ニュース

【夏休み特別企画】お父さんのための「刀剣乱舞-ONLINE-」解説講座

「刀剣乱舞」はなぜ女性にウケるのか? 自身もハマった女性ライターが解説!

1月14日
サービス開始
利用料金:無料

ビジネスモデル:アイテム課金制

 2015年1月にサービスが開始されて以降、特に女性を中心に大人気のブラウザゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」(刀剣乱舞)。その人気ぶりは「刀剣」ブームなる現象をも引き起こしていますが、「流行ってるよね」程度の認識で、なぜここまで人気があるのかまでは知らない読者も多いのではないでしょうか?

 今回は夏休み特別企画ということで、最近「刀剣乱舞」にハマりっぱなしという“少女漫画マイスター”の和久井香菜子さんが、男性と女性の脳機能の違いにも踏み込んだ独自目線で、「なぜ『刀剣乱舞』は女性に人気があるのか?」を解説します。

著者紹介:和久井香菜子

 社会学ゼミで少女漫画について研究したことをきっかけに、少女漫画コラムの執筆をはじめる。男性向けに少女漫画を解説した「少女マンガで読み解く乙女心のツボ」(カンゼン)を上梓。少女漫画と少年漫画がどう違うのかを脳科学や心理学を絡めて解読している。最近は乙女ゲームにはまって引きこもり中。

なぜ「刀剣乱舞」は女性に人気があるのか?

これが女子たちをどっぷり沼に浸からす入り口

 今年の夏はいろいろおかしい。この猛暑もそうだが、夏休みにあわせて水戸の徳川ミュージアムでは燭台切光忠、東京国立博物館で厚藤四郎、名古屋の徳川美術館で鯰尾藤四郎の展示が決まった。その他にも全国で次々と名剣・名刀の臨時公開が決定されている。言わずと知れた、ブラウザゲーム「刀剣乱舞」のブームによるものだ。

 これまで刀剣に見向きもしなかった女子たちがいきなり熱く燃え上がり、聖地巡礼と称してナマの刀剣を追いかけている。筆者も含め、「刀剣乱舞」のなにがそんなに彼女たちの心を掴んで止まないのだろうか。

 GAME Watch読者には馴染みの深いだろうゲーム「艦隊これくしょん -艦これ-」(艦これ)が解説の補助線として適しているので、まずはこれを参考にして説明してみよう。

「刀剣乱舞」のゲームシステムは「艦これ」の簡略版!

ご覧のとおり、母艦→本丸、出撃→出陣、編成→結成と、世界観にあわせて言葉も変わっている

 「艦これ」は同じDMMゲームズのタイトルで、「刀剣乱舞」では先行して流行していた本作を参考にして制作されたと思われる。そのため基本の構成は同じで、戦闘や製造によって「刀剣男子」を手に入れる、手に入れた刀剣男子を結成して出陣する、戦闘で怪我をすれば手入して直してあげるといった流れが中心になる。また刀装といって刀剣男子に装備する兵隊を製造することもできる。刀剣を作る鍛刀や刀装、手入れに必要な資材は、木炭、玉鋼、冷却剤、砥石と、要素の名称は世界観にあわせたものに変更されている。

 大きく違うのは、プレーヤーである審神者(さにわ)は、ゲーム上には登場しないことだ。「艦これ」では、プレーヤー自身は艦娘たちに「提督!」などと呼ばれることがあるが、「刀剣乱舞」でキャラクターに声をかけられたり、話題に上ることはない。

 ゲームシステム的には、全体的に「刀剣乱舞」は「艦これ」の簡略版である。例えば、刀剣男子には補給は必要ない。着の身着のままで戦うことができ、弾切れや燃料切れを起こすことはない(が、あまり無茶な戦わせかたをすると疲労してやる気がなくなってくる)。

 また「任務」も、「刀剣乱舞」のほうが簡単だ。「艦これ」では、自分で任務を設定し、クリアしないといけないが、「刀剣乱舞」では自動的に任務が完了されると「達成」となる。ただしこれを了承しないと、報酬を受け取ることはできない。任務には単発の主要任務と、毎日コツコツ消化する日課任務がある。

達成すると勝手にマークがつくので、それをクリックするだけ

 戦闘も、「刀剣乱舞」のほうがずっと簡単だ。出陣(出撃)、演習、遠征のシステムは同じだが、大きく違うのは「陣形」。「刀剣乱舞」では合戦場に行くとまず索敵をして、敵の陣形を調査する。索敵が成功すれば敵陣形が判明した上で、「雁行陣」、「逆行陣」、「横隊陣」、「方陣」、「魚鱗陣」、「鶴翼陣」の6つの陣形から自身の陣形を選ぶ。このとき、敵陣形がわかっていれば、どの陣形が有利で、どの陣形が不利かを教えてくれるのだ。敵の戦力が大幅に上回っていなければ、たいてい索敵は成功するので、有利な陣形を選べばよい。

陣形と戦略をいちいち考えなくてもいいので楽だ

簡単だからおもしろい? 脳機能に適したハマるツボ

 となると湧いてくる疑問は「そんなに簡単にしておもしろい部分があるのか?」ということだろう。異論を覚悟でいえば、「簡単だからおもしろい」のである!

 何万年もアフリカの大地で狩猟に明け暮れていた男性たちにとっては、大物を捕まえて家に持って帰るのが生きるために必要な能力だった。そのため戦略や方向感覚などはとても大切なのだそうだ。自分の支配する土地が増えれば狩猟も楽だ。「陣地取り」は男性にとって生き残るのに必要な能力だった。

 しかし女の脳みそは、「陣地取り」にあまり興味がない。仲間同士でぺちゃくちゃやりながら木の実を取ったり子育てをしたりしていたからで、人と心地よくコミュニケーションを取るほうが大切だ。赤ん坊や隣人がどんな気分なのかを見極めるほうが、敵を倒す戦略を練るよりも生きるために必要なのである。

 女性にとって1番大切なのは「相手に共感すること」だ。「刀剣乱舞」(というか乙女ゲーム全般)はそういう「女性脳」のためにカスタマイズされている。刀剣男子を育てるためには出陣させる必要があるが、女たちは細かな戦略にはあんまり興味がないので、そこは思いっきり省略されている。

 その代わり、女たちにとって大切なのはストーリーだ。これがないと何に共感していいのかわからない。だから「刀剣乱舞」には、彼らが戦う理由が設定されている。「刀剣を擬人化してみましたっ! てへ」なのではなく、刀剣がイケメンになっている理由がちゃんとあるのである。

 そのストーリーとは、「西暦2205年、『歴史修正主義者』が過去に干渉し、歴史改変をもくろんでいた。それに対抗するべく、審神者は刀剣から生み出された付喪神である『刀剣男子』を各時代へ送り込んだ――」というもの。ゲームでは、その刀剣男子たちと歴史修正主義者たちの戦いを描いているのだ。それはいかにも正当な感じだし、決して「侵略」のためではないのがポイントだ。なぜなら女は陣地取りに興味がないから。

傷ついてもなお戦う骨喰藤四郎くん。帰ったら手入れしてあ・げ・る!

 そして刀剣男子たちはアンニュイなことを言うやつが多い。「俺は偽物なんかじゃない……!」とか「記憶がなくても……昨日がなくても……何とかなる」といったセリフだ。多くの女はアンニュイなイケメンが好きなのだ。共感しやすいし、構ってあげたくなるし、自分が必要じゃないかと思えるからだ。そしてこういう、女心を痺れさせるセリフをイケメン刀剣男子たちがバンバン喋るのである。

 余談だが私の好きな刀剣男子は、見た目は骨喰藤四郎と鯰尾藤四郎だが、どちらも脇差なので華奢な少年風である。また加洲清光もいい。「修理してくれるってことは……まだ愛されてるのかな……」とか「こんなにボロボロじゃあ……愛されっこないよな……」とかかわいらしいことをいっぱい言うので、彼が出てくるだけで痺れふぐ状態である。

赤い爪がかわいい加洲清光くん

 堀川国広と和泉守兼定は、新選組の土方歳三が所有していた刀剣ということでカップリングが行なわれている。そのため堀川国広は和泉守兼定が大好きで「兼さん差し置いて、僕が隊長でいいのかな」といったように、兼さん兼さんうるさい。しかし和泉守兼定は、堀川国広のことなんかひと言も口にしないのである。セリフ的には完全に国広の片思い状態である。

 これが、女たちのストーリー好き脳をおおいに刺激するのだ。国広は兼定が大好きだけれど、兼定は国広をどう思っているのか? なぜ彼は国広について口にしないのか……?

 ゲームをしていてもそれは解決しない。審神者たちはそのミッシングリンクを求めて……二次創作へ走る。自らストーリーを創り出す審神者もいれば、ROMにいそしむ審神者もいる。もっともっと。もっと推し刀剣について知りたい、考えたい……!

刀剣男子との距離感もGood。内番の着替えも萌えポイント!

内番を言いつけられた和泉守兼定さんと堀川国広くん。国広くんはジャージ姿に……!

 だけど、意外なことがひとつある。ゲーム中に「甘い口説き文句」が一切出てこないことだ。プレーヤーである審神者がゲームに登場しないのだから当たり前なのだが、刀剣男子たちは審神者に話しかけることすらない。ゲーム内で審神者の文字は登場せず、プレーヤーは、神のような空気のような存在なのである。これがまたいい。

 男子同士の恋愛を描くボーイズラブを好きな女子は多いが、その理由の1つには、「自分が関わらない」ことがある。男同士の恋愛なのだから、自分が割って入る隙がないのは当たり前だ。でもそういう、1歩距離を置いた客観視点がいいのである。

 女の脳みそは、過去にあったことでもあたかも目の前に起こっているかのようにありありと再現することができるという。例え架空の物語でも、振ったり振られたり乱暴されたり、それを自分の身の上としてまざまざと想像するなんて辛すぎるのだ。だから、その身代わりとして男子同士を恋愛させる。そうすれば自分との間に距離感が生まれて、感情移入しすぎることなく気楽に楽しめるからだ。

 男性たちは、「女を落とす口説き文句」とか「壁ドン」とか、「これさえやれば女は落ちる」みたいなのがあると思いがちだが、そんなことはない。女が萌えるのは「ストーリー」である。「刀剣乱舞」は、甘い口説き文句も壁ドンもない。あるのは、男子たちの過去を彷彿とさせるような意味深なセリフだけだ。

 そして、「相手を理解したい」、「共感したい」という女の脳みそは、刀剣男子たちの「意外な」姿にも萌えっとする。「内番」というコマンドでは、男子たちに馬当番、畑当番、手合せの3つのどれかを任命できる。

 その内番を任命されると、男子たちはジャージ姿や作務衣といったラフな格好に着替えてくるのだ。これがまたかわいい。普段、アンニュイなことを言ったり、真剣に打ち合っている男子たちが、内番となるとまさかのジャージ姿である。この内番姿も審神者たちの萌えポイントなのだ。ツンデレのギャップ萌えみたいなものだろうか。で、ここでまた一句……というふうに内番でも二次創作の意欲が湧く。

 このように、「刀剣乱舞」の作業自体はたいへん簡便だが、遊んでいる女子たちの脳みそはツボを押さえられまくった結果、フル活動しているのである。このゲームのヒットの理由から、女性ファン心理を少しでも捉えていただければ幸いである。

(和久井香菜子)