サントリー:佐野氏作の景品撤回…「酷似」の指摘相次ぎ

毎日新聞 2015年08月13日 20時56分(最終更新 08月14日 00時42分)

佐野研二郎氏デザインのうち一部を除いて賞品を掲載しているサントリーの現在のホームページ=2015年8月13日午後7時40分
佐野研二郎氏デザインのうち一部を除いて賞品を掲載しているサントリーの現在のホームページ=2015年8月13日午後7時40分

 サントリーは13日、2020年東京五輪・パラリンピックの公式エンブレムをデザインしたアートディレクター、佐野研二郎氏が手がけたキャンペーン賞品の一部を取り下げると発表した。佐野氏側からの申し出を受けた対応という。賞品の一部デザインはインターネット上で「ネット投稿画像や既存デザインに酷似している」との指摘が相次いでいた。

 取り下げたのは、ノンアルコールビールのキャンペーン賞品となているトートバッグ30種類のうち8種類。フランスパンを配したものは、あるブログに掲載されているパンの画像に似ており、回転させて一部を切り取った可能性があると指摘された。矢印の中に「BEACH」と書かれたものもある。

 サントリーによると、バッグのデザインは広告代理店を通じて佐野氏の事務所に依頼した。10日に消費者から指摘があり、社内で調査を進めていたところ、12日に佐野氏側から取り下げを求める連絡があったという。

 佐野氏の事務所はホームページで「著作権に関する問題があるのではないかというご指摘が出ており、多数の方々にご心配をおかけしてしまっている」と理由をコメントした。さらに「現在、専門家を交えて、事実関係等の調査・検討を開始している」としている。

 佐野氏を巡っては、五輪エンブレムがベルギーの劇場のロゴに似ていると劇場側から指摘を受けた。佐野氏は今月5日に記者会見して「デザイナーとして、ものをパクるということは一切したことはない」と語っていた。【飯山太郎、山本浩資】

 ◇五輪使用継続は困難か

 大阪芸術大の純丘曜彰教授(哲学)は「自ら取り下げたということは、プロのデザイナーとしての良心と勇気を感じる。しかし、サントリー側にコンプライアンスの問題があり、国際的な訴訟に発展してしまう恐れもある」と指摘する。五輪エンブレムについては「使い続けるのは難しいのではないか。盗作かどうか以前に、他国とトラブルを抱えているものは、世界のおもてなしの場にふさわしくない」と話した。

 ◇デザイナーのモラルの問題

 ファーイースト国際特許事務所の平野泰弘弁理士は「デザイナーとしてのモラルの問題だ。五輪エンブレムの盗用疑惑についての立証は法律的には難しいかもしれないが、盗用が疑われたデザインを取り下げた以上、五輪エンブレムも取り下げるべきだ」と語った。

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