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ベンチャー役員三界に家なし

2015-08-10

金貸し父さんの友達論

ごきげんよう

今年は沖縄に行けなかったので東京で花火や祭りを楽しむ夏を迎えています。
僕は大阪南部、エリア的には泉州というところで育ちましたが、泉州だんじりという山車を曳きまわすお祭りが盛んなところでお祭りの熱気は故郷を思い出します。
嫌いではありません。

お祭りと言えば思い出すことがあります。そうやはりあのナニワのノンバンクのおっちゃんだった父のことです。
今週はやたらと死んだ父のことを思い出しますが、お盆だけに墓参りにも来ようせず東京で消耗している僕の枕元に立って嫌味の一つも言いに来ているのかもしれません。

私には一人の父が居た。一人は金貸し父さん。以上である。

小学校低学年くらいのことです。
共働きだった我が家では、両親が不在なことも多かったのですが、僕や弟は父の方針だったのか家庭内のいろいろな仕事を分担したりしながらお小遣いをもらっていました。まぁチップみたいな感じですね。
結構細かく仕事は与えられており、それこそ父の靴磨きとか、ストーブの灯油を入れるとか、洗車をするとかそういうのです。

ただお祭りのときは「祭りの小遣い」として少し多めのお小遣いをもらった覚えがあります。

お祭りでは屋台や夜店が沢山あるので子供同士でお小遣いを握りしめて遊びに行ったりするわけですが、そこまでは昭和の風景という奴です。

しかし思わぬ僕の行動で事件が起きます。
近所のしんちゃんという僕の一つ下の友達が居たのですが、僕は先輩風を吹かせたいのか、いい恰好をしたかったのか親から持たされていたお金を気前よくお祭りの時にしんちゃんにあげてしまいます。
その後、しんちゃんはそのお金で夜店でくじ引きをしたり買い食いをして帰った後、お小遣いも渡してないのにおもちゃを持って居るしんちゃんを不審に思ったしんちゃんの親御さんが問いただしたのです。
しんちゃんは僕にお金をもらったと言い、そして親御さんから母にそして、母から父に連絡が入りました。

今でも鮮明に覚えてますが、父は烈火のごとく怒り僕をボッコボッコにぶん殴りました。
(ただ、この辺は小学校低学年の記憶なので僕の中でデフォルメされている可能性は高いと思います。とにかく派手にぶん殴られた記憶があります。)
その後、僕は父に連れられてしんちゃんの家に行きました。
そこで父は言いました。

「この子はアホです。ほんま申し訳ない。よう怒っといたんで『友達を続けてやってください』。」

頭を下げながら、僕は幼心にこの『友達を続けてやってください』という父のセリフが妙に引っかかっていました。
小さかった僕は
「なぜお金をもらったしんちゃんが僕と友達を止めないといけないのか?」
「お金を「あげた」僕が頭を下げて友達を続けてくれと言うのか?」
よくわかりませんでした。
でも僕にとって父は絶対の存在だったので父に聞くこともなく心の中にひっかかりを持ったまま時間は経ちました。

そして7〜8年の時が進みます。

高校生になった僕はお祭りが近くなった休日のある日、父と台所で鉢合わせしました。
高校生ぐらいになると、男の子は父親とは「あー」「おぅ」とか「うん」くらいしか会話しません。
まして、父が怖く話を適当に聞くということなど許されない僕は、できるだけ逃げ回っていましたからその日は母が仕事で居らず父と家で二人きりの運の悪い日でした。

父は自分で一切料理らしい料理をしない人でしたが、唯一作るのは鍋で作るゆで卵を入れたインスタントラーメンでした。
彼はその自分で作ったラーメンを食べ、僕は焼いた食パンをかじりながら、テーブルで向かい合いながら無言の時が過ぎました。
なんか気まずくなってきたのでふと幼かったあの日の出来事の疑問をぶつけてみることにしました。

僕「なぁなぁ。昔祭りの時に、しんちゃんに俺がお金あげたら後でそれがバレて親父にボコボコにされたことあったやろ?」

父「知らんな。」

僕「あったやろ!忘れたんかよ!しんちゃんの家に謝りに行ったとき親父は『友達を続けてやってくれ』ってお願いしてたけど、あれってなんでそう言ったの?もう俺と会わせないでくれとか親御さんから言われたの?」

父「覚えてへんな」

僕「まじかよ。。。。」

父「おい。おまえ、『根保証』って知ってるか?」

僕「????????」

父「ええ大人が人生を破滅させる原因に他人の連帯保証人になって他人のごっつい借金を金を肩代わりせなあかんというのがある。なんでやと思う?」

僕「他人の連帯保証人になるから」

父「正解や。連帯保証人にならんかったらええだけやと思うやろ。そやけど、実際には頭のええ人も、悪い人も、気のええ人も、性根が腐っとる奴も意外と皆はまってしまうんや。」

僕「なんでなん?断ったらええやん。」

父「例えば、お前がずーーと世話になって、累計したら50万円くらい飯を食わせてもらったり、誕生日に物をもらったりよくしてくれてる友達や先輩がおるとするわな。その友達が事業の都合でどうしても来月までに20万円のお金が必要でお金を貸してほしいと言ってきたとする。そやけどお前には今そのお金がない。友達はええ人や。借金するけど連帯保証する人が必要でお前には迷惑かけんからハンコだけ押してくれへんか?と言うて来たらどうする?断ったら恩知らずと言われるかもしれんし、そもそもそれ以上の金を奢ってもらっとるのにや。」

僕「友達やったらしんどい時は助けたいかな。20万円やったら、人生破滅するほどでもないし、ちょっと考える。」

父「そう。そうやって皆破滅するんや。おまえがよう中身も見んと判をついた契約書は20万円初回借入だけでなく2000万円の根保証が付いた契約書かもしれん。根保証言うのはその人がその額までいつどれだけ借入してももしもの時はお前が返済しますっちゅう契約のことや。先輩はウソはついてない。最初に借りる金は20万かもしれんからな。そやけどお前はその後2000万の借金を先輩にされて逃げられたらそれを払うことになる。」

僕「・・・・・・・・・・」

父「連帯保証人に安易になったらあかん言うのは、誰でも知っとるわ。それでも破滅する奴が後を絶たんのはそれを断れないからや。
ええかよう覚えとけ。
そういう時は、持っとる現金をその場で友達に渡して頭を下げてこう言うんや『これまでの御恩を返せず申し訳ありませんが判はつけません。そやけど、このお金をよかったら使ってください。返すのもいつでも結構です。』」

僕「・・・・・・・・・・」

父「本当の友達やったら二度とそいつはお前のところに来れへんやろう。相手の方がお前を避けるようになる。よう覚えとけ。手元にはいつもまとまった額の現金はないとアカン。それはお前の金とちゃう。ここ一番にはめ込まれへんようにするための命綱や。」

僕「でも、昔、お金を友達にやるなってボコボコに俺を殴ったやん。」

父「それはその子と『友達を続けたい』とお前が言うたからちゃうか?友達になんで金をやったらあかんかまだ分かってないようやから教えたる。金をくれてやる言うのは一番簡単な友達の止め方やからや。」

僕は、結局幼かった僕をぶん殴ったことを多分覚えてない上にまた半分怒られながら金融TIPSを教えられる羽目になったことを心底後悔しながら、やっぱり話しかけるんじゃなかったとうんざりしていた。
それでも最後気になった質問を一つだけした。

「なぁ。お金を渡した友達が、ちゃんと返しにやってきたらまた友達に戻れるかな?」

父のラーメンはそろそろ麺がなくなってきており、皮をむくのに失敗したらしいイビツな形のゆで卵が残るのみになっていた。

父はそのゆで卵に割り箸を突き刺して持ち上げこういった。

「この玉子。今から冷やしたら生卵に戻ると思うか?そういうこっちゃ。」


さて、今年は墓参りに行った方がよさそうですね。

ちょっとお休みを頂く為にも目の前の仕事を終わらせないと話になりませんね。
まぁ今日も持ち場でがんばりますよ。

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