写真・文 鬼室黎
2015年8月15日05時07分
「あれは米兵との戦いじゃない。自分との戦いでした」。1945年春、16歳だった長田勝男さん(87)は、那覇・首里城のふもとで、鉄血勤皇隊の少年学徒兵として第32軍司令部壕(ごう)を掘っていた。朝鮮出身の男性たちがつるはし1本、ふんどし1枚で掘り進め、長田さんらは土をざるで運び出した。しかし司令部は壕を破壊し本島南部に撤退。「みんな水が飲みたい。何か食べたい。傷口にはウジ、服は泥と血とウミだらけ。化け物です」
長田さんも砲弾によるけがと栄養失調の体で死体をかき分けながら、はいずり回った。「私は死んだ兵隊の水筒をいくつも奪い取って栓を抜きましたよ。でもね、傾けても一滴の水も残っていなかった」
鉄格子の向こうの暗闇は今も70年前のままだろうか。「戦争をするのも人間、しないのも人間、起こすのも人間、起こさないのも人間なんですよね」(写真・文 鬼室黎)
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