現在発売中のキャラクターランドVol.2。
プロインタビュアー吉田豪氏による「海のトリトン」に関するインタビューが掲載されています。
自らが当時置かれていた状況など「そこまで言っていいの?」という内容は、さすが吉田氏よくぞ引き出したと賞賛に値するものでした。
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私の出る幕はない
このインタビューに関しては、「富野とかBLOGサイト2」の坂井さん、「TOMINOSUKI / 富野愛好病」のkaito2198さんがそれぞれ力作の記事を書いてらっしゃいます。
案の定、吉田豪さんの富野監督インタビューは面白かった。:富野とかBLOGサイト2:So-netブログ
TOMINOSUKI / 富野愛好病 「トリトン」から「ガンダム」への道 富野由悠季はいかにして西崎義展と訣別したのか
どちらもよみごたえのある記事で、私などの出る幕はありません。
ただ、お二人の記事を読んでいて西崎義展氏についてちょっと調べたくなったのですね。
西崎氏について語る虫プロ関係者たち
すると、現在はすでにネット上からは削除されてしまっている「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」という資料がヒットしました。
これは2002年にサンライズ創業30周年記念企画として公開されていたウェブページ。
高橋良輔監督がサンライズ創業の七人を始めとして、各関係者にインタビューするという内容でした。
その中で何人かが西崎氏について触れていたのです。
というわけでサルベージした「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」から西崎氏に関する部分をピックアップいたしました。
富野由悠季
まずは富野自身の言葉から。
富野は第12回「上井草なんてダイッキライ」に登場しています。
高橋 「怠け者はやっぱイヤなんだ」
富野 「うん。自分が怠ける姿って自分で知っているから。とってもひどいんです。だから、打倒西崎と叱咤しているという部分ってかなりある。だから、今言えるのは黒澤潰すっていう、それしかないから(笑)。で、ルーカスとスピルバーグを黙らすって(笑)のを目標にしてます。その部分に関しては、気分論で言うとレトリックじゃないな。そのぐらいに思ってやってもこれくらいしか出来ないんだから、思わなかったら何もやらんのよね、僕。打倒ルーカスぐらい思って頑張ってね100分の1いったらさ、ひょっとしたら大成功かもしれない。それをハナからさ、その辺にいる日本人の映画監督目標にして、あいつ打倒って言ってたら3分の2勝ったって何も見えねえぞって、それだけのことです」
自らを奮い立たせる仮想敵として西崎氏の名を挙げています。
山浦栄二
次に、サンライズ創業者の一人であり三代目社長でもある山浦栄二氏の言葉。
山浦氏は第2回と第3回に登場しているが、西崎氏について触れているのは第3回「チューリップがパッ!」。
山浦「あれね。‥‥あの頃宇宙戦艦ヤマトがね、すごくヒットしてたんですよ。それで俺、ヤマトやってる会社の奴呼び出してさ、データ持って来いって言ったの。産業スパイみたいだけど、なんで儲かってんのか分からない訳よ」
高橋「だってヒットすれば儲かるでしょう」
山浦「いやいやいや、その商法というかね、やり方、コツ‥‥営業的に見るとね、10万と言ったり20万と言ったり50万と言ったり、俺メチャクチャな言い方するからあれだけど、要するに特定の人に集中したやり方なのね。要するにヘビーファンを作って、それと商売をするっていうのがヤマトなんだ。20万くらいの熱狂的なファン作ってそれを核に商売する‥‥。例えばあの頃、LPレコードが10万枚出ると大ヒットな訳ですよ。2000円の本が5万部出ればこれまた大ヒットなわけ。そういう商売を彼はしてたんだ、はっきり言って」
高橋「それがドラマは高く‥‥」
山浦「アニメだから漫画だからとドラマを低くする必要はない。ただしスポンサーも大事だから玩具は出さなくちゃならない。それがアイテムは低く」
高橋「今でこそとんでもない高額の商品もあるけど、あの頃は玩具は子供のものだったからね」
山浦「そう、でもちいちゃい子供は年上の者にあこがれるからね。年上の者がいいって言うものに価値を見出す」
高橋「なるほど」
山浦「しかも第1回放送は、打ち切りで。リピートから人気が出た。これは反面教師じゃないけどいい勉強だなぁと思ったから、それだけはその、なんて言うのかな、西崎氏に感謝している」
高橋「なんだかんだあっても認めざるを得ない」
山浦「ただね、一つあるのはね、ヤマトの西崎氏と俺は軍国少年っていうとちょっと問題があるんだけど、俺もよく『丸』とかさ、兵器論好きなんだけど、西崎氏も同じなんだよ。だからああいう時代を生きてきた、ひとつのその青春時代を含む、今でもそうだと思うんだけど、あの人兵器好きだとかピストル好きだとかが高じて、だから機関銃買ってきて捕まったりするんだけど、要するにそういうそのなんていうのかな、軍国少年的な戦闘機乗りになるって夢見たりっていう、そういう時代を経てきてる訳だよね。撃墜王になるとか。そうすると、ひとつのヒーローを作っていく上での何かがあったことは事実だと思うんだけど」
なんだか話が危なくなってきた。大丈夫かな。
山浦「ただね、良く言われるんだけど、ガンダムの企画もしたし何もするわな。はっきり言って、やったっていう気持ちは自分には出てこないわけ西崎氏みたいには。人の力借りないと絶対出来ないんだから。俺自身絵描けるわけじゃなし。演出できるわけじゃなし」
プロデューサーとしての西崎氏の能力を認めてはいるものの、ワンマンっぷりについては相容れないものを感じているようです。
半藤克美
その次は、虫プロ出身で背景美術のスタジオユニを作った半藤克美氏の言葉。
半藤氏は第8回「ユタカの上のぺこぺこが最初」に登場しています。
高橋「半藤さんからみたサンライズと他のプロダクションの違い、差みたいなものって何かありました? ただ近いってだけ」
半藤「いや、当時はあったよねえ。だってまだ独立プロなんかね、そりゃいっぱいあったけど小さいのが、そういったなかでは当時から勢い。やっぱもの作りって感じはしたよね、きっちゃんの場合はな。なんだかんだいったって。」
高橋「例えば、藤岡さんって僕全然知らないんですが、藤岡さんもやっぱ『もの作り』っていうことではあった人でしょ?」
半藤「あれは、もう、もの作り」
高橋「やっぱ化けものに近いもんね」
半藤「きっちゃんなんかとはまた違うけどもね。あの西崎にしたってもの作りですよ。そりゃやっぱり手塚治虫、吉田竜夫なんかにしたってね。」
「あの」という言い方をしているだけあって、西崎氏について良く思ってはいないことがうかがわれます。
それでも「もの作り」としては認めているのですね。
高千穂遙氏
その次は、SF作家の高千穂遙氏。
スタジオぬえを設立してサンライズ作品に深く掛かっわていました。
高千穂氏が登場するのは第10回「SFはるかに」。
高千穂「僕の場合は良くも悪くも山浦さん(笑)。サンライズ=山浦さんですよね」
高橋「山浦評を一応聞いておきましょうかね。僕もね実は山浦さんなんですよ。サンライズの全ての関係を100とした場合80ぐらいは山浦さんなんですよね」
高千穂「いろんな経営者と会いましたが、あんな大雑把な人はいないという」
高橋「そうそう。アバウトですよね」
高千穂「もう実にアバウトで、このアバウトが逆に才能を生かしたんだなあということですよ。細かいことをいえば‥‥、例えば西崎氏のようにですね全てのものにゴチャゴチャ言ってたらそれはもう誰も才能を開けないですよ。結局西崎氏の作りたいものだけになっちゃう。山浦さんぐらい大雑把で『あ、それいこう。それ面白い、それ持って行こう』っていうのになってくると、スタッフそれぞれが工夫しなければいかんわけです。その工夫がどこまで作品の向上につながっていくか。サンライズの山浦さんは経営者のあるべき姿の一つを見せてくれましたね。あんな経営者いないでしょ、他の会社には」
西崎氏のワンマンっぷりに対し、クリエイターとしてよく思っていないことがわかります。
野崎欣宏
さらにその次が虫プロ出身の野崎欣宏氏。
野崎氏は虫プロ倒産後西崎氏のオフィス・アカデミーで「ヤマト」の設定製作を担当し、オフィス・アカデミー倒産後はサンライズ作品で制作をされていた方。
つまり、虫プロ(手塚氏)、西崎氏、サンライズと事情を知っている方なのです。
野崎「ヤマトの場合は、これはまた別で、プロデューサーがワンマンですから‥。ちょっと人並み外れたワンマンだからさ。すごいファイトはもっていたけどすごい環境でしたからね‥」
高橋「僕はよく知らないんですが、西崎さんの周りにブレーンのような人がいらしたじゃないですか」
野崎「尽くす人がいないんですよ。“サンライズの為にずっと考えて企画して”なんていうタイプの人が‥、西崎プロデューサーの周りにはまず居ないもの‥。僕20年ずっと周りでやってて、食わせてもらってるけどさ。まず、そういう人が居ない‥。お金がある時にはみんな寄ってくるけど作品を育てようという人は・・・・」
高橋「ある意味では西崎さんて優秀な人じゃないですか。優秀過ぎるぐらい優秀じゃないですか。その優秀すぎるぐらいというものが逆に・・・・」
野崎「西崎プロデューサーは異質ですね」
高橋「西崎さんはある意味“異質だ”と・・・・。だけど、別な意味分かり易いわけですよ。1人偉い人がいるっていうのはですね。サンライズは偉いっていう人が目立たないんですよね」
高橋「サンライズの場合は個人プレーというのがあんまり目立たないですよね」
野崎「ただね、西崎さんのやり方というのはアニメの生粋のやり方でいった人は反発しちゃうよ。だって我侭だもの‥。何も人に任せない。だから現場はその分“監督不在”‥。ラッシュ試写に誰も来ないんだから‥。いや、本当だよ。未だかつてあそこでラッシュ見に来た監督って1人もいないよ。全部、色指定でも何でも西崎さんのところへ持って行かないといけない。ああだこうだ弄くり回すじゃない。だからフィルムの制作時間が無くなっちゃったんですよ」
高橋「・・・・」
野崎「それで現場の時間が全くないの。僕たちが“作画の時間がないですよ”って言ったってダメ。外部の監督とかシナリオライターとかそういうの大事にするからね。段取りばっかするんだよ。会議が多いんですよ。“会議でフィルムは出来ない”って何回も言ったんだけどさ」
そばに居て仕事をしていた人だけに、西崎氏のワンマンっぷりがいかにすごかったのか体験談として語られています。
本当に「異質」な寵児だったのですね。
高橋良輔
そして最後にホスト役高橋良輔氏の言葉。
第3回で山浦氏とのやりとりの中でこのように西崎氏を評しています。
山浦「ガンダムを作る時に、じゃあ万全の計算があったのかって言ったら、これは根本的には無いってしか言いようがないね。その、細かいヨミだのなんだのはありましたよ。あったけれども、こんなになるなんてヨンでやった奴がいたらね、土下座しちゃう。俺はだからその‥‥所詮は運って言うんだよ」
高橋「そこでね、僕は運っていう言葉をずーっと考えたわけですよ。で、運なのか、計画性なのか、志なのかいろんな事を考えたんだけど、ヤマトは実はこれは裏腹だなぁって思ったの。ヤマトは西崎さんが結構計算して、こうしたら当たるんじゃないか、こうしたら受けるんじゃないかって全部計算して、あの人計算高いから‥‥計算して計算してその通りやったら運良く当たったんですよ。これは後から運が来たわけ」
「ヤマト」の成功について良輔監督なりに分析されています。
以上虫プロ関係者6名による西崎義展氏の評価でした。
私自身、西崎氏についてはあまり知らずにいろいろなエピソードから嫌悪感を抱いていたのですが、悪目立ちするタイプということは読み取れました。
kaito2198さんも紹介されていたこの本が読みたくなりますね。
・アニメージュ79年1月号アニメ界SPECIAL座談会 | ひびのたわごと
・今こそ日本サンライズの明日を考える(後半) | ひびのたわごと
・
すると、現在はすでにネット上からは削除されてしまっている「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」という資料がヒットしました。
これは2002年にサンライズ創業30周年記念企画として公開されていたウェブページ。
高橋良輔監督がサンライズ創業の七人を始めとして、各関係者にインタビューするという内容でした。
その中で何人かが西崎氏について触れていたのです。
というわけでサルベージした「アトムの遺伝子 ガンダムの夢」から西崎氏に関する部分をピックアップいたしました。
富野由悠季
まずは富野自身の言葉から。
富野は第12回「上井草なんてダイッキライ」に登場しています。
高橋 「怠け者はやっぱイヤなんだ」
富野 「うん。自分が怠ける姿って自分で知っているから。とってもひどいんです。だから、打倒西崎と叱咤しているという部分ってかなりある。だから、今言えるのは黒澤潰すっていう、それしかないから(笑)。で、ルーカスとスピルバーグを黙らすって(笑)のを目標にしてます。その部分に関しては、気分論で言うとレトリックじゃないな。そのぐらいに思ってやってもこれくらいしか出来ないんだから、思わなかったら何もやらんのよね、僕。打倒ルーカスぐらい思って頑張ってね100分の1いったらさ、ひょっとしたら大成功かもしれない。それをハナからさ、その辺にいる日本人の映画監督目標にして、あいつ打倒って言ってたら3分の2勝ったって何も見えねえぞって、それだけのことです」
自らを奮い立たせる仮想敵として西崎氏の名を挙げています。
山浦栄二
次に、サンライズ創業者の一人であり三代目社長でもある山浦栄二氏の言葉。
山浦氏は第2回と第3回に登場しているが、西崎氏について触れているのは第3回「チューリップがパッ!」。
山浦「あれね。‥‥あの頃宇宙戦艦ヤマトがね、すごくヒットしてたんですよ。それで俺、ヤマトやってる会社の奴呼び出してさ、データ持って来いって言ったの。産業スパイみたいだけど、なんで儲かってんのか分からない訳よ」
高橋「だってヒットすれば儲かるでしょう」
山浦「いやいやいや、その商法というかね、やり方、コツ‥‥営業的に見るとね、10万と言ったり20万と言ったり50万と言ったり、俺メチャクチャな言い方するからあれだけど、要するに特定の人に集中したやり方なのね。要するにヘビーファンを作って、それと商売をするっていうのがヤマトなんだ。20万くらいの熱狂的なファン作ってそれを核に商売する‥‥。例えばあの頃、LPレコードが10万枚出ると大ヒットな訳ですよ。2000円の本が5万部出ればこれまた大ヒットなわけ。そういう商売を彼はしてたんだ、はっきり言って」
高橋「それがドラマは高く‥‥」
山浦「アニメだから漫画だからとドラマを低くする必要はない。ただしスポンサーも大事だから玩具は出さなくちゃならない。それがアイテムは低く」
高橋「今でこそとんでもない高額の商品もあるけど、あの頃は玩具は子供のものだったからね」
山浦「そう、でもちいちゃい子供は年上の者にあこがれるからね。年上の者がいいって言うものに価値を見出す」
高橋「なるほど」
山浦「しかも第1回放送は、打ち切りで。リピートから人気が出た。これは反面教師じゃないけどいい勉強だなぁと思ったから、それだけはその、なんて言うのかな、西崎氏に感謝している」
高橋「なんだかんだあっても認めざるを得ない」
山浦「ただね、一つあるのはね、ヤマトの西崎氏と俺は軍国少年っていうとちょっと問題があるんだけど、俺もよく『丸』とかさ、兵器論好きなんだけど、西崎氏も同じなんだよ。だからああいう時代を生きてきた、ひとつのその青春時代を含む、今でもそうだと思うんだけど、あの人兵器好きだとかピストル好きだとかが高じて、だから機関銃買ってきて捕まったりするんだけど、要するにそういうそのなんていうのかな、軍国少年的な戦闘機乗りになるって夢見たりっていう、そういう時代を経てきてる訳だよね。撃墜王になるとか。そうすると、ひとつのヒーローを作っていく上での何かがあったことは事実だと思うんだけど」
なんだか話が危なくなってきた。大丈夫かな。
山浦「ただね、良く言われるんだけど、ガンダムの企画もしたし何もするわな。はっきり言って、やったっていう気持ちは自分には出てこないわけ西崎氏みたいには。人の力借りないと絶対出来ないんだから。俺自身絵描けるわけじゃなし。演出できるわけじゃなし」
プロデューサーとしての西崎氏の能力を認めてはいるものの、ワンマンっぷりについては相容れないものを感じているようです。
半藤克美
その次は、虫プロ出身で背景美術のスタジオユニを作った半藤克美氏の言葉。
半藤氏は第8回「ユタカの上のぺこぺこが最初」に登場しています。
高橋「半藤さんからみたサンライズと他のプロダクションの違い、差みたいなものって何かありました? ただ近いってだけ」
半藤「いや、当時はあったよねえ。だってまだ独立プロなんかね、そりゃいっぱいあったけど小さいのが、そういったなかでは当時から勢い。やっぱもの作りって感じはしたよね、きっちゃんの場合はな。なんだかんだいったって。」
高橋「例えば、藤岡さんって僕全然知らないんですが、藤岡さんもやっぱ『もの作り』っていうことではあった人でしょ?」
半藤「あれは、もう、もの作り」
高橋「やっぱ化けものに近いもんね」
半藤「きっちゃんなんかとはまた違うけどもね。あの西崎にしたってもの作りですよ。そりゃやっぱり手塚治虫、吉田竜夫なんかにしたってね。」
「あの」という言い方をしているだけあって、西崎氏について良く思ってはいないことがうかがわれます。
それでも「もの作り」としては認めているのですね。
高千穂遙氏
その次は、SF作家の高千穂遙氏。
スタジオぬえを設立してサンライズ作品に深く掛かっわていました。
高千穂氏が登場するのは第10回「SFはるかに」。
高千穂「僕の場合は良くも悪くも山浦さん(笑)。サンライズ=山浦さんですよね」
高橋「山浦評を一応聞いておきましょうかね。僕もね実は山浦さんなんですよ。サンライズの全ての関係を100とした場合80ぐらいは山浦さんなんですよね」
高千穂「いろんな経営者と会いましたが、あんな大雑把な人はいないという」
高橋「そうそう。アバウトですよね」
高千穂「もう実にアバウトで、このアバウトが逆に才能を生かしたんだなあということですよ。細かいことをいえば‥‥、例えば西崎氏のようにですね全てのものにゴチャゴチャ言ってたらそれはもう誰も才能を開けないですよ。結局西崎氏の作りたいものだけになっちゃう。山浦さんぐらい大雑把で『あ、それいこう。それ面白い、それ持って行こう』っていうのになってくると、スタッフそれぞれが工夫しなければいかんわけです。その工夫がどこまで作品の向上につながっていくか。サンライズの山浦さんは経営者のあるべき姿の一つを見せてくれましたね。あんな経営者いないでしょ、他の会社には」
西崎氏のワンマンっぷりに対し、クリエイターとしてよく思っていないことがわかります。
野崎欣宏
さらにその次が虫プロ出身の野崎欣宏氏。
野崎氏は虫プロ倒産後西崎氏のオフィス・アカデミーで「ヤマト」の設定製作を担当し、オフィス・アカデミー倒産後はサンライズ作品で制作をされていた方。
つまり、虫プロ(手塚氏)、西崎氏、サンライズと事情を知っている方なのです。
野崎「ヤマトの場合は、これはまた別で、プロデューサーがワンマンですから‥。ちょっと人並み外れたワンマンだからさ。すごいファイトはもっていたけどすごい環境でしたからね‥」
高橋「僕はよく知らないんですが、西崎さんの周りにブレーンのような人がいらしたじゃないですか」
野崎「尽くす人がいないんですよ。“サンライズの為にずっと考えて企画して”なんていうタイプの人が‥、西崎プロデューサーの周りにはまず居ないもの‥。僕20年ずっと周りでやってて、食わせてもらってるけどさ。まず、そういう人が居ない‥。お金がある時にはみんな寄ってくるけど作品を育てようという人は・・・・」
高橋「ある意味では西崎さんて優秀な人じゃないですか。優秀過ぎるぐらい優秀じゃないですか。その優秀すぎるぐらいというものが逆に・・・・」
野崎「西崎プロデューサーは異質ですね」
高橋「西崎さんはある意味“異質だ”と・・・・。だけど、別な意味分かり易いわけですよ。1人偉い人がいるっていうのはですね。サンライズは偉いっていう人が目立たないんですよね」
高橋「サンライズの場合は個人プレーというのがあんまり目立たないですよね」
野崎「ただね、西崎さんのやり方というのはアニメの生粋のやり方でいった人は反発しちゃうよ。だって我侭だもの‥。何も人に任せない。だから現場はその分“監督不在”‥。ラッシュ試写に誰も来ないんだから‥。いや、本当だよ。未だかつてあそこでラッシュ見に来た監督って1人もいないよ。全部、色指定でも何でも西崎さんのところへ持って行かないといけない。ああだこうだ弄くり回すじゃない。だからフィルムの制作時間が無くなっちゃったんですよ」
高橋「・・・・」
野崎「それで現場の時間が全くないの。僕たちが“作画の時間がないですよ”って言ったってダメ。外部の監督とかシナリオライターとかそういうの大事にするからね。段取りばっかするんだよ。会議が多いんですよ。“会議でフィルムは出来ない”って何回も言ったんだけどさ」
そばに居て仕事をしていた人だけに、西崎氏のワンマンっぷりがいかにすごかったのか体験談として語られています。
本当に「異質」な寵児だったのですね。
高橋良輔
そして最後にホスト役高橋良輔氏の言葉。
第3回で山浦氏とのやりとりの中でこのように西崎氏を評しています。
山浦「ガンダムを作る時に、じゃあ万全の計算があったのかって言ったら、これは根本的には無いってしか言いようがないね。その、細かいヨミだのなんだのはありましたよ。あったけれども、こんなになるなんてヨンでやった奴がいたらね、土下座しちゃう。俺はだからその‥‥所詮は運って言うんだよ」
高橋「そこでね、僕は運っていう言葉をずーっと考えたわけですよ。で、運なのか、計画性なのか、志なのかいろんな事を考えたんだけど、ヤマトは実はこれは裏腹だなぁって思ったの。ヤマトは西崎さんが結構計算して、こうしたら当たるんじゃないか、こうしたら受けるんじゃないかって全部計算して、あの人計算高いから‥‥計算して計算してその通りやったら運良く当たったんですよ。これは後から運が来たわけ」
「ヤマト」の成功について良輔監督なりに分析されています。
以上虫プロ関係者6名による西崎義展氏の評価でした。
私自身、西崎氏についてはあまり知らずにいろいろなエピソードから嫌悪感を抱いていたのですが、悪目立ちするタイプということは読み取れました。
kaito2198さんも紹介されていたこの本が読みたくなりますね。
・アニメージュ79年1月号アニメ界SPECIAL座談会 | ひびのたわごと
・今こそ日本サンライズの明日を考える(後半) | ひびのたわごと
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