川内原発再稼働:飯舘電力社長「福島の今知ってるのに…」
毎日新聞 2015年08月11日 10時59分(最終更新 08月11日 15時13分)
◇再生エネ普及に取り組む人たちからも疑問の声
東京電力福島第1原発事故を受け、原発に頼らない社会を目指して太陽光発電など再生可能エネルギー普及に取り組む人たちからも川内原発の再稼働に疑問の声が上がった。
「福島で何が起きているか誰もが知っているはず。それでも原発を再稼働させるのか。経済優先の現状を福島から変えていきたい」。全村避難が続く福島県飯舘村で昨年9月、村民の出資で設立した「飯舘電力」社長の小林稔さん(63)はこう決意を語る。
村の丘陵地に太陽光パネル約200枚が並ぶ。帰村がかなった時に村民の暮らしの支えになることを目指す飯舘電力の太陽光発電所だ。今年2月に完成した。出力49.5キロワット。20年にわたり1キロワット時当たり32円で東北電力に売電し、年約160万円の利益を見込む。
小林さんは震災前、村の牧場で和牛約30頭を育て、11ヘクタールの水田で米作もしていた。震災直後、宮城県蔵王町の知人の牧場に牛を避難させた。今も避難先の福島県喜多方市から通って世話をする。元の牛舎は昨年、雪の重みでつぶれた。
喜多方市で酒米作りに携わったことが縁で、震災を機に再生エネルギーの普及を目指す「会津電力」を起こした酒造会社社長、佐藤弥右衛門さん(64)と出会い、自らも電力会社を設立することを決意した。「原発事故は飯舘村民から日常を奪った。もう原発はいらない」。佐藤さんからアドバイスを受け、村民や地元企業などから1000万円を超える出資金を集めた。
川内原発再稼働について小林さんは「地元で暮らす人たちが判断したこと。簡単に批判できない」と話す。原発関連の企業で多くの人が働き、生活してきた事故前の福島の姿を重ねるからだ。「だが、福島の現実を見なかったことにして再稼働したのであれば悲し過ぎる」と肩を落とす。「すぐにとはいかなくても再生エネルギーで村を復興させる。その姿を全国の人に見てもらい、原発が本当に必要なのか考えてもらうしかない」【喜浦遊】
◇飯田哲也さん「ご当地エネルギー」全国に広まる
NPO法人環境エネルギー政策研究所(東京都)などによると、大規模な設備が必要な水力発電を除く再生可能エネルギーの割合は、2011年度が1.4%だったのに対し14年度は4.4%で、福島原発事故後に大きく伸びた。研究所の飯田哲也所長は「事故を機に安全でクリーンなエネルギーへの関心が高まった。地域の電力を地域で生み出す『ご当地エネルギー』の取り組みも全国に広まった」と話す。
国は今年7月、15年後の総発電量に占める電源ごとの割合(電源構成)について、原発を20〜22%とする方針を決定した。新設・増設や運転期間(原則40年)延長をしなければ達成できない数字とされる。一方、再生可能エネルギーの割合は現在の2倍の22〜24%としている。飯田所長は「再生エネの割合はもっと伸ばせるはず。原発ありきの方針がブレーキをかけている」と指摘する。【喜浦遊】