先生の本分は、子どもと向き合うことだ。

 その時間が失われている現実は変えなければならない。

 公立小中学校の教職員が負担を感じている仕事について、文部科学省が初めて調べた。日本の教員が国際調査で最も忙しかったことを受けてだ。

 教員の最も多くの割合が負担を訴えた仕事は、「国や教育委員会からの調査への対応」だった。小中とも9割近い。

 調査の負担感が調査で明らかになったのは皮肉だ。文科省によると、教委への回答が、いじめの月例報告など年間500件に上る学校もあるという。

 「保護者や地域からの要望や苦情への対応」も、小中でそれぞれ7割を超える。

 結果を受けて、文科省は改善のガイドラインをまとめた。

 会計や成績処理をデジタルで行い、教員と事務職員の分業を進め、苦情処理に弁護士の力を借りる――などだ。もちろん文科省の調査も見直すという。

 学校や教委、国はできることから進めてほしい。

 だが、それだけで問題は解決しない。

 国際調査で日本の教員の時間が他国より目立って長かったのが部活動だった。

 ところが今回の調査では、中学校の教員で部活動に負担感を抱いていたのは半数を下回る低さだった。生徒に必要だと考える教員が多かったからだろう。

 教員が何を担うか、何が事務職員やカウンセラーらと分業すべきかを切り分けることが必要だ。国は「チーム学校」の構想を進める中で検討してほしい。

 教員の数を全体としてどうするかの議論も欠かせない。

 財務省は財政難と少子化のなか、教員数をもっと減らすべきだとする。文科省は逆に貧困や発達障害などに対応するために減員幅を抑えたい考えだ。

 文科省はさらにデータを集め、教員のゆとりを確保する適正規模を詰めてほしい。

 根本的に考え直す必要があるのは、学校や教員の役割だ。

 子どもに学力をつけ、生活の指導をし、放課後の居場所も提供し、地域の防災の拠点にもなる……。学校の守備範囲は膨らむ一方だ。全部お任せではパンクしてしまう。

 どこまでを家庭が責任を持ち、どこからを学校が担い、何を住民で支えるかは、地域ごとに事情が異なるだろう。

 学校ごとに教員、親、地域で毎年、話し合ってはどうか。

 教員の忙しさは、子どもや保護者の問題でもある。多角的な検討を進めたい。