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写真部のカメラマンが撮影した数々のカットから、お薦めのもう1枚を紹介します
【放送芸能】聴いて想像する「戦争」 今晩NHK・FMでラジオドラマラジオのNHK・FMは十五日午後九時から、終戦特集オーディオドラマ「昭和20年のベートーベン〜焼跡(やけあと)に響いた第九」を放送する。太平洋戦争末期、第九をきっかけに出会った男女の姿を通じて平和の大切さを描く。主演の倍賞千恵子(74)は「戦後七十年の節目に、戦争はいけないことを伝えたい」と語る。 (砂上麻子) ドラマは、一九四五年六月十三、十四両日、東京・日比谷公会堂で日本交響楽団(現NHK交響楽団)によるベートーベンの「交響曲第九番」の演奏会に約六千人の観客が集まったという話を基にしている。 九十歳の昭子(倍賞)は二〇一五年夏、日比谷公会堂に第九の演奏を聴きに来た。昭子は終戦間際に東京で行われた第九の合唱団の一人だった。四五年三月十日の東京大空襲で、昭子は修二(吉見一豊)に助けられる。六月に開かれる日比谷公会堂での演奏会に向け練習にはげむ昭子は、修二に再会。互いに好意を寄せる二人は演奏会での再会を誓うが、修二は出征してしまう。若き日の昭子を演じるのは野波麻帆(35)だ。 NHKドラマ番組部の小見山佳典エグゼクティブ・ディレクター(59)は「ラジオは絵のないテレビではない。忘れがちな想像力を広くかきたてることができる」と強調。ラジオドラマ出演は久しぶりの倍賞は「戦争の記憶が薄れてきた今だから、戦争を伝えるドラマに出演した」と言う。 ドラマでは、主人公の男女を結び付ける重要な小道具として、第九の「歓喜の歌」が使われている。ドイツ語で歌った倍賞は「難しかった」というが、「生きる喜びを表現した歌詞が戦時中の人々に希望を与えていたと感じた」と話す。 倍賞は戦時中、茨城県に疎開していた。疎開先では苦しい生活を強いられ、母親が語った「B29が焼夷(しょうい)弾を落とし家が燃えた」という体験談を覚えている。 「戦争は国と国がけんかして人が訳もなく殺される。そんな理不尽なことはない」と倍賞。「ラジオドラマは少なくなっているが、終戦の日に耳を傾け、戦争の悲惨さや平和の大切さを感じて」と話している。 ◆「安保法制議論 母として不安」 出演の野波麻帆戦時中の昭子を演じた野波麻帆に聞いた。 −昭子は「軍国少女」として描かれる。 戦争を体験していないので最初は昭子の考えが分からず、手探り状態。インターネットなどで特攻体験者のインタビューなどを見て勉強した。 −ドラマでは、空襲で父親を失い、愛する人とも戦争で離ればなれになる。 昭子が命の尊さに気づいたところは共感できた。これまで戦争を身近に感じたことはないが、二歳の娘の母親として最近、安保法制の議論などを見ていると国が少しずつ変わっていくのかなと不安も感じる。戦争について知ることは大事。ドラマを聞いて考えてほしい。 ◆ラジオドラマも開始90年 娯楽少ない時代 絶大な人気誇る今年はラジオ放送開始九十年。ラジオドラマも一九二五年に始まり、娯楽が少なかった時代に絶大な人気を誇った。 五二年から五四年までNHKで放送された「君の名は」(菊田一夫作)は、「放送時間に銭湯の女湯から客が消えた」と言われるほどの人気でのちに映画化。その後、開局した民放でもラジオドラマが放送され、人気を競い合った。詩人谷川俊太郎や寺山修司、大岡信の三氏ら当時の若手芸術家が作家として参加している作品もあった。だが、六四年の東京オリンピックを契機にテレビの普及が進み、ラジオ人気は衰退しドラマも姿を消していく。 現在はNHKの「FMシアター」や「新日曜名作座」などが長寿番組で根強い支持を集めている。 PR情報
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