第109回 「“LGBT”はもう過去の話」……!? アメリカで急浮上のトレンド“TBGL”とは?

2015/08/07

USAとかNASAとかLGBTとか、なんでも略すの好きよね、アメリカって。

まきむらよ。
 
毎週金曜、世界のニュースから性を考える時事コラム「まきむぅの虹色NEWSサテライト」をお送りしております。
 
今回のテーマは「アメリカで急浮上のトレンド“TBGL”とは?」です。



「LGBT」を逆から読んだ言葉、「TBGL」。

これはもしかして「レズビアン・ゲイの権利に比べてトランスジェンダーとかバイセクシュアルが置き去りにされすぎじゃね!?」みたいな言葉かと思ったら、どうもぜんぜん違うようです。

今回はこの新しいムーブメント「TBGL」について、


★ 「“LGBT”はもう過去の話」……アメリカで急浮上のトレンド“TBGL”
★ 写真で見るTBGL!
★ つまり、TBGLってなんなのよ?

 

以上の流れでご紹介いたします!
 

★ 「“LGBT”はもう過去の話」……アメリカで急浮上のトレンド“TBGL”とは?

NHKの番組でも使われるなど、すっかり日本でも定着したとみえるこの言葉、LGBT。

これはもともと「レズビアン・ゲイ・バイセクシュアル・トランスジェンダー」の頭文字をとって作られた言葉で、アメリカを発祥地としています。

そんなアメリカでは今、さらにこの4文字を逆から読んだ言葉、「TBGL」に注目が集まりつつあるんですね。ブームの火付け役となったラスベガスの女性チェルシー・レネ氏は、既にSNSで10,000件以上のシェアを集め、彼女のfacebookページは8,800人以上にフォローされるなど、ちょっとした有名人になっています。

そんなTBGLとはいったい? まずはfacebookに寄せられたいくつかの投稿から、このTBGLのイメージを見てみましょう。

★ 写真で見るTBGL!
 
 

#JesusFreak #TBGL thanks for sharing.

Posted by Kenitra M. Johnson on 2015年7月28日
 
 

#TBGL #NUFFSAID

Posted by Mario Manifess Chambers on 2015年7月28日

ということで、TBGLについてふたつの例を紹介しました。「ビフォーアフター」って言葉とともに、同一人物の男性的な姿と女性的な姿が並べられていますね。

こういう画像を見ると、おそらく多くの2CHOPO読者の皆さんはこう思われると思います。

「SRS(性別適合手術)のビフォーアフター画像かな?」

が、違うんです。違うんですよ。

これはですね、

ボーイッシュなレズビアンが神の愛によって本来の女性の姿に戻れたよ

という画像なんですね!!

……

……

えっと……

言っている意味があまりよく分からないというのが率直なところだ

ちょっと何を言ってるかわからないかもしれませんので、この言葉の提唱者であると思わしきデイヴォン・ジョンソン氏のfacebookページを参考に解説します。

★ つまり、TBGLってなんなのよ?


TBGLとは?

Transformed By God's Love(神の愛によって変身させられた)」の略。「かつてLGBTという間違った道を歩みつつあった私も、神様の愛のおかげで本来の男らしさ/女らしさを取り戻しました!」みたいな意味。
 

ここでいう神様とはもちろん、アメリカという国家の土台をなすと言っても過言ではないあの宗教、キリスト教の神様のことです。

かといってキリスト教徒全員がアンチLGBTかというと、全くそんなことはありません。LGBTキリスト教徒ネットワークみたいなのも世界中にたくさんありますし、ローマ法王はLGBTコミュニティへの貢献者として表彰されていますし、オープンなトランスジェンダーの牧師だっていますし、あのTIME誌だって神はゲイを見捨てないみたいな記事を書いています。

が、そんな流れが気に食わなかったのが、もう一方にいる「宗教上の理由でLGBTは認められない」という人達なんですね。

そこでもともと2013年ごろ、「キリスト教信仰に基づきLGBTやポルノ作品などの性的不道徳を正す」と訴える宗教団体「オーヴァーカマーズ・ネットワーク」の代表デイヴォン・ジョンソン氏が、

「LGBTを逆から読むとTBGL(神の愛によって変身させられた)って言葉になるよね!」

と言い出した、というわけです。
 
 

The acronym L.G.B.T. (Lesbian Gay Bisexual Transgendered) flipped around is T.B.G.L. (Transformed By God's Love)...

Posted by Davon Johnson on 2013年8月9日

が、この時はこの言葉、

あまり流行らず。

そこから2年経った今年、2015年になって、やっと流行の兆しが見え始めました。きっかけはラスベガスに住む女性、チェルシー・レネ氏がネットでこんなふうに報じられたことです。

「レズビアンの女性、“レズすぎる”ボーイッシュな服を寄付し、異性愛女性っぽい服を買うための募金を募る」
まきむぅの虹色NEWSサテライト
gofundmeスクリーンショット/2015年8月4日閲覧

この件は多くのLGBTニュースサイトで報じられ、チェルシー・レネ氏は「カネや服が人を異性愛者にするわけないでしょ」「あなたは単に一部キリスト教信者からお金を巻き上げたいだけ」などと散々にぶっ叩かれました。

が、チェルシー・レネ氏本人は、少なくとも募金ページでは、自らをレズビアンだったとも言っていないし異性愛者になりたいとも言っていないのです。ただ、「自分の中の女性性を大事にすることの大切さに気づいた」「10年以上も続けた男の子っぽい格好をやめ、服をすべて子どもたちに寄付して、新しい人生を送って行きたい」というような内容のことを書いています(英語原文はこちらから)

そんなチェルシー・レネ氏は今後、全米を周り、自らの経験を語っていきたいという考えでいるようです。「TBGL」な人々の画像をfacebookでシェアし、そこに集まる何百もの「いいね!」を励みにしながら。

まきむぅの虹色NEWSサテライト

それにしても。

なぜ人は、大してソースも読まずにネットニュースだけで人を叩きたくなってしまうのか。
なぜ人は、「あなたはあなた、わたしはわたし」で済ませずに自分と違う人を叩きたくなってしまうのか。

LGBT 対 TBGLみたいな論争吹き荒れる中で、私はぼんやり考えるのでした。答えはちっとも見つからないけれど。
 

……ということで、読んでくださってありがとうございました! また来週金曜日にね。まきむぅでした◎

▼よかったらツイッターも覗いてみてね(特にTBGL画像はないけど)

牧村朝子

タレント、文筆家。 フランス人女性とフランスの法律で国際同性婚、在仏3年目。所属事務所「オフィス彩」社長の杉本彩に結婚報告の際、「伝えたいことがあってこそ芸能をやる意義があるのよ」と言われ、感銘を受ける。以来、レズビアンであることを公表して各種媒体に出演・執筆。著書「百合のリアル」、主な出演「5時に夢中!」ほか。将来の夢は「幸せそうな女の子カップルに"レズビアンって何?"って言われること」。



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