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闇の正体:ミャンマー宗教暴動/9 「テロ組織」巡り情報戦(2013年11月4日掲載)
2015年05月29日

ヤンゴン管区庁舎の執務室でインタビューに答えるゾーアエマウン氏=春日孝之撮影

 「良心の囚人」か「テロリスト」か−−。一人の服役囚を巡り国連とミャンマー政府が攻防を続けている。 

 西部ラカイン州の暴動で、州当局から暴動扇動などの罪で起訴された一人が、国連の地元スタッフだった。ベンガル系イスラム教徒(ロヒンギャ族)で、宗教指導者でもある。

 昨年6月8日。バングラデシュに隣接するロヒンギャ族が多数派の国境郡区で、仏教徒ラカイン族の村々を同時多発的に襲撃する事件があり、暴動が一気に拡大した。この「組織的犯行を首謀した一人」だという。

 国連人権理事会のミャンマー問題特別報告者キンタナ氏は、禁錮7年の判決を受けたこのスタッフと刑務所で面会。「良心の囚人だと確信する」として「即時釈放」を求めているのだ。

 州検察庁トップのフラテイン検事正(56)は「彼は(バングラに拠点がある)イスラム組織の設立者の一人。その行動はモニターしていた」と説明する。事件前後のバングラ側との交信記録が残る携帯電話とトランシーバーを押収したという。

 ラカイン族の間で「暴動の背後組織」として話題になるのがロヒンギャ連帯機構(RSO)だ。日本の公安調査庁の国際テロリズム要覧には、1990年代から軍事活動を活発化、国境地域で爆弾テロや国軍への襲撃を頻発させた、とある。

 ロヒンギャ族の指導者は口をそろえて「今は政治組織に衣替えした」と強調する。だが、ヤンゴン管区(州に相当)ラカイン民族問題担当相のゾーアエマウン氏(53)は執務室の大地図を示し、今の軍事拠点だという3カ所に丸印を付けた。

 「アフガニスタンに潜伏していた(国際テロ組織)アルカイダのビンラディンが(2002年に)米英軍の攻撃でアフガンを脱出しました。その際、RSOは『隠れ家の提供』を申し出ていたんです」

 「なぜそんな情報を?」と聞くと「私の妻の親族がバングラ側の国境地域にイスラム教徒として暮らしています。本当は仏教徒ですが」と言った。ラカイン州では逆にRSOのメンバーが仏教徒を装い情報収集しているとのうわさがある。ゾーアエマウン氏はラカイン族の民族主義政党幹部でもある。彼の発言の真偽は別にし、ロヒンギャ族急進派に対し、情報戦でもしのぎを削っていることは想像できる。

 バングラデシュの首都ダッカの外交筋は、バングラの国境地域を含む南東部は「今もイスラム過激派の温床だ」と指摘する。アフガンを武装勢力タリバンが支配していた当時、双方に潜伏する過激派が行き来し、軍事作戦で連携していたことは周知の事実となっている。

 現地では「ラカイン州の暴動はバングラのロヒンギャ難民キャンプに潜む組織が計画し、敢行した」との臆測も流れる。民主化勢力「88年世代グループ」のコージミー氏(44)は言う。「イスラム過激派はジハード(聖戦)を呼びかけるホットスポット(紛争地)をいつも探しています。ラカインがそうならなければいいのですが……」【シットウェ春日孝之、写真も】=つづく

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