1.イメージ〜ラフ
さっそく制作に移りたいと思います。
はじめにイラストのイメージを固めていきます。ラフは基本的にアナログで行います。
まずはアナログで適当にイメージを描きます。
0.3のシャープペンシルを使って、とにかくイメージが固まるまでがりがり描きます。今回は、ピンクの丸が付いているものにしました。
次に、このイメージをもとにして、新しい紙にアタリを描きます。上から絵を重ねていくうちに見えなくなるので、適当に描きます。
アタリの上に下書きを描き込んでいきます。
この時、アタリで描いた線にそって描いたりはしません。まったく無視することもあります。
※この段階では、バランスやデッサンがぐちゃぐちゃでも構いません。後で修正します。
これでひとまず「イメージ〜ラフ」は終了です。
2.下書き
ラフをもとに下書きを制作していきます。
一度ラフをスキャンしてPC上に取り込みますが、スキャナを使用してもいいですし、携帯のカメラで撮影した画像でも大丈夫です。
いつもは携帯のカメラで取り込んでますが、今回はスキャンしてみました。大体こんな感じで、暗いグレーや紙質のせいで見づらい感じになります。
これを「コントラストの調節」で綺麗にします。
設定は「フィルタ」→「明るさ・コントラスト」を開いて行います。ショートカットキー「Alt+T+C」でも出せます。そうすると、グレーで見づらかったイラストが、はっきりとした白黒になります。
ここから線画の修正をしていくのですが、その前に「線画のみを抽出」します。
「レイヤー」→「輝度を透明度に変換」をクリックします。ショートカットキーは「Alt+L+O」です。これで、黒い線だけを抽出することができ、背景が透過されます。
ここから反転や回転などを使いつつ「加筆・修正」を行います。
気になるところや、直したいところ、おかしいところをトコトン直します。今回は、ピンクで囲んだ「輪郭」「肩」「下半身」などの崩れが目立つので、消しゴムツールや鉛筆ツールを使って直していきます。
輪郭や各所の修正には「選択ペン」を使うと便利です。
そのまま加筆するのも一つの手段ですが、描いたものを変形させる方法を実際にやってみたいと思います。
まず、輪郭部分を「選択ペン」で囲みます。
選択した後は「矩形選択」をクリックします。右上の点線の四角です。次に、その下にある「自由な形」というところをクリックします。そうすると、選択した範囲を囲む四角が現れます。
この四角、上下左右の角(かど)にさらに小さい四角がついており、引っ張って伸ばすことができます。これをうまく使い分けて、輪郭の形などを修正していきます。慣れるまで時間がかかるかもしれませんが、使いこなせるようになればとても便利です。
とりあえず最初に気になる部分を直し終わっても、さらに気になる部分が…
なんてこと、よくあると思います。絵には終わりが見えません。そんな時も、納得いくまでトコトン「修正」します。私は右手や下半身がまだまだ気になるので、このあとも何度も修正しています。
納得いくまで修正ができたら、次はイメージラフであらかじめ決めておいた「背景」の下書きも描き加えていきます。アナログでは修正が難しいので、背景はいつもデジタルで描き込んでいます。上手くいかない時でも、色々なものを描いて試せるのでオススメです。
「構図」を決める
次に「構図」を決めます。実はここ、一番重要です。
今回は2,000ピクセル×2,000ピクセルの画像サイズで制作しています。私は、その正方形の中に「いかに美しく魅力的にイラストを収めるか」「どこを見てほしいのか」「どの角度、どの部分をカットすることでバランスを取れるのか」などを重視して構図を決めていきます。今回はひざより上、割とアップ気味の構図になりました。
構図が決まれば、さらに背景を描き込んでいきます。
構図がうまく決まらない場合などは、この段階で新たにモチーフを描き込んだりしてバランスを取ります。今回はトランプを描き足しました。
最後に気になる部分を色々と修正して、下書きの完成になります。背景を描いている途中でも、胸の形やリボンの形が気になり、修正しています。気付いた時にすぐに修正する、ということを常に心がけていると、
完成後にがっかりすることもないと思います。
ということで、下書きはこれで終了です。
3.線画
線画を制作します。
髪の毛や顔パーツでレイヤー分けをしている方が多いですが、私の場合、線画レイヤーは2枚のみです。キャラクターと背景のみで進めていきます。線画さえ上手にいけば塗りが楽にできるので、力を入れて丁寧に描いていきます。
(1)トコトン綺麗に
(2)着色しやすく
(3)見栄えのいい
…そんな線画を目指します。
まず、また「レイヤー」→「輝度を透明度に変換」をクリックし、線画のみを抽出します。そうすると、また背景が透明の黒線画のみになります。
下書きが黒いままでは線画が描きにくいので、下書きに色を付けます。
下書きのレイヤーの上に新規レイヤーを重ね「下のレイヤーでクリッピング」します。こうすることにより、下書きレイヤーの黒い部分にのみ描き込むことが可能になります。そして、新規レイヤーをピンクやオレンジなどで塗りつぶします。
そうすると、このようにピンク色の下書きを作ることができます。そしてこの上に新規レイヤーを重ね、線画を描いていきます。
さっそく線画を描いていくのですが、まず下書きレイヤーの「透明度」を下げます。30%くらいにしておくと、より線画を描くのに見やすくなります。
次にペンの設定ですが、基本的には「筆」を使います。あまり線の強弱は付けませんが、最小サイズを0%にしておきます。そして新規レイヤーを作成します。
これで準備OKです。
あとはもうひたすら線を描いていくだけなのですが、コツを2つだけご紹介します。
一つ目は「拡大」「回転」「反転」を最大限利用すること。二つ目は、下書きでおかしいところを見つけたらすぐに「修正」することです。この2つを常々意識していると、線画が完成するころには下書きよりいい絵になります。常に間違いを正していくことがとても重要です。
線は(切れ目がないように)ふさげばふさぐほど着色が楽になります。できるだけふさぎつつ丁寧に綺麗な線画を描いていきます。
フリルはこんな感じで描き進めています(下記GIFアニメ参照)。
人物の線画が終わりました。次に背景を描いていきます。
背景にあるモチーフは「懐中時計」「草木」「薔薇」「トランプ」です。どれもそれほど難しいモチーフではありませんが、SAIで描く上で問題なのが「懐中時計」です。
実はSAIでも「円を描くことができる」のはご存じでしょうか?「ペン入れツール」と「回転」を使うことで、誰にでも簡単に綺麗な円を作ることができます。私自身、知り合いからの受け売りなのですが、とても便利です。
それでは「円を描く」実践します。
(1)ペン入れレイヤーを作ります。
(2)曲線ツールを使います。
ここからはマウスを使います。
(3)マウスで、キャンパス上の適当な位置でワンクリックします。
※これ以降、絶対にマウスをずらしてはいけません。完全固定です。
(4)キーボードの「Deleteキー」を押します。
(5)マウスの右をワンクリックします。
その後(4)(5)を繰り返します。
(6)線が一周したら、最後にマウスをダブルクリックして終了です。
なんとびっくり!綺麗な円が描けました!
太い線で円を作りましたが、ペン入れツールはとても便利で、線の太さも変更可能です。「線変更」ツールをクリックし、変えたい線の太さを選び円をクリックするだけです。
ひとつ綺麗な円が作れてしまえばあとはこっちのもんです!
複製したり自由変形で形を変えたりして、懐中時計を作っていきます。線の一部を「修正液」ツールで消したり、「制御点」ツールで円の一部を伸ばしたり、自由自在です!色々試しつつ懐中時計に近づけていきます。
これで懐中時計の雛型が完成です。
ペン入れレイヤーは、通常レイヤーと統合しない限りペン入れツールが適用されます。仕組みが分かるまでは特に気にしなくても大丈夫です。
作った懐中時計を「矩形選択」ツールの「自由変形」を使って配置します。下書きでの位置とは全然違いますが、無視してバランス良く配置します。ついでに懐中時計の上の装飾も描いておきます。
トランプもペン入れレイヤーを使って描いていきます。今度は「折線」ツールでぽちぽち四角を作ります。トランプは、1つ作ったらあとはコピー&ペーストで増殖させます。
あとは草木や蝶々を描いて背景の線画は終わりです。これで「背景線画」と「キャラクター」の線画が完成しました。背景の線画も線と線をしっかりつないで穴がないように制作します。
このままだと背景線画が透けて見えてしまうので、調整します。
キャラ線画のレイヤーで、キャラクターの外側をすべて選択します。「自動選択」ツールを使います。
次にメニューの「選択」→「選択範囲の反転」をします。
キャラ線画の下に新規レイヤーを作成し「白で塗りつぶします」←大事です。
その塗りつぶしたレイヤーと、キャラ線画のレイヤーを統合します。
これで線画の完成です!