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集団的自衛権 揺れる遺族会 滋賀県会長「反対」貫く

安保法案への反対を訴える滋賀県遺族会の岸田孝一会長=大津市の滋賀県遺族会館で

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 戦後七十年の夏、自民党を長年支援してきた日本遺族会が揺れている。集団的自衛権の行使容認を柱とする安全保障関連法案をめぐって遺族の間に懸念が根強く、会として統一見解を出せていない。各地で戦没者追悼式が近づくが、法案に疑問を持つ一人で滋賀県遺族会長の岸田孝一さん(73)は県の式典で、昨年に続き「反対」を明言しようと決意している。

 日本遺族会は自民党の有力な支持団体の一つで、参院選では自民党から比例代表で独自候補を当選させてきた。歴代会長には故橋本龍太郎元首相や古賀誠元幹事長らが名を連ね、現会長も自民党の水落敏栄(みずおちとしえい)参院議員(比例)が務める。

 遺族会関係者によると、集団的自衛権の行使をめぐっては地方組織などから賛成、反対双方の立場で見解の問い合わせを受け、安倍政権が憲法解釈を変更した後の昨年九月の理事会で対応を協議した。だが「多様な意見が内部にある」と結論は出ないまま、現在に至っている。

 岸田さんは昨年五月に滋賀県遺族会長に就任後、同八月にあった県戦没者追悼式で行った遺族会代表あいさつで「二度と戦争をしないでほしい。集団的自衛権の行使容認には絶対に反対だ」と訴えた。

 追悼式の場で政権の方針に異を唱えるあいさつは遺族会の中で異例。後日の県遺族会の理事会では「自民党支持なのに言い切っていいのか」と発言をいさめる意見も一部にあった。だが大多数は「よく言ってくれた。こういうことははっきりしておいた方がいい」と支持する声だったという。

 岸田さんの父・一三(いちぞう)さんは一九四一年に陸軍の工兵として出征し、三年後に東部ニューギニアで戦病死した。出征の三カ月後に生まれた岸田さんは一度も父の顔を見たことはない。反対の声を上げるのは「同じ被害者を生み出しかねないことには、はっきりとダメだと言わなければいけない」からと言う。

 ことしも反対を唱えるつもりの追悼式は八月二十六日に予定されている。「私たちは百年でも二百年でも『戦後』にこだわらないといけない」と話す。

 (政治部・木谷孝洋)

 <日本遺族会> 日中戦争以降の戦没者の遺族でつくる全国団体。1947年に創設された日本遺族厚生連盟が前身で、戦没者の慰霊や遺族の福祉向上などに取り組んでいる。各都道府県には独立した遺族会があり、支部としての役割を担っている。会員数は78年に約104万世帯だったが、2008年には約78万世帯となり、年々減少している。

 

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