山の膨張「収まる方向」 箱根、沈静化を示唆 噴火予知連藤井会長
- 社会|神奈川新聞|
- 公開:2015/08/11 03:00 更新:2015/08/11 03:00
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箱根山の状況について説明する藤井会長=横浜市中区
一般社団法人・神奈川政経懇話会(上野孝理事長)は10日、8月の定例講演会を横浜市中区山下町のホテルモントレ横浜で開いた。東大名誉教授で火山噴火予知連絡会会長の藤井敏嗣氏が「日本の火山活動の現状と今後」をテーマに講演した。
藤井氏は「世界の陸地面積の0・25%の日本には、世界の活火山数の7%に当たる110の活火山が分布している。その意味では火山大国といえる」と解説。「マグマ噴火の時間と場所の短期的予測は十分な観測を行っていれば不可能ではないが、中長期予測は確立していない。噴火予知は完成した技術ではない。日本は地震・火山災害に対してきちんとした備えをとるべきだ」と話した。
講演要旨
一、昨年9月の御嶽山の噴火は、直前の前兆が現れたのは11分前で、田の原という場所の地震計で微動が始まった。7分前になると山の傾きを示す傾斜計が動き始めた。この二つから噴火警報の準備をしている時に噴火した。一、御嶽山では噴火とほぼ同時にピークになり、避難できなかった。警戒レベルも1(平常)のままで、静穏と受け止められた。「平常」とは、活火山は火口から何かを噴き出すことが十分に考えられるという意味だが、一般の理解につながっていなかった。
一、箱根・大涌谷は6月30日に噴火と認定された。地震は大涌谷に集中していたのではなく、全域で起きていた。地下のマグマの圧力が増すと山が膨らみ、2点間の距離が延びる。仙石原と裾野で観測しているが延びは進んでいない。もう少し様子を見る必要はあるが、このままでいけば静かになる確率は高い。
一、富士山は現在、何の活動もない。これまでの噴火は8割が小規模。300年前の宝永噴火では川崎で8~16センチ、横浜で16~20センチの火山灰が降り積もった。いま噴火したら道路、鉄道、停電、航空路など流通経済の破綻、食糧不足になる。宝永級噴火なら被害は2兆5千億円と出ているが、もっと被害が出るはずだ。
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