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【政治】

国会70年決議見送り 立法府の意思示さず

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 戦後五十年と六十年の節目に、首相談話に先立って「侵略的行為」への反省などを表明してきた衆院での国会決議が、戦後七十年の今年は見送られることになった。自民党が、安倍晋三首相が出す戦後七十年談話への影響を懸念した側面が大きい。首相談話で歴代政権の歴史認識が変えられる可能性がある中、国権の最高機関である立法府の意思は示されない。 (石川智規)

 「今回は首相(だけ)が、ご自身の談話を出されるべきではないか」

 自民党の稲田朋美政調会長は今月六日の記者会見でこう述べ、戦後七十年の国会決議は必要ないとの考えを示した。同党の谷垣禎一幹事長は、三月の時点で「七十年で国会決議をする必要は必ずしもない」と明言している。

 首相の七十年談話では、歴代政権の歴史認識を実質的に変える可能性が指摘されてきた。自民党としては、従来の歴史認識に沿った国会決議をすれば、首相談話を縛ることにもなりかねない。従来と異なる決議にすれば、野党が反発し、歴史認識問題をこじらせる恐れがある。稲田氏は「国会の決議は原則、全会一致だ」とも述べ、安全保障関連法案をめぐって与野党が対立する状況が背景にあることを示唆した。

 一方、野党側も決議を強く求めなかった。衆院議席の過半数を持つ自民党が賛成しなければ、決議の採択は難しい現実がある。維新の党の松野頼久代表は外交への影響に触れ「国会決議は必要ない」と強調した。

 国会決議は法的拘束力はないものの、立法府としての意思を内外に示すもので、政治的な意味は重い。

 戦後五十年の国会決議は、一九九五年六月九日の衆院本会議で議決。「近代史における植民地支配や侵略的行為」に対し、「深い反省の意」などを盛り込んだ。社会党の村山富市首相の強い意向に、連立政権を組んでいた自民、さきがけが配慮して実現した。

 だが、「侵略的行為」などの表現に、与野党の多くの議員が反発。当時一年生議員だった安倍首相を含め、欠席者が続出した。賛成したのは全議員の半数以下で、全会一致が慣例の決議として極めて異例だった。

 戦後六十年の国会決議は二〇〇五年八月二日に衆院で議決。当時は小泉純一郎首相が毎年、靖国神社を参拝して中国との関係が悪化しており、自民党出身の河野洋平議長の強い意向で採択された。

 「わが国の過去の一時期の行為がアジアをはじめ他国民に与えた多大な苦難を反省」するとしたが、「侵略的行為」の表現は盛り込まれず、自民党も賛成できるような内容となった。

 

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