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 塩崎恭久・厚生労働相は9日、長崎原爆で爆心地から12キロ圏内にいながら、法律で定めた被爆地域の外のために被爆者と認められていない「被爆体験者」について、医療費を支給する制度の対象疾患に認知症を追加する方針を明らかにした。長崎市内で被爆者5団体と面会した際に示した。

 面会では、被爆者団体が被爆地域(爆心地からの半径が南北約12キロ、東西約7キロ)の拡大を求めたが、塩崎厚労相は「健康影響で問題となる量の放射線被曝(ひばく)があったとの科学的知見はない」として、「拡大は困難」と答えた。

 被爆体験者は、被爆者と同等の支援を受けられない。ただ、長崎県内に現在も住み、被爆体験による心的外傷後ストレス障害(PTSD)などの精神疾患がある人に限り、精神疾患とそれに伴う合併症の医療費が支給されている。

 対象の合併症はこれまで狭心症や慢性胃炎などで、新たに認知症を加える。被爆体験者の高齢化や、PTSDと認知症との関連を指摘する研究を踏まえたという。自民党の議員連盟が7月、認知症の追加を厚労省に要望していた。

 厚労省によると、被爆体験者として医療費の支援を受けているのは、今年3月末時点で6920人。被爆者健康手帳を交付された被爆者は全国に約18万4千人いて、医療費が原則無料になり、一定の病気になると月約3万4千円の手当が出るなどの支援がある。被爆体験者を被爆者と認めるよう求める裁判が続いている。(福宮智代)