韓国に住む被爆者らが海外に住んでいるために被爆者援護法に基づく医療費支給を受けられないのは違法だとして、申請を却下した大阪府の処分取り消しを求めた訴訟の上告審で、最高裁第3小法廷(岡部喜代子裁判長)は10日、判決を9月8日に言い渡すと決めた。
二審の結論を見直す際に必要な弁論を開いておらず、在外被爆者にも医療費の全額支給を認めた一、二審の判断が維持される見通し。
同様の訴訟は長崎地裁と広島地裁にも起こされ、両地裁はいずれも原告の訴えを退けた。両訴訟の原告はいずれも控訴しており、最高裁の判断は控訴審に影響するほか、国や自治体は被爆者援護法の運用の見直しを迫られそうだ。
原告は、広島市で胎内被爆した韓国人男性と死亡した2人の遺族の計3人。韓国で肝臓がんや心臓病などの治療を受け、自己負担した医療費の支給を大阪府に申請したが却下されたため、取り消しを求めて提訴した。
一審・大阪地裁は2013年の判決で「被爆者援護法には国家補償の性格があり、医療費支給もその一環なので在外被爆者に適用されないと限定的に解釈すべきではない」として、大阪府の処分を取り消した。二審・大阪高裁も一審判断を支持。府側が上告していた。
厚生労働省によると、被爆者健康手帳を持つ在外被爆者は3月末時点で約4280人。被爆者援護法は国が医療費を全額負担すると規定しているが、在外被爆者が海外の医療機関で受診した場合は適用せず、別途、上限付きの助成事業で対応している。
被爆者、韓国