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【政治】

「反対多数」世論の中 川内原発再稼働

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 原発の再稼働をめぐり、安倍政権は推進の大方針を掲げながら、個別の再稼働の判断には関与しない姿勢を示している。九州電力川内原発1号機の十一日の再稼働も政権内の手続きはなく、最終的に「事業者の判断」を強調した。世論調査では依然、過半数が再稼働に反対する中、安倍政権は川内原発を皮切りに、同じように他の原発も動かす方針だ。 (関口克己)

 菅義偉(すがよしひで)官房長官は十一日の記者会見で、川内原発が再稼働したことについて「原子力規制委の新規制基準に適合すると認められた場合は、再稼働を進めると閣議決定している」と従来の方針を繰り返した。同時に「(適合すれば)実際に再稼働を行うのは事業者だから、事業者が判断をする」として、個々の原発を再稼働するかどうかの最終判断に政権は関与しないとも説明した。

 しかし電力不足の不安もない今、なぜ今回再稼働が必要なのか、政権側から明確な説明はない。

 二〇一二年夏、東京電力福島第一原発事故後に初めて再稼働した関西電力大飯(おおい)原発(福井県おおい町、現在は停止中)をめぐっては、当時の野田佳彦首相が「最終的に私の責任で判断する」と明言。関係閣僚会議を重ね、最終的には野田氏自身が福井県知事に説明し、同意を得た。

 当時は原子力規制委の発足前で、新規制基準もなかった。野田政権が設けた暫定的な基準が安全対策として十分だったわけではないが、安倍政権よりは目に見える形で判断の手続きを踏み、責任の所在も明確にした。

 川内原発は大飯原発に次ぐ再稼働にもかかわらず、判断に関与せず、説明もしない安倍政権の姿勢が際立つ。首相は新規制基準を「世界で最も厳しい」と強調するが、川内原発の再稼働についてはこの日、夏休み中で何も語らなかった。

 「最も厳しい」と首相が繰り返す基準に基づく再稼働でも、七月に共同通信が行った世論調査では反対が56・7%にも上った。

 賛成は34・4%にとどまる。反対の世論に向き合おうとしない政権の姿勢は、集団的自衛権の行使を容認する安全保障関連法案の成立を急ぐのと同じ構図だ。

 

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