銅鐸:ひも発見、舌につり下げ鳴らす 奈良文化財研が発表
毎日新聞 2015年08月12日 18時56分(最終更新 08月12日 21時53分)
兵庫県南あわじ市(淡路島)の石材加工業者の砂山で4月に発見された松帆銅鐸(まつほどうたく)について、県教委と市教委、奈良文化財研究所(奈良市)は12日、銅鐸の取っ手と、内部で音を鳴らす棒状の舌(ぜつ)に、植物性のひもが付着し、痕跡も見つかったと発表した。いずれも国内初の発見で、奈文研は「銅鐸を、ひもでつり下げて鳴らしていたことを示す極めて重要な発見」としている。
発見された銅鐸7個のうち、内側に一回り小さい銅鐸をはめた「入れ子」状態の1組2個について、内部に詰まっていた砂を取り出して調べた。
その結果、外側の銅鐸の※(ちゅう)と呼ばれる取っ手部分から、太さ約2ミリのひもの一部と、繊維の凹凸がさびになるなどの痕跡が4カ所見つかった。舌の穴には太さ約5ミリのひもの結び目も残っていた。内側の銅鐸の取っ手にも、ひもの繊維と痕跡が確認され、舌の穴には太さ約4ミリのひもが付いていた。(※は金へんにつくりが紐の右側)
ひもは繊維数本を合わせたもので、銅鐸や舌から溶け出した銅イオンの防腐作用によって残ったとみられるという。また、2個とも内部にイネ科と推定される草の葉が付着していた。
奈文研は今後、ひもや葉を放射性炭素年代測定で分析し、銅鐸を使用、埋納した時期の特定を進める。埋納の時期については弥生時代中〜後期に2段階で埋めたとする説と、多段階にわたって埋めたとする説があるが、論争が決着する可能性がある。
今回の発見を受けて県教委と市教委は13日、南あわじ市滝川記念美術館で開催中の「松帆銅鐸速報展」に、ひもの写真パネルを追加展示する。同展は16日まで。問い合わせは市埋蔵文化財事務所(0799・42・3849)。【松本杏】
◇謎が一つ解明
奈良文化財研究所の難波洋三・埋蔵文化財センター長の話 ひもが残っていたのは奇跡的で、非常に驚いた。銅鐸の使用法については、両手で持って鳴らす説もあったが、今回の発見でつり下げて鳴らすことが明白になり、謎が一つ解明された。100年に1度と言ってもいい大発見だ。長く論争のある埋納時期についても、解決の手がかりを与えてくれる非常に重要な資料になるだろう。