田渕紫織
2015年8月16日01時52分
「死ねと命じられて爆弾もろとも敵艦に突っ込んでいった特攻隊員たち。人生には心からの笑いがあり、友情と恋があふれ咲いていることすら知らず、五体爆裂し肉片となって恨み死にした」
加藤敦美(あつよし)さん(86)=京都市西京区=は今夏、戦争で失った仲間を思い、ペンをとった。平和憲法のもとで戦争をしてこなかった日本。その姿が揺れる現状に耐えられなくなっていた。
16歳だった加藤さんは1944年12月、特攻隊員をめざして海軍飛行予科練習生になった。山口県の防府にあった通信学校で何度も「ピーッ」という信号音を聴いた。その音は数秒間続き、途切れる。「特攻機が敵艦に突っ込んだ」。班長が言った。先輩たちの「最後の叫び」だった。特別な感情は湧かない。上官から「死ね」と言われたら死ぬしかないと思っていた。
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