人民元は今後も断続的に切り下げられる
8月11日、中国人民銀行は対ドルレートでの事実上の人民元切り下げを発表した。市場関係者にとって、これは全く予想外の出来事であり、この日、世界の株式市場はほぼ全面安の展開となった。
7月9日付けの同コラム(『ギリシャ問題よりもっと怖い!「中国株バブルの崩壊」』)で、筆者は、中国の政策当局が、中国株の暴落を起点とした金融危機を未然に防止するためには、中国人民銀行による量的緩和(QE)政策が必要であり、そのQE政策が効果的に機能するためには、人民元の(大幅)切り下げが実施される必要があると書き、切り下げの可能性がある点を指摘した。
統計で確認することは困難だが、今回の人民元切り下げに先立って、すでに中国人民銀行は、QE政策を実施しているとの話が一部から伝わっていた。筆者が伝え聞くところによると、中国人民銀行は政府系の金融機関に対して、地方債の購入を通じて資金を供給し、政府系の金融機関は、その資金を政府系のファンドに融資し、政府系金融機関が中国株を購入することで、株価を下支えしている。そして、その規模は現時点で1兆元に達し、不十分であれば、さらに4兆元程度まで上積みする腹積もりであるらしい。
つまり、このようなQE政策が機能するためにも、中国当局は、人民元の切り下げを行う必要があったのだと考える。いくらQE政策を拡大させても、為替レートを固定したままでは、中国当局は非不胎化介入を余儀なくされ、流動性供給は相殺されてしまうからである。
株式市場に直接、資金が注入されたとしても、別のところで資金が吸収され、それが信用収縮を起こしてしまえば、瞬く間に株価に波及してしまう。このところの中国株市場が非常に高いボラティリティを伴って上下動を繰り返している理由は、そこにあったのではないだろうか。
そう考えると、今回の人民元レートの切り下げは、うまくいけば中国株市場のボラティリティを幾分低下させる可能性がある。ただし、昨日の切り下げ幅はわずか2%なので、今後も断続的に切り下げ幅を拡大させなければ十分な効果は得られないだろう。よって、逆にいえば、人民元は今後も断続的に切り下げられる可能性が高いと思われる。
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