2015.03.16 Monday
PSCK9阻害薬2剤の心血管イベント抑制効果を示す論文が発表された−ただし、結論は大規模試験の結果を待って
Forbesの記事「New Cholesterol Drugs: Highly Effective But Important Questions Remain」からです。
PSCK9阻害薬(evolocumabおよびalirocumab)が心血管イベントのリスクを半減した臨床試験結果がNEJM誌に発表されました。
このニュースを各メディアが取り上げていますが、ForbesとReutersは記事タイトルで「疑問点が残る」としているのに対して、BloombergとFierceBiotechは試験結果をそのまま記している印象です。ここではForbesの記事を中心に記します。
[evolocumab]
Evolocumab長期投与時の安全性および有効性の検討を目的としたオープン試験2試験(NCT01439880、NCT01854918)を併せた結果です。被験者4,465例は、標準療法プラスevolocumab 140mgの2週間1回または420mgの月1回、または標準療法のいずれかに無作為割付され、11.1ヵ月(中間値)観察した結果です。標準療法ですが、CT.govには「Standard of care therapy as per local practices. This could include prescribed therapies and/or dietary/exercise regimes」と記載があります。
結果は、evolocumab 投与群のLDL-Cが120mg/dLから48mg/dLへと61%減少。1年後までの心血管イベント発生率は、evolocumab 投与群0.95%が標準療法群は2.18%よりも有意に低い結果が得られています(p=0.003)。

ただし、この解析で対象となったイベント数は60イベントのみであり、試験に参加した医師evolocumabの心血管イベントに対する効果は目標症例数27,500例で実施中のFOURIER試験(NCT01764633)の結果を待って判断すべきとしています。
安全性では、重篤な有害事象の発現率はevolocumab 投与群および標準療法群ともに7.5%でしたが、認知神経科学的イベントはevolocumab 投与群で僅かな増加(0.9%対0.3%)が認められました。認知神経科学的イベントの増加について、論文はLDL-C低下との関連付けを否定し、オープン試験であること、evolocumab 投与群では医療機関への訪問回数が多かったことによると説明していますが、副作用である可能性を指摘する声もあります。
[alirocumab]
Alirocumab長期投与時の安全性を評価することを目的に、2,341例にalirocumabまたはプラセボ皮下注のいずれかに2:1の割合で割付、2週間に1回投与した試験(ODYSSEY試験:NCT01507831)です。Alirocumab群のLDL-Cは、プラセボ群と比べて62%の減少を示しました。
心血管イベントに関する情報としては、心臓死、非致死性心筋梗塞、脳卒中および入院を必要とする不安定狭心症を含む主要な心血管有害事象についてpost hoc解析を試みたところ、78週時のイベント発生率はalirocumab群1.7%に対してプラセボ群3.3%と、alirocumab群で有意に低い結果が示されました(p=0.02)。
安全性に関しては、有害事象発現率は両群でほぼ同じでしたが、alirocumab群で増加を認めた有害事象として、注射部位反応(5.9%対4.2%)、筋痛(5.4%対2.9%)、認知神経科学的イベント(1.2%対0.5%)、眼科系の有害事象(2.9%対1.9%)がありました。
これらの試験結果に対して、近年の高コレステロール血症のガイドライン作成に従事した専門家は、これらの試験結果をもってPSCK9阻害薬に心血管イベント抑制効果があるとするのは時期尚早であり、実施中の試験の結果が得られてから判断すべきだ。PSCK9阻害薬の投与は、承認後当面の間は、スタチン非認容の患者やスタチンで効果の認められない患者に限るべきとしています。
[NEJM誌掲載論文]
Efficacy and Safety of Evolocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
Efficacy and Safety of Alirocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
[メディア記事]
Experimental cholesterol drugs cut heart risk, but questions remain
These New Drugs Could Cut Heart Risks in Half
Amgen scores a victory for PCSK9, halving cardio risks after one year
PSCK9阻害薬(evolocumabおよびalirocumab)が心血管イベントのリスクを半減した臨床試験結果がNEJM誌に発表されました。
このニュースを各メディアが取り上げていますが、ForbesとReutersは記事タイトルで「疑問点が残る」としているのに対して、BloombergとFierceBiotechは試験結果をそのまま記している印象です。ここではForbesの記事を中心に記します。
[evolocumab]
Evolocumab長期投与時の安全性および有効性の検討を目的としたオープン試験2試験(NCT01439880、NCT01854918)を併せた結果です。被験者4,465例は、標準療法プラスevolocumab 140mgの2週間1回または420mgの月1回、または標準療法のいずれかに無作為割付され、11.1ヵ月(中間値)観察した結果です。標準療法ですが、CT.govには「Standard of care therapy as per local practices. This could include prescribed therapies and/or dietary/exercise regimes」と記載があります。
結果は、evolocumab 投与群のLDL-Cが120mg/dLから48mg/dLへと61%減少。1年後までの心血管イベント発生率は、evolocumab 投与群0.95%が標準療法群は2.18%よりも有意に低い結果が得られています(p=0.003)。
ただし、この解析で対象となったイベント数は60イベントのみであり、試験に参加した医師evolocumabの心血管イベントに対する効果は目標症例数27,500例で実施中のFOURIER試験(NCT01764633)の結果を待って判断すべきとしています。
安全性では、重篤な有害事象の発現率はevolocumab 投与群および標準療法群ともに7.5%でしたが、認知神経科学的イベントはevolocumab 投与群で僅かな増加(0.9%対0.3%)が認められました。認知神経科学的イベントの増加について、論文はLDL-C低下との関連付けを否定し、オープン試験であること、evolocumab 投与群では医療機関への訪問回数が多かったことによると説明していますが、副作用である可能性を指摘する声もあります。
[alirocumab]
Alirocumab長期投与時の安全性を評価することを目的に、2,341例にalirocumabまたはプラセボ皮下注のいずれかに2:1の割合で割付、2週間に1回投与した試験(ODYSSEY試験:NCT01507831)です。Alirocumab群のLDL-Cは、プラセボ群と比べて62%の減少を示しました。
心血管イベントに関する情報としては、心臓死、非致死性心筋梗塞、脳卒中および入院を必要とする不安定狭心症を含む主要な心血管有害事象についてpost hoc解析を試みたところ、78週時のイベント発生率はalirocumab群1.7%に対してプラセボ群3.3%と、alirocumab群で有意に低い結果が示されました(p=0.02)。
安全性に関しては、有害事象発現率は両群でほぼ同じでしたが、alirocumab群で増加を認めた有害事象として、注射部位反応(5.9%対4.2%)、筋痛(5.4%対2.9%)、認知神経科学的イベント(1.2%対0.5%)、眼科系の有害事象(2.9%対1.9%)がありました。
これらの試験結果に対して、近年の高コレステロール血症のガイドライン作成に従事した専門家は、これらの試験結果をもってPSCK9阻害薬に心血管イベント抑制効果があるとするのは時期尚早であり、実施中の試験の結果が得られてから判断すべきだ。PSCK9阻害薬の投与は、承認後当面の間は、スタチン非認容の患者やスタチンで効果の認められない患者に限るべきとしています。
[NEJM誌掲載論文]
Efficacy and Safety of Evolocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
Efficacy and Safety of Alirocumab in Reducing Lipids and Cardiovascular Events
[メディア記事]
Experimental cholesterol drugs cut heart risk, but questions remain
These New Drugs Could Cut Heart Risks in Half
Amgen scores a victory for PCSK9, halving cardio risks after one year