一時しのぎで終わっては意味がない。沖縄の声に耳を傾け、基地問題を抜本的に見直すべきだ。

 政府は、沖縄県の米軍普天間飛行場の辺野古への移設について、作業を1カ月間中断すると発表した。県と集中的に協議する。

 辺野古移設反対を掲げる沖縄県の翁長雄志(おながたけし)知事が、埋め立て承認の取り消しを示唆したことを受け、対立の泥沼化を避けた形だ。

 安倍晋三首相はきょう、翁長知事と東京都内で会談し、移設への理解をあらためて求めるという。

 翁長知事の就任以来、8カ月続いた国と県のにらみ合いに、ひとまず休止符が打たれた。

 ただ1カ月という期間設定の根拠は曖昧で、本格協議への姿勢は見えない。

 気になるのは政府側に、安全保障関連法案の国会審議への影響を避けるため、決定的な衝突を先送りする意図がのぞくことだ。

 辺野古への移設に反対する沖縄県の民意は明確だ。政府は目先の火消しではなく、米側との本質的な交渉に取り組まねばならない。

 首相はきのうの記者会見で「普天間の固定化は絶対に避けなければならない」と述べた。辺野古移設の方針を変える気配はない。

 一方の翁長氏も、昨年の名護市長選や自らの知事選、衆院選で示された民意を背景に「辺野古移設は不可能だ」と重ねて主張する。

 辺野古移設が是か非かという二者択一の論議だけでは、接点が見いだせるとは思えない。

 政府は沖縄の負担と基地集中の現実をあらためて認識すべきだ。

 そして海兵隊基地の立地の必然性などについて、米側も交えた根本論議に着手するべきだ。

 そのためには1カ月という期間は、あまりにも不十分だ。

 たとえ困難でも、国と県、そして米側が折り合える策を見いださなければ将来に禍根を残す。

 今回の協議を、その好機として生かさなければならない。

 首相と翁長氏の会談に続き、来週には菅義偉官房長官が沖縄入りする予定だ。政府首脳として、沖縄の民意に応える責任がある。

 岸田文雄外相はきのうマレーシアでケリー米国務長官と会談し、辺野古の作業中断を説明した。

 ただ米国防総省は「(辺野古の)キャンプシュワブが唯一の解決策だ」と強硬姿勢を示している。

 米国との間では、米国家安全保障局(NSA)が日本の省庁を盗聴していた疑惑も浮上する。政府はいまこそ、対米追随にとどまらない外交姿勢を見せてほしい。