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 長崎に原爆が投下されてから70年を迎えた9日、犠牲者を追悼し、核兵器廃絶の願いを新たにする平和祈念式典が長崎市で開かれた。田上(たうえ)富久市長は平和宣言で、参院で審議中の安全保障関連法案について「憲法の平和の理念が揺らいでいるのではないかという不安と懸念が広がっている」と指摘。慎重な審議をするよう政府と国会に求めた。

 市によると、式典には約6800人が参列。各国大使らも過去最多の75カ国から出席した。米国からはゴットメラー国務次官やケネディ駐日大使が参列した。

 田上市長は平和宣言で、戦争の記憶が「急速に失われつつある」と危機感を示し、被爆体験だけでなく各地の空襲や沖縄戦、アジアでの戦争にも言及。「人々を苦しめた悲惨な戦争の記憶を忘れてはならない」と指摘した。

 また、次世代に語り継ぐ必要性を強調し、若い世代に「平和への思いをしっかり受け止めて」と呼びかけた。政府には、核抑止力に頼らない安全保障の検討を求め、「北東アジア非核兵器地帯の設立によって、それは可能だ。“核の傘”から“非核の傘”への転換について、ぜひ検討してください」とした。

 同市の平和宣言は、被爆者や学識経験者ら15人で構成する起草委員会で議論し、最終的には委員長の田上市長が決める。当初の市の案には安保法案への言及がなかったが、「被爆地の市民としての強い懸念が伝わる表現にしてほしい」などの意見が委員から上がって盛り込まれた。

 全国の被爆者健康手帳の所持者は18万3519人(2015年3月末現在)で、平均年齢は80歳を超えている。市は手帳の有無にかかわらず、遺族の申し出や調査により「原爆死没者」として名簿に記載しており、7月31日までの1年間に亡くなった被爆者は3373人。死没者名簿に記された人は16万8767人になった。(力丸祥子)