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闇の正体:ミャンマー宗教暴動/5 「過度な擁護」遺恨生む(2013年10月30日掲載)
2015年05月29日
ロヒンギャ族の襲撃で重傷を負い、避難民キャンプで暮らすラカイン族の女性教師プイカインさん
ミャンマー西部ラカイン州で昨年起きた一連の暴動を、国連や一部の国際人権団体は「ロヒンギャ族(ベンガル系イスラム教徒)への『民族浄化』だ」と非難する。一方的な迫害というわけだ。
州都シットウェにあるモエザラ避難民キャンプは、ロヒンギャ族の焼き打ちで自宅を失った仏教徒ラカイン族の670世帯3000人が身を寄せる。その中に、バングラデシュ国境に近い州北端部の町マウンドー郊外の村から逃れた仏教徒の女性教師プイカインさん(39)がいた。
州北端部は住民の9割超をイスラム教徒が占める。彼女はそこで、校長の夫と同じ小中学校で20年近く教壇に立ってきた。生徒の大半はイスラム教徒だ。
昨年6月8日昼過ぎ。彼女は副業で営むビデオ店で、イスラム教徒の店員から「物騒なことが起きそうだから用心して」と耳打ちされたという。5日前に州中部で、仏教徒女性へのレイプ殺人に対する報復として、仏教徒集団がイスラム教徒の乗ったバスを襲撃し10人を殺害する事件が起きていた。
夕刻、トラック2台に分乗したイスラム教徒が剣やこん棒を手に自宅に来襲した。「その中に私のクラスの生徒が2人いたんです。集団の大人たちに叫んでいました。『私の先生は殺さないで!』って」
彼女は背中を切られ重傷。「私を襲った男が『あなたの仏様は今のあなたを救えるかな?』とうそぶいたのを今も忘れません」と振り返る。
夫の校長は殺された。暴動調査委の報告書には「教え子3人が殺害」とあるが、彼女は「誰も見ていないと思う」と証言した。ただ「集団にリーダーがいて、多くは指示され渋々加わっているようだった」と語った。
その日、マウンドー一帯で同時多発的に同様の事件が起きていた。イスラム教の金曜礼拝後、組織的に行われたようだ。以降、暴動は一気に燃えさかる。調査委によると、暴動に伴う避難民(約14万人)の大半はロヒンギャ族だが、計192人の死者のうち、ラカイン族は58人を占める。
一連の暴動で国連のキンタナ特別報告者(アルゼンチン出身)は、ロヒンギャ族に対する「組織化された民族主義的な仏教徒群衆」を非難。「残虐行為への軍や警察の関与」も糾弾する。確かに、暴動調査委の報告も触れている通り「治安当局がラカイン族に加勢した」点は否めない。
だがキンタナ報告は、第三者としてどう読んでも一方的に過ぎる。州都シットウェのラカイン族住民組織「長老会」は、現地視察をしたキンタナ氏に2度にわたり抗議の書簡を手渡し「私たちには人権はないのですか?」と訴えてきた。
客観性と公平さを欠いた「過度なロヒンギャ擁護」は、むしろラカイン族の反発と憎悪を一層駆り立て、その矛先をロヒンギャ族に向けてきたかもしれない。ある部分、闇のあるじに加担してきたのではないか。【シットウェ春日孝之、写真も】=つづく
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