/サントリーのトートバッグのデザインの元ネタが割れてしまった以上、著作の独立性を主張するのはもはや無理。これ以上、無理を重ねると、損害額が拡大し、偽ブランド品のように廃棄処分しなければならなくなるゴミが増えるばかり。そして、最後には、だれかが責任を取って、クビを吊らなければならなくなってしまう。/
ただし、この依拠性は、間接事実からの推認でも十分とされている。すなわち、①知りえた可能性、②類似性以上の酷似性、③オリジナルの周知性、の3点が証明できれば、依拠した、ということになる。逆に、弁護側は、①絶対に知りえなかった、②それほど似ていない、③それほど有名じゃない、と抗弁することで、独立創作としての別個の著作権の存在を証明する。
当初、この線でいける、勝てる、弱小国ベルギーの田舎町の工業デザイナー上がりなんぞ、仕切役で世界を股に掛ける日本の広告代理店の力と、発注元で国際的一大イベントであるオリンピックの威光、そして、泣く子も黙る内閣官房知的財産戦略推進事務局とノートリアスな経産省商務情報政策局の兄の威信に懸けて、元総理のラグビー仲間よろしくタッグを組んで捻り潰してやる、とでも考えたのだろうが、サントリーのトートバッグの一件で、このデザイナーがpinterest、その他、ネットのかなり奥深いところから巧妙に素材を拾ってきていることが完全に明らかになってしまった。これまた、①知りえた可能性、というだけでなく、実際にネットで知った事実性がかなり高い、ということを自分で立証してしまったようなもの。おまけに、②酷似どころかまんまコピペの常習犯、となると、当該エンブレムに関してのみ、似ていない、関係が無い、などと主張する方がもはや難しい。こんなのひとつを守るために、どこぞの外国のチンケなゆうえんち並みのいいわけで、日本の輸出産業やコンテンツ産業の信用全体まで危険にさらす、などというのは、あまりバカげている。なにより、あまりにみっともない。
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2015.07.06
2011.04.03
大阪芸術大学 芸術学部 芸術計画学科 哲学教授
美術博士(東京藝大)、文学修士(東大)。テレビ朝日ブレーン として『朝まで生テレビ!』を立ち上げ、グーテンベルク大学客員教授などを経て現職。