平塚学、稲垣千駿
2015年8月15日04時23分
「談話は出す必要がなかった」。14日、安倍晋三首相が発表した戦後70年談話について、記者会見した村山富市元首相(91)から批判の言葉が次々と発せられた。「何を言いたかったのか」「中身について評価するところはない」。20年前の首相当時、戦後50年に際して談話を発表した村山氏。「各国から評価された」という自負がある村山氏にとっては、許容できないものに映ったようだ。
安倍氏が首相官邸で談話を発表したのは同日午後6時。村山氏はその2時間後の午後8時から、大分市中心街にある「全労済ソレイユ」ビルの会議室で記者会見した。会場には、中国のテレビ局を含む県内外の記者が詰めかけた。
会見で村山氏はこう言った。「全体を通して見ると、焦点がぼけて言葉を薄めて述べている」
「植民地支配」や「侵略」への「痛切な反省」という村山談話の理念について、「言葉は使っているが抽象化して不明確になっている」。批判は続いた。「過去の歴史に対する反省を素直に認めて端的に表現すべきだった」「村山談話を否定も踏襲もしていない。さっぱりわからん」「最初から『継承する』と言えば出す必要もなかった」
自身が出した戦後50年の談話について「節目に清算して、けじめをつける必要があると思った。内閣に課せられた歴史的な課題だった」と振り返る村山氏。かねて、安倍首相が出そうとしている戦後70年談話について「なぜ、いま出すのか」と批判してきた。今年に入ってから、国内だけでなく、海外メディアからも取材依頼が殺到。取材対応や講演のため、東京に頻繁に足を運んできた。
安倍政権が進める安全保障関連法案や、集団的自衛権の行使容認の憲法解釈変更についても、村山氏は護憲の立場から反対する。国会周辺の集会にも顔を出し、現在も精力的に活動を続けている。この日の記者会見では、こんな言葉も口にした。
「(安倍談話は)美辞麗句を並べているが、安保法案との関係で、また懸念を深めると思う」「未来志向といったって、『積極的平和主義』とひとこと言っただけ。憲法を変えて戦争のできる国にしようと言ってるんだから」(平塚学、稲垣千駿)
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〈村山談話〉 自社さ連立政権時代の1995年、当時の村山富市首相が戦後50年を機に閣議決定を経て日本政府の公式見解として出した首相談話。歴史認識については「国策の誤り」と「植民地支配と侵略」を認め、「痛切な反省」と「心からのおわび」を表明した。談話の内容は戦後60年の小泉談話も踏襲し、歴代政権で政府の基本路線になってきた。
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