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ジンバブエで殺されたライオンと西洋人の偽善

今日の横浜北部は穏やかに晴れまして、一週間前くらいのピークの時に比べると、さすがに暑さは和らいでいるような気がします。

さて、アメリカの歯医者のハンティングの餌食になってしまったジンバブエの有名なライオンのセシルについて、世界から怒りの反応があるということはすでにご存知の方も多いと思います。

この件に関しまして、先日の放送の有料部分(http://www.nicovideo.jp/watch/1439611159)でも触れたように、その地元のジンバブエ出身のアメリカの大学院生が、このような世界のライオンへの嘆きは偽善であると舌鋒するどく批判した記事がありましたので、その要約を。

===

ジンバブエではライオンのために泣きません
By グッドウェル・ヌゾウ

15-8/4 NY Times

http://www.nytimes.com/2015/08/05/opinion/in-zimbabwe-we-dont-cry-for-lions.html?action=click&pgtype=Homepage&module=opinion-c-col-right-region®ion=opinion-c-col-right-region&WT.nav=opinion-c-col-right-region

●いつものように生化学の遺伝子の勉強をしていると、突然スマホのフェイスブックのテキストメッセージで私は奇妙なメッセージをもらった。

●それは「セシルの件は残念だったわ」「セシルはジンバブエのあなたの出身地の近くに住んでいたの?」というものだった。「セシルって誰だよ」というのが当初の私の反応だった。ニュース番組を見て判明したのは、そのメッセージがアメリカの歯医者によって殺されたライオンのことであるということだ。

●ところが私の心の中では「やった!」というのが正直な感想だ。ライオンという私の家族にとっての脅威が一つ減ったからだ。

●ところが私の喜びは、ライオンを殺した歯医者のほうがメディアによって悪者になったことを知って、冷水を浴びせられた。私は5年間アメリカで留学しているのだが、これほど文化の違いというものを実感したことはない

●多くのアメリカ人が嘆願書にサインしているが、彼らはライオンが人間を殺しているという事実を知っているのだろうか?セシルが「地元の人気者」だとか「愛されている」というのはメディアによる印象操作だということに気づいていないのだろうか?

●深夜のコメディ番組では、ライオン・キングのシンバか何かと勘違いしているコメディアンもいたようで、彼などは番組の中で涙ぐんでいたほどだ。

●私が住んでいたジンバブエの村は野生動物保護区に囲まれており、ライオンは決して「愛されて」はいなかったし、愛称がつけられている例など皆無だった。ライオンは害悪をもたらす存在だったからだ。

●たとえば私が9歳の頃、群れから離れたライオンが私の村の実家の近くで獲物を狙ってうろつき回ったことがあるが、数羽のニワトリやヤギを殺し、最後には牛を1頭殺している。

●それからわれわれは集団登校をするように言われ、屋外で遊ぶことも禁止された。私の妹などは近くの川まで一人で水を汲んだり皿を洗いに行けなくなり、母親は薪を拾いに行く際に、ナタや斧、そして槍などで武装した父親や兄たちと一緒に行かなければならなくなったのだ。

●その事件から一週間後、母は私の兄弟9人に対して、叔父がライオンに襲われたが足を怪我しただけですんだと告げた。

●つまりライオンはわれわれの村から命を奪ったのであり、それから夜に火を囲んで談笑するようなこともできなくなり、近所の人の農場に立ち寄ることもなくなったのだ。

●村を襲ったそのライオンは最終的に殺されたが、そのライオンを殺したのは村人か白人のハンターかどうか、さらにはそれが密猟・違法だったかかどうかについては誰も気にかけなかった。

●われわれはその恐ろしい猛獣が倒され、深刻な被害をもたらす状況から脱したというニュースを聞いて、村では踊れや歌えやの大騒ぎをした

●最近の話だが、私の実家のある村から近いところで14歳の子供がライオンに殺された。彼は自分の家族の畑をカバや水牛、それにゾウなどに踏み荒らされないように見はるためにそこで寝ていたのだが、ライオンに襲われて死んでしまったのだ。

●都市部に住んでいるジンバブエの人間も、そこまで危険にさらされていないはずだが、それでもセシルの死についてはシンパシーを感じていない。彼らのほとんどはライオンなど見たこともないはずだが、それもそのはず、月収平均1万7000円以下の人々にとってはハンティングは縁遠いものだからだ。

●もちろん勘違いしないでもらいたいのは、ジンバブエの人間にとって、野生動物というのは神話的な重要性をもっているということだ。われわれは部族社会であり、各部族は野生動物をシンボルとして持っているのだ。

●たとえば私の部族はゾウをシンボルとしてもっており、ゾウの肉を食べることができない。それは親戚の人肉を食べることができないようなものだ。

●ところがこのような動物に対する尊敬の念があるからといっても、われわれは彼らを狩ることがあるし、外の人間に狩るのを許している。

●ちなみに私は危険な動物をよく知っている。11歳の時にヘビに噛まれて右足を失っているからだ。

アメリカ人がこのような名前がつけられた動物に対して勝手にロマンを感じ、ツイッターにハッシュタグをつけてメッセージを投稿しまくっているのは、私のような普通のジンバブエの人間の目から見て、単なる乱痴気騒ぎのサーカスであるとしか思えない。

●というのも、ライオンのハンティングというのはジンバブエでは日常的なことであり、ここ十年間で800頭ものライオンが、高額な金を払った外国人に合法的にハンティングされているからだ。

●アニマル・ライツを推進するPETAという有名な団体は、セシルを殺した歯科医を絞首刑にせよと主張している。また、ジンバブエの政治家たちも、アメリカに対してジンバブエのイメージをわざと低下させようという企みがあってこういうことをしたと非難している。

●さらに、ジンバブエがどこにあるのかも知らないようなアメリカ人たちが、直近のジンバブエ大統領の誕生日のパーティーにゾウの赤ん坊が殺されて料理として出されたことについては全く知らずに、ジンバブエ側の「歯科医を引き渡せ」とする非難を賞賛しているのだ。

●われわれジンバブエの人間は、なぜアメリカ人がアフリカの人間ではなくアフリカの動物にそこまで気にかけるのか理解できずに嘆いている。

●アメリカ側にいいたいのは、自分たちが北米のピューマをほぼ絶滅状態にするほど狩っておきながら、われわれの動物に対してとやかくいうのはいい加減にしてくれ、ということだ。そしてわれわれの森が消滅しつつあることを嘆く前に、自分たちの場所をコンクリートのジャングルにしてしまった現実を見て欲しいのだ

●さらにお願いしたいのは、同胞や政治的暴力や干ばつなどによって殺されたり飢えの状態から抜け出せないアフリカの村の人間に対して慰めの言葉をかける前に、セシルに対して慰めの言葉をかけるのはやめていただきたいということだ。

===

たしかに外部の人間にとって、ライオンは「害獣」なんですね。それをしらずに自然保護や動物保護を騒ぐ西側の人間はおかしいし、それに乗っかっているジンバブエの政府高官たちもどうかしてるぜ!という意見です。

いやはやなんとも、このような意見というのは当事者と外部の人間との「脅威認識の違い」ということでとても興味深いものです。



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by masa_the_man | 2015-08-15 18:00 | 日記 | Comments(0)
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