昨日中国が人民元を1.9%切下げました。この切下げ幅は一見すると小さいように見えるけど、過去20年で最大です。

この切下げのニュースは中国のマーケットよりドイツ、米国、その他新興国に大きなインパクトを与えました。

海外の投資家が慌てているひとつの理由は、人民元切下げが信用市場に悪い影響を及ぼすことを懸念しているからです。

まず背景を説明します。

リーマンショック以降、米国以外の場所における米ドル建ての債務は急膨張しました。現在の残高は約9兆ドルです。

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そのうちの3.3兆ドルは新興国(青)の主体がカウンターパーティーとなっています。リーマンショック当時は1.9兆ドルだったので、短期間に1.4兆ドル増えたことになります。

このうちのかなりの部分が中国のノンバンクの債務です。もっとざっくばらんな言い方をすればペーパー・カンパニーを使ったスキームです。

このような米ドル建てでの借り入れを行った背景には(どうせ人民元と米ドルはゆるくペッグされているから、為替リスクは無いに等しい!)という横着な考え方がありました。

もし人民元がどんどん切下がるのであれば、それは返済額が膨張することを意味するので、その中には返済できなくてデフォルトするものも出てこないとは限りません。

それから別のシナリオになりますが、人民元が切下げられたことで、中国以外の新興国の通貨も売りプレッシャーを浴びています。ブラジル、インド、その他の新興国は近年、米ドル建ての借金を増やしていました。それらの国々も上の説明同様、返済負担が膨張するリスクに晒されているのです。

つまり今回の中国の利下げ断行は、主に経済成長の問題に対応するための措置だったわけだけど、それが全面的な新興国通貨安を誘発すれば、それは信用リスクに姿を変えるというわけです。