川内原発:11日再稼働…猛暑の今夏でも電力供給は余裕

毎日新聞 2015年08月10日 20時30分

 川内原発1号機(鹿児島県薩摩川内市)を11日再稼働させる九州電力。「電力の安定供給」を再稼働の理由に掲げるが、節電意識の定着に加え、太陽光発電の急拡大で猛暑が続く今夏も供給には余裕がある。

 電力供給の余裕度は、その日の供給力に対し、ピーク時の需要がどれだけあったかを示す「電力使用率」で判断する。一般にはエアコンを一斉に使用する真夏の午後が1年で最も使用率が高くなる。九電は97%超で「大変厳しい」、95%超で「厳しい」、92%超で「やや厳しい」、それ以下を「安定」した需給状況としている。

 九電管内で今夏、ピーク時の需要が最も高かったのは、各地で最高気温が35度以上の猛暑日となった今月6日午後4時台で、1500万キロワットを記録した。ただこの日でも、ピーク時の供給力(1721万キロワット)に対する使用率は87%にとどまった。

 九電管内の原発は福島の原発事故後の2011年12月までにすべて停止し、12年夏には使用率が90%台まで高まった日が17日あった。しかし、昨夏は90%台が5日で、今年はまだ1日もない。九電は12年の夏を最後に、数値目標を定めた節電要請をしていない。

 電力供給にゆとりが生まれた背景にあるのが太陽光発電の広がりだ。原発事故前の10年度末に56万キロワットだった九電管内の太陽光の導入量は、再生可能エネルギーの固定価格買い取り制度(FIT)を受けて、今年6月末には10倍近い517万キロワットまで増えた。太陽光は天候により出力が大きく変動するが、晴天続きの夏場はピーク時の供給力に大きく寄与している。

 余裕がある中で再稼働する理由について、九電は原発停止に伴い、運転から40年以上の「老朽化」した火力発電所を稼働させている点を挙げる。他方で、経営環境が悪化し火力発電の修繕費も減らさざるを得ず、6月以降の発表分だけでトラブルが4件に上った。

 九電幹部は「火力発電がトラブルで停止すれば一気に供給力が不足する。原発が再稼働しなければ安定供給できなくなるかもしれないという不安と常に隣り合わせだ」と説明している。【関東晋慈、遠山和宏】

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