東京新聞のニュースサイトです。ナビゲーションリンクをとばして、ページの本文へ移動します。

トップ > 東京 > 8月12日の記事一覧 > 記事

ここから本文

【東京】

戦争の惨状を作品に凝縮 美術家の三橋さん 地元町田市が個展

戦場で負傷した自身を再現した立体作品(右)などが並ぶ会場=町田市で

写真

 太平洋戦争に出征した経験を、芸術作品を通じて表現している町田市在住の造形美術家、三橋国民(くにたみ)さん(94)の作品を集めた企画展「三橋国民 鎮魂70年目の夏」が三十日まで、市立博物館(本町田)で開かれている。 (栗原淳)

 戦後七十年の節目に地元出身の三橋さんの軌跡を振り返る。市が三橋さんの個展を主催するのは初めて。水墨画、アクリル絵画、鉄製の立体作品など約六十点が展示されている。

 三橋さんは一九二〇(大正九)年に町田で生まれ、四四年の応召でニューギニア戦線へ送られた。所属小隊は壊滅的な被害を受けるも九死に一生を得て帰還。彫金技法を習得して芸術活動をスタートした。戦火に散った僚友の鎮魂、平和への祈りをテーマに掲げ、絵画も含めた幅広いジャンルの創作に励む。日展の審査員などとして美術界の第一線で活躍しており、昨年、名誉市民と名誉都民を受章した。

 企画展は、三橋さんが檀家(だんか)総代を務める勝楽寺(原町田三)で常設展示されている作品も含め、五〇年代のものから初公開作まで、業績を網羅する内容。敵機の襲撃で頭部を吹き飛ばされた高射砲手を描いた屏風(びょうぶ)絵「爆砕図」など、戦線の惨状を生々しく伝える作品が並ぶ。

 三橋さんは先月行われた企画展の記念式典で、「国のため一生懸命戦った若者のことを忘れては申し訳ない」とあいさつ。「私たちの世代は鉄砲玉のように扱われ、青春も何もなかった。戦争そのものをよく見つめ、何かを感じ、伝えてほしい」と訴えた。

 入場無料。問い合わせは同館=電042(726)1531=へ。

 

この記事を印刷する

PR情報