小型機墜落:滑走路160m不足 マニュアル明示

毎日新聞 2015年07月31日 09時45分

 東京都調布市の住宅街に小型飛行機が墜落し8人が死傷した事故で、この小型機が離陸可能な最大重量で離陸する場合、当時の気象条件では約960メートルの滑走距離が必要とされていることが分かった。メーカーが出している操縦マニュアルで明示されていた。小型機は上限に近い重量で飛行したとみられるが、調布飛行場の滑走路は全長約800メートルしかなかった。同飛行場での離陸が極めて危険だったことがうかがえる。【内橋寿明】

 小型機は米パイパー社製の単発プロペラ機「PA−46−350P型(マリブ・ミラージュ)」。同社が同型機の操縦者や所有者向けに発行している操縦マニュアルによると、離陸可能な最大重量は機体を含め1950キロ。標準装備の機体は1245キロであることから、搭載が可能な人や荷物、燃料の総量は計算上、705キロとなる。

 一方、マニュアルによると、最大重量に達している同型機が適切な速度で滑走した場合、気象条件が「無風」で「気温34度」なら、安全な飛行のために約960メートルの滑走が必要とされている。調布飛行場の滑走路の全長は約800メートルで約160メートル短い。事故当時の飛行場周辺はほぼ無風で、気温は34度だった。

 マニュアルは、機体性能や操作の方法などを詳細に記載しており、米連邦航空局(FAA)が承認している。国内での同型機の飛行もこのマニュアルに基づいて認められている。

 マニュアルなどによると、満タンにした時の同型機の燃料は約360キロで、約6時間20分の飛行が可能とされている。小型機を管理していた日本エアロテックによると、小型機は事故4日前に約40分間飛行したが、この飛行前に燃料を満タンにしており、大部分は残っていたとみられる。小型機の定員は6人で、事故時は5人の成人男性が搭乗していた。こうしたことから、事故当時はほぼ最大重量に近い状態だったと推定される。

 元日本航空機長で航空評論家の小林宏之さんによると、操縦マニュアルで必要だと指示されている滑走距離は、実際に必要な滑走距離より15%程度長いのが通常という。それを当てはめた場合でも最大重量で離陸するには835メートルが必要で、調布飛行場の滑走路では足りないことになる。小林さんは「事故は重量が一因になったとみられる。離陸前に重量を計算したのか疑問だ。調布飛行場の短い滑走路や当時の気象条件を考慮して、重量を減らすべきだった」と指摘している。

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