西アフリカのエボラ出血熱など、世界的に感染症の脅威が増している。グローバル化で、いつ、どこから、どんな病原体が来襲するかわからない。

 そんななか、感染症の研究と対策に役立つ、きわめて重要な施設が日本でも動き出す。

 東京都武蔵村山市にある国立感染症研究所の施設である。厚生労働省が先週、国内初の「バイオセーフティーレベル4(BSL4)」に指定した。

 BSL4施設は、最も厳重に病原体を閉じ込める能力を持ち、感染力と致死率が高いウイルスも扱える。

 エボラを機に、厚労省と感染研が昨秋から地元への働きかけを強め、市長が同意した。地元の決断に敬意を表したい。

 今後、最大限の安全策をとりつつ、国際的にも十分な機能が発揮できるよう、人やお金などの体制を整えるべきである。

 治療法がなく致死率が高いエボラなど6種類のウイルスは、二重の壁や高性能排気フィルターを備え、廃水を消毒・高温殺菌できるBSL4施設でしか扱えない。世界保健機関の指針に従い、感染症法で定めている。

 今回指定された施設は、1981年に世界で4番目に完成した。しかし、地元がBSL4での稼働に反対したため、ずっと一段階低いBSL3施設としての運用にとどまってきた。

 今年3月時点では、世界の19の国・地域に41ある。主要8カ国で未稼働は日本だけだった。

 BSL3でも、例えばエボラ感染が疑われる人の血液にエボラウイルス特有の遺伝子断片が含まれるかなどを調べ、感染を診断するところまではできる。

 だが、陽性だと検体は焼却しなければならない。感染した細胞や動物で薬の効果を試せず、治療はぶっつけ本番になる。ウイルスの弱点分析や、ワクチン開発もできず、専門家は長くBSL4を求めてきた。

 感染症対策では、出入国者や医療関係者が広く知識を持ち、早く的確に対応することが重要だ。その中でBSL4施設は診断や治療法開発、人材育成などの大切な拠点になる。特に国際貢献には力を入れてほしい。

 施設のない国の研究者を受け入れたり検体検査に協力したりといった地道な底上げが、回り回って、世界的な感染症封じ込めにつながるからだ。

 周辺住民には病原体漏出を心配する声が根強い。地震などの災害やテロの対策は不可欠だ。地元と対話を重ね、事故を想定した住民参加型の訓練も考えてはどうか。「安全神話」に陥らない運用を求めたい。