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【東京】

市民目線で「私の70年談話」 平和願い文京区のグループがまとめる

 安倍晋三首相の戦後七十年談話を念頭に、「私たちなりに戦後を振り返ろう」と、文京区の市民グループ「根津・千駄木地域憲法学習会」が今夏、「私の戦後七十年談話」をまとめた。談話に込めたのは平和への願いだった。 (中沢誠)

 グループは六十〜八十代を中心に十数人の会員が月一回、憲法にかかわる時事問題をテーマに討議している。談話は毎月発行している会報に会員が寄せた。

 区内の主婦久保明子さん(82)は「この夏はちょっと違う!」と題し、若者たちと安全保障関連法案反対を訴えた七月の国会前デモの体験を書いた。

 政治に対して声を上げ始めた若者たちを頼もしく感じてのことだ。戦時中は疎開を経験し、終戦直後は飢えに苦しんだ久保さんも、少し前まで政治に無関心だった。自民党が憲法草案を議論した十年ほど前、「今の憲法に何が書かれているかも知らない」と学習会の開催を呼び掛けた。

 「憲法は国民に守らせるものだとばかり思っていたが、為政者に守らせるものなんだ」。仲間と条文を読み、自分なりの結論に行き着いた。その憲法を為政者が変えると言い出したことに疑問を感じる。「戦後の平和は憲法があったから。いじっちゃいけない」。その思いを強くする。

 区内の元家裁調査官の浅川道雄さん(84)は、戦後日本の民主主義への思いをつづった。戦時中は空襲で家を焼かれ、軍需工場で働かされた。七十年前の八月十五日を「本当の誕生日」と語る。死ぬことしか考えていなかった十四歳の自分が、どう生きるかを考えるようになった。民主主義を掲げた憲法が戦後の生きる支えに。家裁調査官時代は非行少年に自由と平等の大切さを説き、更生を支えた。

 「戦後70年、歴史の歯車は遅々としているかに見えても、なお、私と共にあると信じます」。浅川さんは、平和憲法と民主主義の火は消えないとの思いを込めて談話をこう結んだ。

 

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