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 外国人観光客が、二重橋を背にカメラの前でポーズを決めていた。15日午後1時過ぎ、皇居前広場。空はうっすらと雲でかすみ、セミの声がこだまする。いつもと変わらない風景だ。

 足元の砂利が焼けるように熱い。70年前のほぼ同じ時刻、漫画家の泉昭二さん(83)=東京都杉並区=はこの場所で、砂利の上に正座し、頭を下げていた。「あの日も暑かった。足が痛かっただろうけど、記憶にないなあ」

 当時13歳、特攻隊に憧れる軍国少年だった。正午からの玉音放送で敗戦を聞いて途方に暮れ、自宅のあった荒川区からひとり電車を乗り継いで皇居前に向かった。戦争に負けたことをわびると共に、天皇陛下のいる場所に行けば何かわかるのでは、と思った。広場では大勢の人がひれ伏していた。誰も言葉を発せず、静かだった。