今日の「ZERO」は鍾乳洞探検!内部は固い石と岩だらけの世界ですが…。
そんな鍾乳洞の一角に実は世にも不思議な物質があるんです。
触ってみるとまるで…実はこの物質1970年代から研究されてきたにもかかわらずなぜやわらかいのかそのメカニズムは明らかになっていません。
この不思議な物質を求めふだんは入る事のできない洞窟へ潜入。
初の学術調査に臨みます。
大変だ。
数々の難所をくぐり抜けた先に驚きの光景が広がっていました。
一体この物質の正体とは?あのぶにゅぶにゅ何でしょう。
えっ!?だけどやわらかいと。
え〜っ。
早速実物を見てみましょうか。
こちらがですね鍾乳石と不思議な物質ですね。
鍾乳石っていうのは洞窟によくあるつららあれと同じですね。
じゃあ固いですね。
固いんですよ。
じゃあこちらの不思議な物質ちょっと触ってみて下さい。
あらやわらかい!本当だクリームチーズみたい。
え〜っ不思議。
全然違いますね。
違いますよね。
でこちらの固い鍾乳石の方は石灰岩が水に溶けてそれがもう一度固まったものなんですね。
はあ〜。
でこちらのやわらかい方も成分は同じなんですよ。
え〜っじゃあやっぱり珍しいものなんですか。
ですね。
日本には鍾乳洞が5,000か所ぐらいあるといわれています。
そのうちこのやわらかい不思議な物質がある所は30か所ぐらい。
へえ〜!非常に珍しいですね。
この謎の物質が大量に存在する洞窟があるんですね。
この物質を目的とした初の学術調査に同行しました。
5月上旬不思議な物質を求めて調査隊が向かったのは山梨県。
リーダーは日本洞窟学会会長…染谷さんは25年前からその物質に注目し研究を進めてきました。
目的の洞窟はめったに人が足を踏み入れない山奥です。
危ない。
ロープを頼りに歩き続ける事4時間。
4時間…。
標高は1,000メートルをとうに超えています。
おや?お〜!あ〜これはこれは。
研究のきっかけとなったこの洞窟に来るのは実に25年ぶり。
この奥にあのやわらかい物質が大量にあるのです。
非常にうれしいです。
ここは環境保護のために立ち入り禁止です。
今回は特別な許可を得て調査と撮影が行われます。
あのやわらかい物質があるのは僅か300メートル先。
しかし簡単な道のりではありません。
入ってすぐに難所が。
通り抜けるのがぎりぎりです。
今度は80メートル付近。
再び難所が現れました。
迷いの十字路。
今回はこの洞窟で初めてのあの不思議な物質の学術調査。
さまざまなデータを集めていきます。
まずは気温の計測。
10.3℃しかありません。
この洞窟は…更に進むと水の音が聞こえてきました。
洞窟内を流れる地下水です。
雪に閉ざされる冬でも凍る事なく流れ続けています。
しばらく行くと染谷さんが何かを発見しました。
ウホホホ!岩肌を覆うコウモリのフン。
天井にいたのはここをねぐらにしているコキクガシラコウモリです。
栄養源の乏しい洞窟。
ほかの生物たちにとってコウモリのフンは貴重な栄養源となっています。
天井の高さは20メートル以上。
大広間と呼ばれる空間が現れました。
傍らには高さ10メートル。
この洞窟で最大規模の鍾乳石です。
鍾乳石は溶けた石灰岩が再び固まってできたもの。
とがった工具が刺さらないほどです。
間もなく念願の目的地です。
さあいよいよ…25年ぶりの再会です。
あ〜ついに来た。
すばらしい!あ〜。
全長30メートルにもわたる白いもの。
全てあのやわらかい物質でできています。
まるで白い滝のようです。
普通の鍾乳石ならばこれだけの量ができるのに1,000年以上はかかると考えられています。
早速調査を開始。
靴底で削ってしまわないよう靴を脱いで臨みます。
ご覧のように指で触っても分かるほどのやわらかさ。
固い鍾乳石には刺さらなかった工具ももちろんこのとおり。
染谷さんこれ一体何なんですか?鍾乳石と同じ成分なのにやわらかい物質ムーンミルク。
一体どうしてこんなものができたのでしょうか。
あれだけ大変な思いしてたどりついたら感動しますよね。
ですよね。
でもどうしてやわらかいんでしょうね。
あっその答えは今ご覧になったビデオに出ていたんですけれども気付きませんでした?え〜っ何だろう。
気温が一定でずっと地下水が流れてるっていうのは比較的珍しいみたいな。
おお〜。
ブブ〜ッ。
えっ違う?何だろう。
コウモリとか。
ん?でもコウモリって結構どこにでもいそうなイメージなんですけど。
えっコウモリがでもやわらかい物質とどう関係があるんでしょうね。
そこら辺はですね実際に調査をしたご本人に伺ってみましょうか。
それはコウモリのフンを栄養源にして微生物まあ細菌バクテリアともいいますね。
いや溶かしたんではなくて普通の鍾乳石では…ところが…一般的な固い鍾乳石は石灰岩の主成分炭酸カルシウムが溶けた水からできます。
中にあるのはカルシウムイオンと炭酸イオン。
それらが結合すると原子レベルの小さな結晶が生まれます。
それが積み重なると徐々に大きくなり方解石と呼ばれる鉱物になります。
大きさは1マイクロメートル以下です。
この方解石が更に集まり成長していく事で大きな鍾乳石となるのです。
一方こちらはムーンミルク。
固い鍾乳石と成分は同じです。
しかしできる結晶の粒は1マイクロメートル前後の大きさのまま。
その後成長しないため固まりません。
結晶が成長しないのはバクテリアの仕業ではないのか。
染谷さんはムーンミルクを水に溶かしてその中にバクテリアがいるかどうかを調べました。
生きたバクテリアに反応して光る試薬を使います。
顕微鏡をのぞいてみると…。
いました。
緑色に強く光っているのがバクテリアです。
ムーンミルク1グラム当たりに換算するとその数はなんと数十億匹。
あんな中にバクテリアすごいたくさんいたんですね。
そうなんですね。
たくさんいるというだけじゃなくて…これは先ほどの洞窟のムーンミルクの中のバクテリアなんですがこんなふうに集まってますね。
これマイクロコロニーと呼ばれる状態なんです。
この巨大に発達したムーンミルクの中では多分…コロニーを形成すると何かいい事があるんですか?まだ詳しくは分からないんですが…え〜!そういう事があるんです。
面白いですね。
そうなんですね。
でもバクテリアがたくさんいればどこでもムーンミルクができるって訳でもないですよね。
そうなんですよね。
だからバクテリアがいればどこの洞窟だってムーンミルクがいていいじゃないですか。
コウモリのフンだってどこにでもあるじゃないですか。
だからそれは何か例えば特定のバクテリアがムーンミルクを作っているのかもしれない。
そこでまず各地のムーンミルクに共通したバクテリアを探してみました。
ムーンミルクの中にいる多種多様なバクテリアのDNAを全て抽出します。
続いて特別な処理をしたDNAをこの装置にかけ電気泳動します。
分析したのは5つのサンプル。
横並びの線があればそれが共通しているバクテリア。
ムーンミルクの形成に関わっているかもしれません。
比べてみるとこのとおり。
まだ分かりかけたばっかりで一つ一つの種類がどういう働きをしてあるいはどういう環境条件があるから働きが出るのかそういうのをまたこれから詳しく研究していく必要があります。
結構長く研究されてる割にはまだ正体がつかめてないんですね。
そうなんです。
実はですね外国では1970年代ごろからこのムーンミルクにはある特殊なバクテリアが住み着いているといわれている。
それはマクロモナス・バイパンクタータというそういう名前なんですけどもこの菌はですね細胞の中に炭酸カルシウムの粒をため込む性質があると。
そのために結晶が成長しないというふうに考えられてたんですね。
違ったんですか?この特殊な菌はですね非常に細胞の大きさが大きいんです。
だから顕微鏡で観察すればまあいればすぐ分かるんですね。
ところが今回の試料からは全然見つからなかったです。
しかも外国の調査でもこのところ見つかっていないのでいわば幻のバクテリアであるといわれているんですね。
え〜じゃあどんなバクテリアが原因なんでしょうかね。
実はムーンミルクとは無関係の研究で炭酸カルシウムの結晶成長を抑制する不思議なバクテリアが発見されていたんです。
発見者は氷の結晶を成長させない「不凍タンパク質」の回で「ZERO」に登場した河原秀久さん。
納豆菌もその一種であるバチルス属。
自然界では枯れ草の下などに存在する身近なバクテリアの仲間です。
最初に見つけたのは15年前。
河原さんはカルシウムを体に吸収しやすくする成分を探していました。
注目したのは南極の湖バンダ湖です。
バンダ湖は石灰岩が溶けた水の300倍以上の濃度のカルシウムで満たされています。
この湖ならばカルシウムに関する特別な機能を持つバクテリアがいるのではないか。
分析の結果姿を現したのは…このバクテリアが作っていたタンパク質を調べると結晶成長を抑制する事が分かったんです。
そこでバチルス属のほかの菌も調べるとバチルス・アミロリケファシエンスという身近な環境にいる菌も同じような機能を持っていたのです。
しかしなぜ結晶成長を抑制する物質を作るのでしょうか。
ムーンミルクから成分を抽出。
その効果が初めて調べられました。
まずは結晶ができる条件を再現します。
30℃のぬるま湯で反応させました。
すると僅か10分で変化が起こりました。
反応によって生まれたこの白い濁りが炭酸カルシウムの小さな結晶。
数マイクロから数十マイクロメートルに成長したと考えられます。
続いてごく微量のムーンミルクの抽出物を混ぜ同じ実験を行います。
どうなるのでしょうか。
液体は透明のままです。
ムーンミルクにも結晶化を抑制する何かがあった訳ですね。
ですよね。
でもこのVTRに今出てきた2種類のバチルスがムーンミルクにあったんですか?それで私の研究室でそれについて特に詳しく調べたんですが実は見つかったのはですね…え〜!新種。
そういう洞窟環境に適応した種類という事だと思うんですが。
まさに今詳しく研究を進めているところなんです。
VTRに出てきた11種類のバクテリアとの関係はどうなってるんですかね?それがですねこの新種と考えられるバチルス属細菌は菌の数の上では少数なんですね。
菌がたくさんいないとあのバンドになって出てこないんです。
だからあの中にはバチルスはいません。
へえ〜。
でもかなりいい線まで来てる感じはありますよね。
何かどんどん絞られてるような気もします。
でもそういう結晶化を抑制するような物質とかそれを出すバクテリアっていうのが分かったらどんなメリットがあるんですか?それは応用という事ではいろいろな可能性を秘めていると思います。
その可能性の一つが温泉です。
人々の体と心を癒やす温泉。
しかしそれを維持するには人知れない苦労があるのです。
こちらは市内にお湯を供給する泉源の一つ。
管理する上で最も苦労しているというのがこちら。
この温泉では結晶化した炭酸カルシウムなどがパイプを詰まらせてしまうのです。
パイプが詰まると修理や交換に100万円近い費用がかかってしまうといいます。
それを防ぐために行うのがこれ。
ワイヤーにくくりつけた鉄製の器具を使って行う掃除。
この日も大がかりな掃除が始まりました。
3日に1度は行っているというこの作業。
3日に1度?大変ですね。
ウインチを使って器具を上下させ結晶を砕きます。
パイプを詰まらせないためにも1週間以上の間隔を空ける事ができません。
いや温泉のパイプあんななってて手入れ大変そうでしたね。
あんな詰まっちゃうんですね。
ですからこういう分野にこの結晶抑制という仕組みを応用して生かせられればいいんじゃないかと思うんですね。
でも温泉って結構温度が高いと思うんですけど。
普通のバクテリアは温泉の高温では生きられませんね。
それからバクテリアが作るタンパク質というのも熱で壊れてしまいます。
多分ですね。
だからそういう意味では直接は利用はできないと思うんですが…今までの結晶学というのはいかにきれいで大きな結晶を作るかというところに研究の主眼が置かれてたんですね。
例えばほらあの青色LEDです。
あ〜確か窒化ガリウムでしたかね。
そうなんですね。
あの結晶作るのにもかなり苦労されてましたもんね。
今度は逆ですよね。
逆ですね。
結晶を作らせない。
これは学問的にも割とあまり注目されなかった発想です。
へえ〜。
こういう今まで研究されてこなかった固まらない方向の研究というのはこれからも何かいろんな分野で応用できそうですね。
実は日本は火山大国ですね。
地熱発電というのが自然エネルギーとして注目されてるんですが地熱発電の時もやはり地下から高温の水蒸気を取り出します。
その時にやはり…そういう事にも応用できれば…ムーンミルクの謎いかがでしたか?いや〜すごいワクワクしました。
まずああいう洞窟を探検してってというだけでもすごいいろんな不思議なものがあったりするけどその先に固まらないというあの不思議な物質があってという。
しかもそれが結晶化を防ぐつまりこれまでとは全く逆の方向へいくとそれがいろんなところに応用されそうだというのがビビッときましたね。
はい楽しかったです。
染谷さん今日はどうもありがとうございました。
それでは「サイエンスZERO」。
次回もお楽しみに。
2015/08/09(日) 23:30〜00:00
NHKEテレ1大阪
サイエンスZERO「洞窟に眠る謎の物質」[字]
謎の物質の学術調査に同行して、ふだんは立ち入り禁止の鍾乳洞に潜入取材。鍾乳石と同じ成分なのに、なぜか固まらず、そのメカニズムも明らかになっていないのです。
詳細情報
番組内容
ある洞窟に眠る大量の謎の固まらない物質。その初めての学術調査に同行取材しました。鍾乳石と同じ炭酸カルシウムが主成分なのに、なぜか固まらず、そのメカニズムも不明なのです。今回の調査で、この抽出液を微量に混ぜるだけで結晶が成長しなくなり、それには特定のバクテリアが関与していることがわかってきました。「結晶を成長させない」ことが自在に操れれば、地熱発電などさまざまな分野に貢献できると考えられています。
出演者
【ゲスト】佐賀大学農学部教授…染谷孝,【司会】竹内薫,南沢奈央,【語り】土田大
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 宇宙・科学・医学
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
情報/ワイドショー – その他
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