その気配はない。

 2520億円にのぼる巨額の建設費が問題視され、ゴタゴタの末に計画が見直されることになった新国立競技場。下村文科相の責任を問う声が広がっているが、あの人にも「辞めろ」の声が上がっている。新国立競技場の事業主体である日本スポーツ振興センター(JSC)の河野一郎理事長(68)のことだ。

 これまでのずさんな建設計画に加え、計画見直しの経緯などを検証する第三者による初の検証委員会(7日)では、新国立工事費の過少見積もりや、競技場のデザインを検討した有識者会議の議事録の一部を削除したことも判明。10日の参院予算委員会の集中審議では、施工予定者の建設業者が出した約3000億円の工事費に対し、2100億円と試算した理由について質問されると、「概算を取る際の条件の違い」「例えば、資材の調達先が国内か海外の違い」などと、誠意のない“官僚答弁”に終始した。

■年間報酬は1830万円

 自民党の河野太郎行政改革推進本部長は先月30日、「一義的な責任はJSCトップにある。更迭すべきだ」と記者団に語っていたが、その気はさらさらないようだ。霞が関の事情通が言う。

「従来、JSC理事長という職は文科省の局長クラスの天下り先だった。それを東京五輪招致に関わってきた、元文教族のドンである森(喜朗=現・東京五輪組織委員会会長)さんが平成23年に河野さんを押し込んだ。河野更迭では、押し込んだ森さんの責任も問われかねない。下村文科相は今回の失態により、9月の総裁選後の改造で大臣を外れることが濃厚。文科相はJSC理事長の任命権を持つ。河野理事長は辞める気はないだろうが、文科相さえその気になれば今すぐクビにできるのにやはり動かない」

 日刊ゲンダイはJSCに「河野理事長は今年で4年の任期を終了するが、辞めないのか」「JSC理事長は再任できるのか」という質問をぶつけてみた。するとこんな答えが返ってきた。

「河野理事長の任期は9月末日までです。独立行政法人通則第21条の規定により役員の再任は可能です。任命はJSCが行うことではないので再任するかどうかは分かりません」(JSC広報室)

 整備費164億円といわれる高さ70メートルの新ビルにJSC本部が入ることも批判されている。ちなみに河野理事長の年間報酬は約1830万円だ。