鬼頭恒成
2015年8月13日22時24分
■あなたは何で戦争を知りましたか:2
8日、東京・有楽町の丸の内ピカデリー。公開初日を迎えた映画「日本のいちばん長い日」の舞台あいさつで、原田真人監督(66)がマイクを握った。
「敵は『ミッション:インポッシブル』と『ジュラシック・ワールド』だ」。公開時期が重なる話題のハリウッド映画を挙げ、観客を沸かせる。舞台に並ぶ主演の役所広司さん(59)や本木雅弘さん(49)も笑顔を見せた。
1945年8月15日、戦争の終結を自らの肉声で伝えた昭和天皇の玉音放送。「戦後の始まり」を告げたこのラジオ放送までの24時間を証言などから再現した同名ノンフィクション(半藤一利著、1965年)が原作だ。松竹は20億~30億円の興行収入を見込む。
映画化は67年(東宝)に続き2度目。前作はドキュメンタリー風の白黒映像で、天皇は後ろ姿と声だけで描かれた。今作では本木さん演じる天皇が、皇居で草むしりをしたり、役所さん演じる阿南惟幾(あなみ・これちか)・陸軍大臣とやりとりしたりする場面が描写された。
松竹の新垣弘隆プロデューサー(37)は言う。「存命中の天皇を描くのは難しかっただろうが、今なら人間ドラマとして作れると思った。70年という節目はビジネスチャンスでもある」
かつて日本映画界は、夏を中心に戦争映画を率先して公開した。「日本の~」に始まる東宝の8・15シリーズ、「二百三高地」(80年、東映)、「ビルマの竪琴」(85年、東宝)……。観客に戦争を知る世代が多く、事実からかけ離れた演出は難しかった。
だが、戦後生まれの世代がその比率を増すと、作り手の意識は戦争を知らない世代に向く。
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