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【社説】

ドイツ戦犯 追及に終わりはない

 第二次大戦中、アウシュビッツ収容所の虐殺に関与したとして九十四歳の元ナチス親衛隊員に有罪判決が言い渡された。戦後七十年の今も戦争犯罪の追及を続けるのは過去を見つめることでもある。

 裁かれたのは、アウシュビッツに到着したユダヤ人らが所持していた現金や貴金属を管理する会計係だったオスカー・グレーニング被告。一九四四年、ハンガリーから移送されたユダヤ人約三十万人をガス室で殺害した殺人ほう助罪に当たるとして、ドイツ北部リューネブルク地裁は七月、禁錮四年の判決を言い渡した。

 弁護側は無罪を主張したが、被告はアウシュビッツでユダヤ人虐殺が行われていたことを承知し、毒ガスとして用いられたチクロンBの注文や、移送者の誘導などをしていたことを認めていた。

 ドイツでは戦後まず、東京裁判のモデルとなった連合国設置の国際軍事法廷ニュルンベルク裁判によって戦争犯罪が裁かれた。日本と違うのは、その後も自国の司法当局によって戦争犯罪を訴追し、裁き続けたことだ。一九七九年にはナチスによる虐殺を念頭に計画的な殺害に対して時効を撤廃した。検察庁の機関、ナチス犯罪追及センターが中心となり、これまでに約十一万七千件の捜査を行い、約七千五百件を立件した。

 グレーニング被告に対する捜査には紆余(うよ)曲折もあった。被告はすでに七七年に取り調べを受けていたが、捜査は八五年に中断されたままになっていた。具体的な証拠がなく、証人もいなかったためだ。四年前、独南部ミュンヘン地裁が、直接的な関与がなかった元収容所看守に、殺人ほう助罪で有罪判決を言い渡した判例を踏まえ、検察はグレーニング被告の起訴に踏み切り、今年四月に裁判が始まった。

 戦後七十年となり、戦争当時の元収容者、被告らは高齢化しているが、ナチスの犯罪の捜査はなお続けられ、七月にもアウシュビッツ収容所の元親衛隊看守(92)が殺人ほう助罪で起訴された。

 ナチスの犯罪に対する厳しい追及は、ホロコースト(ユダヤ人大量虐殺)など自国の非人道的行為を反省し、繰り返すまいとする戦後ドイツでの「過去の克服」の一環だ。戦後補償や、「過去に目を閉ざす者は現在にも盲目となる」と述べた故ワイツゼッカー元大統領ら政治家の姿勢とともに、ドイツの国際的信頼を高める大きな要因となっていることにも注目したい。

 

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