セカンドオピニオンはもらえない
8月のコンビニシフトは白紙にした。 しょっぱなから息子は熱中症になり 娘のサチュが90以上あがらない。 近所とはいえ子供に鍵を持たせ留守番させるのは危険だと判断した。 自身が放課後教室で働いているので 夏休みも娘を小学校の放課後にあづけて・・・と思っていたが 「あの子が嫌だから行かない・・・」 になった。
普通級の時はクラスが違っても友達で 支援級になったから口を聞かないでという発言は 子どもながらにショックだったらしい。 子供の言う一言二言まで スタッフが対応できるかと言えば そこまで監視出来ない。 現実に何かもめている雰囲気を察知してスタッフが声掛けしたら 女の子二人は 「何でもありません」 と蜘蛛の子を散らすように離れた。 だから現場スタッフでも対応しきれない問題なのだと母親として思う。 ・・・が サチュ87% 咳はしてるが元気なので・・・と放課後に行かせる訳には(上司の説得もあり)いかなかった。
サチュレーションの数字の意味を 私も正確に理解出来ているか自分自身でも分からない。 血中酸素濃度なのだろうと思っているが グレン前は70%前後の数字も普通にあり酸素なしで退院し在宅介護(?)だった。 当時パルスオキシメーターは購入していなかった。 パソコンもなかったし ネットで買えることも知らなかった。 手術を重ねる度に数字が上がり 爪や唇の色がピンクになって 体重も増え身長も伸びた。 冬場気温が下がると 雪遊び等すると 顔色唇等が紫を通り越して黒くなる。 腎臓が悪くて黄疸の出ている茶色とは違い 拡張された血管の関係で赤味のある顔が黒くなる。 プールで体が冷え唇や爪が紫になるのと同じ色が 顔全体に広がる。 この色は恐怖である。
87%の顔色は悪くない。 冬場の雪遊びに比べて赤味たっぷりである。 苦しいかと聞けば 咳が 痰が 苦しいという。 でも・・・ 歩けるし 笑えるし・・・である。 母親実験でもないが 宿題もやらせてみた。 答えの正解率やスピードに難ありだが 出来なくもない。 そしてだらける。
ゲームやテレビは 苦しくないみたいである。 自宅に友達を招き静かにおしゃべりも可能であろう。 学校は行けるのだろうか? 遠足や運動も可能なのだろうか? 疑問は沢山のこった。
そんな地元クリニックがお休みの木曜日 前日の駅前で映画見ただけで疲れて嘔吐したり(妹) 発熱したり(兄)が気になって胃カメラのんだ子供病院へ連れて行く。 自宅で計ったサチュは93%まで上昇。 元気になっているともいえる。 でも不安だった。 せっかく循環器科でカルテ作ってもらい 小児慢性に名前まで記入して入れてもらったのだ。 使わない手はない。 そんな考えが安易だった。
予約以外はER扱いになる。 トリアージしてくれた看護婦さんは親切で サチュレーションの低さを 一緒になり心配してくれた。 ついでに高尾山登山遠足も 心臓の病院ではOKでたが ここまで体調が悪くない時に質問した。 漠然と70%台になるまで受診不要と言われるのは病院のありかたが手術メインの外科病院だからだと思った。 病院がかかげる医療連携プレーとは何か・・・ 親でさえその意味は不明である。 いや自分の仕事(心臓)以外見ませんと断言しているように聞こえるのは 気のせいだろうか。
看護師は 私の話をきき 「おや・・・ まぁ・・・ お母さんも辛かったですね・・・」 と相槌を うってくれた。 それだけだったけど少し心が軽くなった。 私も不安なのだ。 前主治医は言った
「数字にとらわれず 子供の顔をみろ」
親なら自分の子どもしか見ないが 教師は娘の顔を 表情を読み分けられるものなのだろうか。 チャレンジさせるのはかまわないが 死亡事故につながらないか不安だった。 10年が寿命なら 娘は既に大往生である。 でもそれは考えたくない世界だった。
ERのドクターは 一通り観察して胸の音など異常なしで あえて血液検査もレントゲンもとらず 娘の笑顔と自分で歩けるようすを観察し 心臓の医師(主治医)の意見に賛成した。 緊急性はないと・・・。
「サチュレーション70%台まで緊急性はないと言われているのですが・・・ ぶっちゃけこの様子で運動会や遠足はどう思いますか?」 私は質問した。
その医師はERなので心臓の専門でないことを断った上で教えてくれた。
「他の医者(多分循環器の先生だとおもわれる)と相談したのですが・・・ 通常 フォンタンまでたどりついた患者は 手術した病院で管理するのが通例です。 家庭の事情で北海道から神奈川へ引っ越し等なら話は別ですが・・・ そういう特殊な理由がない限り こちらも勝手な判断は下せません。」
たてわり行政と同じで 医者の間にある見えない壁を 垣間見た気分だった。
「遠足・運動会についても同じで もっと心臓の病院とお母さんがコミュニケーションを取って下さい」 と言われてお終いだった。 見学しろとも休ませろとも言われない。 心臓病院がOKなら OKなのだ。
ちょっと ショックだった。 まあ・・・ 咳だけでサチュは87%から93%まで上がったので元気になりつつあるとも言えよう。 家のベッドの中では トイレにも行けず 食事も出来ないとのたまわってた娘が 病院へ行くと言った瞬間 お出かけ気分で洋服着替え コンビニ弁当を要求する始末。 要は 甘えているのだ。 ベッドで動かず オムツをはいて食事を持ってきてもらえば満足だったのだ。 それだけの話である。
今日の分の薬があったので 文字通り何もせず 翌日地元クリニックへ行った。
「セカンドオピニオンが 欲しかったんです・・・」
校医でもあり 娘の風邪などの症状のかかりつけ医である地元クリニックの医師に遠足や運動会の相談もした。
「体育教師が 学校生活管理表のD判定で 外周道路のマラソンやシャトルランを頑張りすぎてしまうように 遠足前のサチュが87%で 娘のペースで登山OKなのか 本当にそれが大丈夫なのか自信がもてないのです」
医師は フォンタン術後患者の管理する病院=医者の住み分けの話に納得していて
「それは教育委員会の管轄です」 と言った。
管轄・・・か。 見えないガラスの壁の中で 一人大声でさけんでいる気分だった。 結局障害者手帳(心臓)を 持っているから就学相談に呼び出され 出来ない事をマークされ 支援級に移って 噛まれて 保護者会の時に別室に待たせた子供の面倒をみてくれた学校職員(補助教員)の時給を 請求される… でも実際(まだ)支払ってはいない この状況に おもいっきり憂うつ(U2)な私がいる。
今まで土曜日は コンビニのシフトを入れていた。 子供の世話をしようと白紙にして 結局子供と一日一緒にいることに耐えられなくなった私。 フラッと駅前まで外出した矢先に 娘が耳を押えて異常なほど転がりまわった。 父親が救急対応の大学病院を探し連れて行った。
咳が長引き・・・ 中耳炎になった。 だから 熱でもないのに頭(耳)を 冷やしていたのか・・・ そうすると楽になるから・・・と彼女自身の経験で 自分で対処していたのだ。 だから兄にも機嫌悪く乱暴な口ぶりだったのか・・・ と今頃気付いた ダメな母親が帰宅して 顔を見て大泣きする娘を抱きしめた。
「今まで泣かなかったのだから 甘えさせるな・・・ くせになるぞ!」
と父親が言った。 耳が痛いと言ってくれれば助かったのだが それが伝えられなかった娘。 支援級に入れてからの日々 言葉がでなくなってきた娘。 乱暴になったと感じた。
「辛かったね・・・」 泣き叫ぶ娘を抱きしめていたら 気付けば 眠ってしまった。
いつから耳が痛かったのか定かではないが 木曜日に行った 子供病院のERドクターはペンライトを照らし 耳の中も見ていたっけ。 あれで中耳炎が見えるのか 見えないのか 医者同志の住み分けがあるから気付いたけど言わなかったのか分からないが とにかく見落とした。
この一週間は病院ばかりで 久しぶりに忙しかった。