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広島市南区に残る被爆建物・旧被服支廠で内部初公開

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広島市南区に残る被爆建物・旧被服支廠で内部初公開

 広島市南区に残る被爆建物、広島陸軍被服支廠(ひふくししょう)(旧被服支廠)で8日、「旧被服支廠の保全を願う懇談会」(中西巌代表)主催の追悼の集いが行われた。約100人の参加者を前に、被爆当時の被服支廠の様子が語られたほか、今年度から入れるようになった被服支廠内部の見学会も初めて開かれた。

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 被爆当時の様子を語ったのは、被服支廠で働いていた佐藤泰子さん(87)。被爆50年を機に描いた絵を横に置いて証言した佐藤さんは「被服支廠の中はみるみるうちに死傷者でいっぱいになり、負傷者の顔は風船のように腫れ、『水、ください』『水、ください』と言うばかりでした」などと話した。

 また、絵に描いた負傷者が服を着ていることについては「服はぼろぼろで肌が見えていた」と証言。「年がたつほど鮮明に思いだされ、牢獄(ろうごく)の思いです。『水、水』の悲痛な声を共鳴させた被服支廠はここで命を落とした人たちの声なき声を代弁しているのではないでしょうか」と話し、被服支廠の保存を訴えた。

 この後、高校生による峠三吉の詩の朗読や献花などが行われた。閉会挨拶では、主催者側が旧被服支廠の入り口に「被爆建物」の説明板が3月末に設置され、今年度から建物内にも入れるようになったことを報告した。

 閉会後には、多くの人たちが旧被服支廠の建物内に入り、薄暗い建物の中を歩いて回っていた。