにしてよ。
忙しい体なんだ!お手間は取らせませんから。
取らせるもなにも先日言っただろ!思い出したくもない事蒸し返さないでくれ!私もしたくはありません。
だったらなぜ度々…?真実を追及するのが弁護士の仕事ですから。
フン…用件を言いたまえ手短かに。
では手短かに伺います。
事件の前にあなたは奥さんと飯島さんとの関係に疑いを持っていましたね?さあどうだったかねえ?…忘れた。
ではこれは覚えておられますか?「いつか二人の現場を押さえる」と由紀さんに言われたことは?由紀…?由紀に会ったのか?バー「睦月」のママだった進藤由紀さん…。
お会いしました。
お会いして当時の事を伺いある結論に達しました。
結論?ええ。
今から申し上げます。
ただしこれはあくまでも推測です。
でも大事なことですから最後まで聞いてください。
あなたはあの晩由紀さんを店に送ってそのまま家に向かった。
ことによると奥さんと修理工の密会の現場を押さえられると思ったのかもしれませんね。
何だあの男は?男?何の話?とぼけるな!!
(殴る音)男とデキやがって!あっ!何よっ!女作ってほったらかしにしたあんたが悪いのよ!何だとっ!!
(かすかな呻き声)このっ!おい…信子…。
信子…。
信子〜っ!やめろ!!デタラメを言うな!そこであなたは閃いた。
アリバイを作れば疑われるのは修理工だと。
なに!それで由紀さんの店に出かけカラオケで盛り上がり12時ちかくに帰って第一発見者になった。
失礼な。
なんという人たちだ。
帰りたまえ!失礼は重々お詫びします。
でもこれだけは…。
もういい!いえ聞いてもらいます。
犯人とされた飯島さんは15年の刑に服しました。
ひと口に15年というが長い歳月です。
娘のお腹の子が15歳の少年になっていたんですからね。
それだけじゃない。
やっと釈放されたのに今度はがんが彼を蝕んでいる。
それも全身に広がった末期がん…。
余命はあと3か月…。
いや…もう2か月もないでしょう。
あなたはデタラメだと言われたが私は彼が身の証を立てて晴れやかな気持ちで旅立って行けるようにと…ただそれだけの思いで申し上げているんです。
このまま…このまま終えたのではあまりにもむごい…。
むごすぎる…。
そうは思いませんか?遠山さん…。
今真犯人が名乗り出てももう時効の成立で罪には問われません。
彼が名誉棄損の民事訴訟を起こすこともないでしょう。
その時間も気力ももう彼にはない。
ただその人が名乗り出てくれれば最後の最後に彼は人間を信じて死んでいけるんですよ。
遠山さん…。
ああ先生…。
どうしました?
(飯島)先生…退院。
退院ですよ。
ええ本当に?ええ。
でも治ったわけじゃ…。
どうせまたすぐに戻って来るんだから…。
一度帰してやろうって。
お父さん!ハハハ…医者ってのはそういうことをするんですよ先生。
さあどうかな?顔色もいいしいい方へ向かってるんですよ。
そうだね…。
そういうことにしておこう。
先生…。
私…高山へ行きたいんですよ。
高山へ…?お父さんこんな体じゃ無理よ。
大丈夫だ。
あの町を見たいんですね?いやあんなとこは見たくないが…。
墓参りを…。
お母さんのお墓は私がこっちへ移して…。
そうじゃない。
奥さんの墓だ。
奥さん…?俺に殺されたっていう…あの奥さんの墓だよ。
お父さん…。
飯島さん…。
ずう〜っと気になっててねえ。
だってそうでしょ先生…。
私が犯人じゃないことはあの人だけが知ってるんですよ。
そうだね…。
そのとおりだ。
だから死ぬ前に…「あんたじゃないよ」って言ってもらいたいから…。
お父さん…。
分かった。
分かりましたよ。
私がお連れしましょう。
お供しますよ。
ありがとう…先生。
貝塚くんに探してもらったが分からなくてねえ。
夫婦仲も悪かったし変な亡くなり方で世間体も悪いからって実家に押しつけたらしいんだ。
ところが奥さんの実家もみんな亡くなっていて今はもう墓を守る人もいないそうだ。
かわいそうに…。
こんな所にたった独りで…。
(カラスの鳴き声)多分これだと思う。
ああ…信子38歳…。
間違いないね。
そうですか…。
奥さん…私とあんな事になったばっかりに気の毒なことをしたねえ…。
他人の奥さんだから気をつけなければいけなかったのに…。
私も独り身だったからつい…。
でもね奥さん…。
私はね昼間っから酒を飲まなきゃいられない奥さんが…かわいそうで…。
そのうち…本当に…好きになってしまった…。
(すすり泣く声)飯島さん…。
許してくれ…。
信子を…信子を殺したのは…この私だ。
許してください!!いまさら言っても許されることじゃない。
でも…他に言いようがない。
許してください!!…許してください…。

(遠山の泣く声)分かった…。
もういいよ…。
飯島さん…。
太一…。
じいちゃんを…信じてもらえたな?ああ。
オレのじいちゃんは嘘つきじゃなかったよ。
そうか…ありがとう。
じいちゃん!お父さん!大丈夫…大丈夫…。
君がいなかったら冤罪を晴らしてあげられなかった。
ありがとう。
いいえ。
先生のお手伝いができて最高の日々でした。
このままご一緒できたらどんなにうれしいか。
私も連れて帰りたい。
あの車椅子の頑固ジジイがいますからねウフフ…。
じゃお父さんを大事にね。
はい。
先生もどうかお気をつけて。
うん。
2015/08/11(火) 13:00〜15:00
テレビ大阪1
山村美紗サスペンス「殺意の果てに」[字]

飛騨高山夫人絞殺事件冤罪?殺人犯が孫に誓った無実の証し!師弟弁護士15年目の新証人を下呂温泉に追う!

詳細情報
番組内容
弁護士の笛木透が、司法浪人中の一人娘、佐知が運転する車に乗っていると、少年たちがバットでホームレスを打ちつけている現場に遭遇する。怪我を負った男を病院に運び、警官が男に事情を聞くが、男は名前も住所も語らない。笛木と佐知が再び現場に戻りホームレスの小屋を訪れると、刑務所の許可印が押された、飯島貢と名前の書かれた六法全書を発見する。
番組内容2
飯島の娘・弓江を連れて病院に駆けつけた笛木が飯島を自宅に送り届けると、孫の太一は飯島を罵り、家を飛び出してしまった。笛木は、弓江から、飯島が岐阜県の高山で工場長夫人・遠山信子をレイプし、絞殺した容疑で15年間刑務所に入っていたことを聞く。飯島は警察の取調べでは自供したものの、公判ではずっと無実を訴え続けていたという。
番組内容3
飯島が刑務所に入っている間に生まれた太一は、祖父になつかないばかりか、学校の友達に飯島のことで苛められ、登校拒否をしていた。飯島の事件の再調査に乗り出した笛木は、高山市に事務所をかまえるかつての教え子、貝塚美樹子を訪ねる。そして、飯島の事件当時の刑事部長が美樹子の父・悠造だったことや、悠造の栄転のために警察が強引な捜査をしたことを知る。
出演者
笛木透…加藤剛
 笛木佐知…小田茜
 飯島貢…荻島真一
 竹中…中野誠也
 貝塚悠造…滝田裕介
 進藤由紀…風祭ゆき
 村山奈津…山村紅葉
 貝塚美樹子…竹下景子  ほか
原作脚本
【原作】山村美紗
【脚本】鶴島光重
監督・演出
【監督】小野田嘉幹

ジャンル :
ドラマ – 国内ドラマ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
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