(テーマ音楽)北海道の東オホーツク海に注ぐ西別川。
冷たい清流にだけ生える水草バイカモの日本最大の群落があります。
このバイカモの森で多くの命が動きだす春。
豊かな恵みが生き物たちの暮らしを支えます。
夏花をつけると西別川の水辺は更に豊かさを増します。
バイカモが育む清流の生き物たちを見つめます。
北海道東部にある摩周湖。
およそ7,000年前の噴火で出来たカルデラ湖です。
透明度日本一。
この摩周湖が西別川の水源になっています。
しかし摩周湖から直接流れ出る川は一本もありません。
西別川の源流です。
地面からこんこんと水が湧き出しています。
摩周湖の水が地中を通り長い時間をかけて地表に現れているのです。
湧き出す量は毎分およそ80t。
摩周湖の澄み切った水が豊かな流れを生み出しています。
一年を通じて10℃ほどの冷たく澄んだ水が流れます。
その水が育てる豊かな森。
オホーツク海までおよそ70km。
森の中を蛇行しながら流れ下る原始の川です。
西別川では水の中にも緑が広がっています。
長さ1m以上に成長する水草…冷たく澄んだ流れにしか生えず絶滅が心配されています。
西別川ではおよそ10kmにわたってバイカモの群落が広がっています。
これほどの群落は国内では他にありません。
水中をのぞいてみるとそこはまるで風に揺れる広大な森です。
強い流れの中でもちぎれる事がないしなやかで細い葉。
藻の下にも光が届くようになっています。
十分に光合成ができる事で一日1cm以上成長します。
5月。
森の木々がようやく葉を広げ始める頃。
鳥たちは待ちわびていたかのように活発に動きだします。
この時期水の中ではバイカモの周りに多くの生き物たちが集まります。
葉の上にいるのは水生昆虫の…葉を覆うコケを食べそれによってバイカモの光合成も促されます。
こちらはカゲロウ。
水生昆虫は夏の羽化に備えてバイカモの森で栄養を蓄えます。
中でも大発生する水生昆虫がトビケラです。
葉にしがみつきながらバイカモの森を動き回ります。
そのトビケラのすぐ近くに別の住人の姿がありました。
この春生まれたサケの稚魚です。
体長はまだ5cmほど。
大きな群れをつくりバイカモの森に暮らしています。
鳥などの外敵から身を隠しながら流れてくる水生昆虫を狙っています。
目の前の葉にいるのはトビケラ。
稚魚の大好物です。
口から吐いた糸を使って流されないよう葉にしがみつきます。
それでも流されてしまったトビケラ。
稚魚たちはなかなか捕らえられません。
すると…。
一匹が見事にキャッチしました。
サケの稚魚たちはバイカモの森で成長し夏になる前に海へと下っていきます。
一方このバイカモの森で一生を過ごす魚もいます。
北海道にしかいないサケの仲間…豊富に餌が取れるこの川で海に出る事なく暮らし続けます。
バイカモの森は魚たちの楽園になっているのです。
そうした魚たちを狙うのが水辺の狩人…魚が少しでも姿を見せると…。
すぐさましとめます。
更に大きな鳥が川岸の森から魚を狙っていました。
シマフクロウです。
体長70cmほど。
国内に僅か150羽ほどしかいないフクロウで国の特別天然記念物に指定されています。
近くには巣立ったばかりの幼鳥の姿もありました。
子を育てるには魚が多く必要なためシマフクロウが繁殖できる川は極めて限られています。
西別川は多くの貴重な動植物を育む場所なのです。
7月。
夏の暖かな空気が冷たい川で冷やされもやが立ちこめていました。
森の緑も一段と深くなっています。
バイカモは一面白い花で覆われていました。
1cmほどの小さな花を咲かせています。
実はバイカモは梅の花に似ている事からその名が付けられました。
バイカモの白い花は水の中にも見られます。
流れの中でも花を咲かせ水面に向かってぐんぐんと伸びていきます。
水面に出て虫に花粉を運んでもらうためです。
花が伸びきるとバイカモ同士が絡み合いイカダのように水面を覆います。
この花のイカダも生き物たちの営みを支えます。
イカダの上にいたのは春水の中にいた水生昆虫カゲロウです。
羽をつけた大人の姿になりイカダを足掛かりに空へ飛び立とうとしています。
花にはチョウも集まります。
そうした虫を求めて鳥たちがやって来ます。
バイカモの上では容易に虫を見つける事ができるのです。
夏に独り立ちしたばかりのキセキレイの幼鳥も思う存分虫を食べここで成長します。
多くの命が輝く北海道西別川。
清流に育つバイカモが生き物たちを支えていました。
2015/08/09(日) 07:45〜08:00
NHK総合1・神戸
さわやか自然百景「北海道 西別川」[字]
摩周湖の伏流水が流れる西別川。夏、澄み切った流れの中には梅花藻(バイカモ)の花が咲く。梅花藻を支えにオショロコマやアメマスなどが生き、それをシマフクロウが狙う。
詳細情報
番組内容
北海道東部、根室海峡に注ぐ西別川は、世界有数の透明度を誇る摩周湖の伏流水が流れる川。上流には冷たい清流にしか生育しない水草、梅花藻(バイカモ)が群生している。梅花藻はカゲロウやトビゲラなどの水生昆虫のすみかとなり、それを食べて生きるオショロコマやアメマスなど多くの魚たちの暮らしを支える。さらに梅花藻を食べに現れるエゾシカ、魚を狙うシマフクロウ。梅花藻の花咲く夏の西別川で、生き物たちの営みを描く。
出演者
【語り】羽隅将一
ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 自然・動物・環境
趣味/教育 – 旅・釣り・アウトドア
映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz
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