クロスロード【西尾鉄也/アニメーター】 2015.08.08


先月パリで開かれたあるフェスティバル。
若者を熱狂させているのはそう日本のアニメ。
これぞクールジャパン。
海外でのところ変わって首にタオルを巻いて自転車をこぐこの男性。
実は知る人ぞ知るカリスマなんだそうですが…。
あち〜。
その表情ががらりと一変。
紙の上で軽快に走る鉛筆。
浮かび上がってきたのは…。
美少女の姿。
西尾さんの職業はアニメーター。
細かに描きわけた絵を連続させて見ると登場人物が動き出します。
アニメーターの手はいわばキャラクターに魂を吹き込む神の手。
その技術力表現力は圧倒的。
カリスマと謳われる西尾さん。
例えばこの作品。
激しい銃撃戦のシーン。
西尾さんは飛び散る薬きょうの一つひとつまでを描き込みリアリティーを追求。
ハリウッドにも影響を与える鬼才アニメ監督押井守さんも西尾さんを絶賛する一人。
ちょっとした表情の変化を印象的に見せるとか優れたアニメーターの条件をことごとく全部備えてる…。
そうアクションだけではありません。
この作品では惹かれあう2人の心を風に揺れる髪とわずかな表情の変化で繊細に表現。
そんな西尾さんがこの夏挑んだのは大ヒットアニメ映画の最新作。
総作画監督として60人以上ものアニメーターを束ねすべての絵に責任を負います。
ギリギリまでもがき描き続けた舞台裏に密着。
そこに見えてきたのはアニメにかける男の美学。
動き出したら昼も夜もない過酷な現場。
創造の苦しみ。
日本が世界に誇るアニメ。
それを鉛筆1本で支える男の熱い夏を追いました。
今年4月。
三鷹にある西尾さんの仕事場を訪ねました。
150名のアニメーターを抱えるアニメ制作会社。
テレビ映画数々の作品を手がける業界でも大手のひとつです。
本日の主役が出勤。
この会社へは10年前に腕を買われ執行役員として迎えられました。
会社に到着した西尾さん靴を脱ぐとそのまま社内へ。
なんで裸足なんですか?靴下が嫌いなもんで。
スリッパも履かず素足で移動。
わりと裸足ですよ。
通勤着は夏ならTシャツに短パン。
肩書きは執行役員ですがこの世界に入って26年。
服装はずっと変わらずこんな感じ。
西尾さんのデスクまわりは…。
お世辞にも整理されてるとは言えない状態。
本がどこにあるかわかんない。
どうやら資料が見つからないよう。
あっ!おしまい!ない資料が。
結構資料探されるんですか?うんこんなありさまなので。
出てこないです。
西尾さんを待ち構えていたスタッフがやってきました。
え〜。
終わらない。
始めたのはブルーレイのパッケージ用イラスト。
続いてはクライアントとの打ち合わせ。
よく聞いてみるとなかなかユニークな内容。
これは学習参考書用のイラスト。
西尾さんの描く歴史上の人物がアニメのキャラクターのように躍動感があり理解しやすいと好評のシリーズ。
へ〜い。
大丈夫でしょうか?へ〜い。
日本屈指のアニメーター西尾さんのもとへはアニメ以外にもこうして日々さまざまな仕事が舞い込んできます。
アニメーションなんて結構浮ついた感じにとられるけどやっぱり肉体労働ですよね。
アニメーションの作画っていうのは。
それは自分でも不思議に思うんですけどね。
何なんでしょうね。
そんな多忙な生活がこの夏に向けますます追い打ちをかけられることに。
西尾さんは大きな仕事に取り組んでいました。
全世界で2億部を売り上げる漫画『NARUTO』。
テレビアニメ更には映画版も大ヒット。
四代目火影を超える忍はお前しかいないって。
風螺旋手裏剣!主人公の忍者ナルトが一人前の忍として成長していく物語『NARUTO』。
テレビアニメはなんと80か国以上で放映。
(中国語)
(フランス語)そんな『NARUTO』の新作映画で西尾さんはキャラクターに動きをつけ命を吹き込む総作画監督を務めます。
原作漫画の登場人物たちを動かすためにアニメーションの仕事はさまざまな設定をするキャラクターデザインから始まります。
例えば後ろから見た髪型はこう。
履いている靴はこうなど大勢のアニメーターが描くため細かい部分まで西尾さんが決めていきます。
こうして完成したキャラクターの設定表。
それにしても靴底の模様はこれ。
エリは硬めの素材で。
インナーは重ね着…などなど実に細かい。
うるせぇなこれ…って言われる批判もあえてあるでしょうけど。
なんだよ6.8頭身って。
6頭身じゃダメなのかみたいな。
(スタッフ)ダメなんですか?実は西尾さんにこの仕事のオファーをしたのは原作者であり今回の映画で製作総指揮を務める…。
何やら大荷物を運ぶ西尾さん。
主なキャラクターの設定を終え今度はそれに動きをつける作業に専念するためプロジェクトルームに引っ越してきたのです。
この畳半分ほどに小さく仕切られたスペースでいよいよ戦いが始まります。
西尾さんの引っ越しを待っていたかのように早速キャラクターの演技や感情表現などを確認する演出会議が開かれます。
西尾さん率いるアニメーターたちは監督の演出プランに沿ってキャラクターに動きをつけ芝居をさせていくのです。
しかしそのスケジュールはすでにずれ込んでいました。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
アニメーション映画の制作は監督と総作画監督の二人三脚。
今回の西尾さんの相棒山下監督は15歳年下です。
気遣うよねでも。
逆に。
そろそろ我々の年代邪魔くさくなってくるんです。
年代なんでねハハッ。
若いのからしてみりゃ。
それは年上だろうが年下だろうが。
劇場公開日にはなんとしても間に合わせなくては。
シナリオを実際にどんなシーンで表現するのかその流れを表す絵コンテを監督が急ピッチで仕上げていきます。
その絵コンテをもとにアニメーターたちは動画となる絵を一枚一枚手描き。
総数は実に6万枚以上にも上ります。
そうして描かれた絵のすべてをチェックし完成度を高めるのが総作画監督の西尾さんです。
この日西尾さんはあるシーンを何度も何度も見直していました。
それは主人公の心の変化が表れる笑顔のシーン。
絵の出来に問題はないのですが…。
西尾さんの鉛筆が走り始めました。
左が元の絵。
右が西尾さんが手を加えた絵。
比べてみるとわずかの違いですが主人公が肩を上げ首をすくめるよう変化しています。
こうすることで主人公の喜びがより大きく伝わると西尾さんは考えたのです。
またあるシーンでは…。
机の上に置かれた鏡を見ながらひたむきに試行錯誤。
ていう価値観があるんですよ。
アニメーターには。
手っていうのは美学のかたまり。
これまでの『NARUTO』作品でも見せ場となっていたのが手から生まれる必殺技。
数々の敵をこの必殺技で倒してきました。
今回の作品でも重要なシーンでの手の表現を模索。
このこだわりこそが西尾さんが一流たるゆえんです。
1968年愛知県に生まれた西尾さん。
少年時代からアニメに夢中。
録画したビデオをテープが擦り切れるほど見ていたそうです。
アニメの専門学校を卒業し上京。
憧れのアニメーターとなって以来この道一筋。
映画制作に追われる毎日。
しかしこの日西尾さんは珍しく家と仕事場以外の場所へ。
お〜やっと来た。
待っていたのは同年代のアニメーターたち。
ともにこの道を走ってきた仲間です。
(一同)お疲れさまです。
あ〜何か月ぶりだろう。
3人はかけ出し時代からのつきあい。
しぜんと口に出るのは下積み時代の話。
さすがに大家さんが見かねて鍵をかえてくれましたよ。
例えば先輩との雑談とかでも好きな映画なんだって話したときに僕これが好きなんですよって言ったときにお前が好きなものなんかダメだよみたいなね。
そういう世界でしたよ。
へぇ〜西尾さんでもそんなことあったんだ。
ありましたよ。
でもまぁへこたれずやれたのはアニメーションが好きだからっていうこともあったし俺だったら絶対このハードル乗り越えたら絶対上にいったるぜ。
野心を忘れず突き進んで26年。
アニメ制作会社が多く集まるここ三鷹が西尾さんのホームグラウンド。
でもあんまり何も知らないですよ俺。
何が店があるとか。
この道がどこにつながってるとか全然知らないですよ。
武蔵野の緑豊かな散歩道。
でもここを歩くのも作業で固まった体をほぐしたいときくらいだといいます。
公開まで2か月。
映画の制作は佳境を迎えていました。
西尾さんのチェックが済んだ絵のラフな線をクッキリとした線にする作業。
キャラクターを滑らかに動かすために少しずつ違う絵を描く作業が続くなか…。
それと並行して仕上がった絵はスキャナーでどんどんパソコンに取り込んでいきます。
もう気持赤くするとどうなります?道具はここで鉛筆からパソコンにバトンタッチ。
色づけもパソコンで行います。
色にももちろんキャラクターごとに細かい設定がありそれに応じて色づけした絵を合成するとようやくひとつの場面が出来上がる。
この膨大な作業が繰り返されます。
シナリオの作成から完成まで8か月という今回の制作スケジュール。
決して時間に余裕があるとはいえません。
携わるスタッフおよそ500人がフル稼働で仕上げにあたっていました。
完成予定日まであと10日。
これまで分担作業で作られていたシーンを初めてひとつにつなげて見てみることに。
最前列で見つめる西尾さん。
その目が鋭く光りました。
キャラクターの声や音楽も入りようやく完成に近づいた作品をスタッフ全員でチェック。
どんな映画になっているのかその出来栄えは…。
誰もが固唾をのんでモニターを見つめます。
そのとき…。
わざとらしい感じになっても…。
かもしれないです。
驚くほどの細やかさ。
そして最後まで自分が見届けるという姿勢。
専門家でもないかぎり。
まだ直す時間があるならという…。
修正作業は深夜に及びました。
場面によってはいちばん最初の作業からやり直し。
残された時間はもうわずか。
西尾さん自らも鉛筆をとり直し作業に加わりました。
映画の完成披露試写会は大盛況。
この日を待ちわびていた『NARUTO』ファンたちの熱い声援が舞台の上の声優や原作者におくられます。
劇場シリーズ最新作ナルトの息子ボルトが父の背中を追い成長していく物語。
クソ親父が。
いやぁもう泣きました。
自分小学生のときからずっと『NARUTO』見てたのでそう思うと感動しました。
では完成した作品を西尾さんはどう見たのでしょうか。
(スタッフ)全体的にはどうでしたか?よくできてます。
おもしろいですよ。
微笑みを浮かべる西尾さん。
でも話しているうちに思わず本音が…。
なんであのときもうちょっと粘らなかったかな…。
そんなことばっかりを回想してました。
まだホントはもっとやりたい…。
もっとやりたいです。
西尾鉄也さん。
あなたのアニメに宿す美学を応援します。
お仕事はどうでしたか?楽しかったです。
2015/08/08(土) 22:30〜23:00
テレビ大阪1
クロスロード【西尾鉄也/アニメーター】[字]

日本アニメの技術力の高さを世界に発信し続けるアニメーター西尾鉄也。この夏挑んだ大ヒットアニメ「NARUTO-ナルト-」シリーズの最新映画が出来上がるまでに密着!

詳細情報
出演者
【ナビゲーター】
原田泰造
番組内容
日本アニメの技術力の高さを世界に発信し続ける男、アニメーター西尾鉄也。これまで携わった作品は、数多くの海外の映画祭に出品され、アニメ業界からは「神」として崇められている人物だ。
この夏、西尾が挑むのは、世界80か国以上で放送される世界的大ヒットアニメ「NARUTO -ナルト-」シリーズの最新映画。作品が出来上がるまでに密着!
番組概要
様々な分野で活躍する、毎回一人(一組)の“挑戦し続ける人”を紹介。彼らが新たなる挑戦に取り組む今の姿を追う。挑戦のきっかけになったもの、大切な人との出会い、成功、挫折、それを乗り越える発想のヒントは何からつかんだのか?そして、彼らのゴールとは?新たにどこへ向かおうとしているのか…。そんなクロスロード(人生の重大な岐路)に着目し、チャレンジし続ける人を応援する“応援ドキュメンタリー”。
音楽
【エンディングテーマ】
「サンライズジャーニー」GLIM SPANKY
(ユニバーサル ミュージック)

ホームページ
http://www.tv-tokyo.co.jp/official/crossroad/

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – その他
映画 – アニメ

映像 : 1080i(1125i)、アスペクト比16:9 パンベクトルなし
音声 : 2/0モード(ステレオ)
サンプリングレート : 48kHz

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