. 今回記事では、自転車通行の大きなテーマとなっている「自転車の車道走行」について、それが真に「道路交通法に基づく原則」であるのか検証を行っていきます。
予め今回記事を要約しておくと、「日本の現在・今後の自転車政策と環境整備は、自転車の車道通行原則を謳うことは出来ない」ということ。
これを道路交通法の規定や整備事例を引用し、説明していきます。
まずは検証の前提となる、「自転車は車道走行が原則」に関する道路交通法の規定から見ていきます。
※今回の道路交通法からの引用は、分かり易さのため説明に関する箇所を抜粋し行います。省略箇所は根幹と関わらない部分ですが、気になる場合は道路交通法を直接参照ください。
しかし「法律」とは、その全ての条文、そして実際の日本の状況を踏まえ総合的に解釈する必要があるもの。一部の規定だけによる軽率な判断は避けなければなりません。
では、上記に関連する他の規定とは何か。それは「自転車道」と「歩道」です。
そしてこの自転車道が設置されている場合、普通自転車(=いわゆる一般的な自転車、今回記事では自転車=普通自転車として扱う)は、自転車道を通行する義務が生じます。
また道交法上では、自転車道も車道の一部ではあるのですが、今回記事では道交法の規定と乖離する場合を除き、構造分離の自転車道≠車道として説明します。
一方の歩道については、本来は言うまでもなく歩行者用の空間ですが、以下の場合は自転車も通行可能とされています。
①「普通自転車歩道通行可」の場合 ②子供・高齢者・障害者
③安全確保のためやむを得ない場合
上記3要件のどれかに合致すれば、自転車は歩道通行が可能。ただしこれはあくまで「通行することができる」であり、車道走行が原則であることは変わらない、このような主張が見られます。
次は、この歩道通行可の要件について更に整理します。
自転車が歩道を通行できる条件について、再度列記します。
①「普通自転車歩道通行可」の場合 ②子供・高齢者・障害者
③安全確保のためやむを得ない場合
このうち②子供・高齢者・障害者は今回のテーマでなく検証対象外。
車道は歩道より安全だと主張する行政・警察・自転車研究者自身が、何故か②は(危険な)車道を避け歩道を走るのも止むを得ないとしていることから、これらの車道走行回避については特に異論が生じません。
次は①、これは以下の標識が歩道上に設置され、自転車も歩道通行可だとされる場合です。
しかしこの「普通自転車歩道通行可」は、実はそれが設置されているかどうかは、独立した歩道通行可の要件にはならない。
なぜかというと、本標識が設置されていること自体、その箇所の車道が自転車にとって危険だと警察が認めているという前提があるため。
これは警察(厳密には「公安委員会」だが、今回は実態上差が無い警察で統一)による規制標識の設置基準。
この「対象道路」には車道が危険な場合等の明記はありませんが、「規制目的」には「安全な通行を確保する」ためとある。
つまりこの歩道通行可は、双方向通行化による利便性向上のためではなく、あくまで車道が危険だと警察が判断した場合に設置されるものです。(※P163の「並進可」では「交通の安全と円滑を図る」ためと利便性を明示している)
そして警察が危険だと判断するような場合なら、自転車利用者も基本的には危ないと感じる道路。この①歩道通行可が指定されている場合は、③の危険だと認められる場合に含有されます。
一方で逆に、①歩道通行可が指定されていない場合でも、③の危険だと認められる場合には歩道通行が可能。
これらをまとめると、自転車が歩道通行可かは、その車道が危険と認められるかどうかに一元的に集約されていることが分かります。
では、やむを得ず歩道通行をせざるを得ない程に車道が危険な場合とは、どのようなケースなのか。
多車線の幹線道路で、猛スピードの自動車が大量に通行していく道路であれば、車道と分離した「自転車道」が無ければ安全とは言えない。一方で自動車の少ない生活道路であれば、特に対策をしなくとも危険とは言えない。
危険かを判断する手段の一つに、その道路が「自転車走行空間の整備基準」を満たし、安全確保に必要な整備形態が実現しているかを判定する方法があります。
その整備形態選定基準として、現在事実上の全国標準になっているのが、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」です。
・国土交通省ホームページ:国土交通省の自転車施策(html)
・「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の地方説明会に関して(html)
・資料2:『安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン』について
P12(14/94)(pdf)
【参考: 「安全で快適な自転車利用環境ガイドライン」の関係箇所について】
・「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を補完する地方説明会資料
・ブログ主要記事まとめ
このガイドラインでは、上記説明資料の通り要約すれば、
・法定速度60km/hの道路では構造分離の「自転車道」が必要
・一定以上の自動車が通る法定50km/h・40km/h道路では「自転車レーン」が標準
・法定40km/h以下で自動車交通量も少なければ「車道混在」で可
としている。
これらの形態が整備されて、想定通り機能していれば、歩道通行可が必要なほど危険とは言えないと考えることが出来ます。
ただし、法定50km/h道路で視覚的分離の自転車レーンを標準とするこのガイドラインの規定は、世界で類を見ないトップクラスに「危険」なもの。
諸外国では自動車が1~2万台以上通行する50km/hの幹線道路では「自転車道」が必要だとしており、日本のガイドラインに則り法定50km/h路線に自転車レーンを着色したところで、本来自転車にとって安全とは言えない。
【参考:ガイドラインの欠陥】
・(1)自転車走路の整備形態選定基準
・(1-0)「自転車走行空間の整備形態」を選定する国外基準:
東京の幹線道路に自転車レーンを整備してはならない
・(1-1)自転車レーンの危険性を軽視する歪んだ研究
・(1-2)整備形態選定の根拠を隠蔽する国土交通省
この問題は置いておくとして、ここでは上記ガイドラインに則った整備が行われ、想定通り機能すれば、歩道通行が必要なほど危険ではないとして今回は先に進みます。
上記の形態が実現されず、或いは整備しても機能していない場合、自転車は危険な車道ではなく歩道通行が可能となる要件に該当することになる。
自転車の車道通行が原則通り実現するかは、整備形態の実現と機能の有無にかかってくるものです。
では近年の日本における、自転車の車道走行促進政策に基づき整備された各地の路線は、現状どうなっているか。状況の実態が問題となります。
現在の日本の自転車通行空間整備政策の主体となっているのは、ガイドラインで法定50km/h・40km/h道路の標準形態とされる、以下のような「自転車レーン」です。
車両である自転車は車道走行が原則の掛け声のもと、車道の左隅を青く着色し、自転車以外の通行を禁止する交通規制を行ったもの。平成20年3月に整備された上記事例等を契機に、現在の日本の自転車通行空間聖母の主流とされています。
しかし「安全で快適な」走行空間の建前とはかけ離れ、スペースが潰される事例が多発している。
路上駐停車による自転車レーンの封鎖。自転車レーンは従来「停車帯」として利用されていたスペースに着色しただけの物が殆どであり、このように潰されるのは整備前から容易に予想がつくものです。
自動車に潰された走路を回避するため、自転車は自動車の前に飛び出すケースも生じ、
従来歩道を走っていた高齢者のママチャリは、回避が出来ず立ち往生。
そしてこの平成20年の事例とまったく同じ問題を、平成27年の現在に至るまで、殆ど改善されないまま全国の行政が繰り返し続けている。
これらケースでは、駐停車台数が数台で済むことは少なく、大抵は複数台が路線上に散在している。その場合自転車は度々右からの回避を余儀なくされ、その都度自動車車道に飛び出すことを強いられる。
自転車の唯一の走行空間の封鎖、そして自転車の頻繁な進路変更の発生は、危険な状況だと十分に認められる。安全確保のためやむを得ず、歩道通行が可能になる要件を満たすものです。
※注意:一方でこれら路上駐停車の行為自体は、必ずしも強制排除が望ましいものではない。根本の問題は、自転車走行空間と駐停車スペースを同時実現しない道路整備の欠陥にあります。
・自転車の交通ルール(番外編1)「駐車」「停車」の定義と自転車レーン上の駐停車問題
次に「自転車レーン」整備で頻繁に見られる欠陥は、最も安全対策が必要なはずの交差点付近で、安易に自転車レーンを解除する事例が乱発されていること。
直線部では自転車レーンになっているものの、
交差点手前で自転車レーンが解除され、「自転車ナビライン」による車道混在に変化。それは何故かというと、
自動車交通の円滑化に必要な右折レーンを設けるため、自転車の安全対策に必要な自転車レーンを分断しているから。
こちらも単路部での自転車レーンが、
自動車車線の維持のため分断され、自転車と自動車の混在を余儀なくされる。
こちらは最初から交差点前後を車道混在にしている事例。これも結局は、
自動車交通の円滑化に必要な右折レーンを、自転車レーンより優先して確保しているため。
再度ガイドラインの基準に戻ると、これら路線では自転車レーンが必要だとしていながら、自動車交通の円滑化のため、自転車の安全確保に必要な整備形態を安易に分断する事例が乱発されている。
しかもこの整備形態の分断は、ガイドラインを作成した国土交通省と自転車研究者が率先して推奨しているという救いようの無い事態になっている。
自転車を車道に出すことを目的化させた国土交通省と学識経験者は、「当面困難な場合」という釈明を全国行政に認め、安全確保に本来必要な形態の整備には拘らない方針をガイドラインに上書き。
しかしこの暫定形態は、事故リスクを抱えながら現状車道走行を行う自転車への対策に過ぎない。
本来の安全確保が為されていない以上、車道混在の整備をいくら繰り返したところで、安全上やむを得ない場合に認められる歩道通行可の要件を崩せるものではありません。
上記の茅ヶ崎市内等の事例のように、行政が「自転車専用レーン」を整備したと謳う路線でも、実態は「専用」とは名ばかり、交差点の度にレーン分断と車道混在を余儀なくされる。
レーン分断箇所ではその危険性から歩道通行を認められ、加えて歩道と車道を行き来するのは国土交通省自身も危険であると認めている。つまりこの「車道混在」に行政が逃げた路線では、基本的に全線にわたって自転車の歩道通行が認められると言えます。
上記の自転車ナビラインによる車道混在では、自転車と自動車の走路が重複するため、両者が無関係に通行すれば交差点で交錯することになる。
その場合に殺傷されるのは当然自転車であり、混在は自動車が自転車に配慮しなければ成立しません。
にも関わらず実際の車道混在路線では、自転車の安全確保に配慮しない自動車の「安全運転義務違反」が乱発。
そして更に悪質なのは、警察がこの自動車の危険運転に対する取締りを放棄していること。
その最たる例は、国土交通省東京国道事務所と警視庁が国道246号で行った自転車ナビライン=車道混在。
本来は最低でも1.0m程度の側方間隔で追い抜かなければ、自転車に対する安全運転義務違反が課されるはずながら、本路線では離隔50cm程度での危険追抜きが常態化。そして警視庁の取り締まりも一切実施されない。
【参考】
・自転車を自動車が追抜く際の側方間隔
しかも警視庁の倫理観を疑うのは、上記は「バス専用レーン」の規制時間帯であり、本来普通自動車は通行できない筈でありながら、それすらも警視庁は黙認していること。
車道混在の最低限の実現に必要な、自転車に対する自動車の配慮さえ、警視庁がその促進を放棄している。
車道混在箇所における警察の対応は全国で大差なく、この状況を黙認する行政、自転車ナビライン整備主体の姿勢も同じ。
自転車にとっての安全確保が為されていない、この事例においても当然のように、自転車の歩道通行可の要件が適用されます。
日本の「車道走行」の実態の最後は、構造的分離の自転車道の整備が放棄されていること。
この国道6号は法定速度60km/hであり、本来構造分離の「自転車道」が必要になる路線。しかし車道削減による整備を避けたい行政が、構造分離不要論を唱える学識経験者を根拠づけに利用し、自転車レーンで済ませたという安全軽視の事例。
更には、かつて自転車道を整備しながら、隣接区間の整備が自転車レーンに改悪されたという事例さえ存在する。
平成23年に整備されたこの「国道19号桜通り自転車道」は幅3.0mと広く、日中の自転車の86%、通勤時に限れば95%もの自転車が自転車道を利用するという、国内の他事例に例を見ない圧倒的な整備効果を発揮。
自転車と歩行者を分離するという目的がほぼ達成された、国内では「好事例」と言えるものでした。
にも関わらず、自転車の右側通行は害悪、自動車が自転車に配慮すれば構造的分離は不要という自転車研究者の持論を国土交通省は全面的に受け入れ、隣区間で平成27年度に整備されたのが以下の劣化形態。
幅わずか1.5m、一方向通行限定の自転車レーン、
そして自転車の安全を大きく削る整備に劣化させながら、必要な安全対策を行うわけでもない。
車道左側走行を徹底させると口では繰り返しながら、自転車の安全確保に努める気など一切無い。
この事例でも、自転車は安全確保のために当然のごとく歩道通行が可能となります。
以上が自転車の車道走行促進を目指す、日本の自転車政策がもたらした一般的な状況です。
以上のように、現在の日本で行政が行う自転車走行空間の整備は、駐停車スペース未整備によるレーンの封鎖、車道混在の連発、自動車の危険運転黙認、自転車道整備の放棄により、その大半が自転車の安全確保が為されていない。
これら路線ではすべて、自転車が安全確保のためやむを得ず歩道通行可能な要件に該当する。
「自転車は車道通行が原則」を謳いながら、実態上その殆どで、歩道通行が安全上必要な手段として可能になっているということです。
改めて本記事のタイトルに戻ると、「自転車の車道走行は原則ではない」と言い切ることは出来ないかもしれない。
たとえ全てのケースで例外が適用されるとしても、あくまで例外を認める原則は車道通行であり、道路交通法の規定上の原則であることには変わりがない。
よって今回、最も適当な表現に変えるとすれば、以下のようになります。
自転車の安全確保のための道路整備を怠る行政、
自転車の安全確保のための交通規制を怠る警察、
「車道走行は安全」という嘘を繰り返す自転車研究者に、
「自転車は車道走行が原則」を謳う資格はないということ。
円滑な自動車交通の維持のため、行政に都合のいい主張で政策への介入実績を増やすため、安全・安心・快適な自転車利用環境実現を妨げるこの三者には、自転車に車道通行原則を強いる資格はない。
一方の現在の日本の自転車利用者に対しても、次のように提案します。
日本の自転車利用者は、
行政・警察・自転車研究者に唆されて安易に車道を走ることは、
自分の身を守るためにやめた方がいい。
この提案に対し、容易に想定される反論があります。「おまえは自転車の歩道通行を推奨し、歩行者を危険にさらし続けるのか」と。
本ブログを見て頂ければご理解いただけますが、従来の全国の行政が繰り返してきた「自転車歩行者道」の整備に対し、最も具体的な批判を行っているのは本ブログであるという自負があります。
【参考】
・ブログ主要記事まとめ
・「道路構造令自転車道」の欠陥構造と解決策(※自転車歩行者道を含む)
自転車は本来歩道を走るべきではないというのは当たり前、やむを得ない通行時の徐行必須も当たり前、歩道を中心とした整備が愚策であることも当たり前。
これを誰よりも理解している上で、今回の記事があります。日本の自転車利用者は、安全確保のため現在の車道を走るべきではないと。
なら日本の自転車は、どこを走ればいい?残念ながら日本に自転車が安全・安心・快適に走れる空間はほぼ存在せず、今後当面の自転車政策もその空間を創出しようとはしていない。
是が非でも自動車中心の道路交通を崩したくない行政と警察は、一方で歩行者保護の必要にも駆られ、自転車研究者を利用して車道が安全になる整備を行ったという嘘を繰り返し、自転車を車道に誘導しようとする。
自動車交通の確保と歩行者の要望への対処のため、自転車の安全確保を蔑にし問題の鎮静化を図ろうとしているということ。
この行政らの姿勢は、例えば前述の茅ヶ崎市の事例で露呈している。
整備者の国土交通省横浜国道事務所自身が、「自転車の大半が自転車レーンでなく、歩道を走行している」と認める状況。警察も「自転車レーン供用直後は自転車は皆自転車レーンを走行していたが、次第に歩道を走行するようになった」と認める。
この問題が、駐停車による走路封鎖、自転車レーン分断による車道混在など、整備前から全国各地の事例で分かり切っていた問題に拠るものだと認識せざる得なくなっている。
これに対し、整備主体の国道事務所でも取り締まりを行う神奈川県警でもないものの、市民の安全確保の責任がある茅ヶ崎市役所が採ったのが以下のような行動。
安全な自転車通行空間を確保したのに、歩道通行等の「危険な運転」を繰り返すわがままな自転車を歩道から排除するために、自転車レーンの「走りやすさを体感」させ利用促進を目指す。
・・・なぜタイトルの「自転車専用レーン」から、いきなり嘘をつくのか。自転車専用レーンが交差点の度に分断され、専用空間の消滅が連発されているからこそ、自転車は危険を感じ歩道通行を余儀なくされている。
歩道の普通自転車通行可が外れないのも、上記国道事務所が認めているように、自転車走行空間が確保できず車道が危険だから。
このケースで車道通行原則の例外が認められるのは、13歳未満の子供や70歳以上の高齢者だけではない。この路線では全自転車が、安全上やむを得ない場合として歩道通行が認められる。
この体験走行会の実施により、どのような成果が出たかは分からない。実施で露呈したのは、自転車の安全確保より円滑な自動車交通を優先し、通行の危険性を伝えず車道に誘導しようとする行政の姿勢。
日本の行政はいずれも、この姿勢と大差がありません。
・・・
最後に今回記事をまとめます。
本ブログは、行政による自動車交通優先自体を批判しているわけではありません。自動車交通の円滑化の最優先を、その地域の総意として採用するのは自由です。
ただしその場合、当地域は、歩行者優先と自転車優先を謳う資格は無い。自動車交通を妨げない範囲で歩行者・自転車を泳がすのに過ぎない。
自転車走行空間を路肩着色にとどめ、その着色幅すら狭めるような状況なら、自転車に車道走行原則を強要する資格も無い。
自らの身を切る安全確保から目を背ける行政に、車道走行原則を謳う資格はない。自転車利用者も安易に原則を信じ車道に出ることは避けた方がいい。
今回記事は以上です。
【参考】
・道路交通法の欠陥:「車両である自転車は車道走行が原則」
(1)自動車の通行方法との差異
(2)原則の設定経緯と妥当性
(3)自転車道の規定と総括
(※自転車の車道走行原則は、自転車・馬車・路面電車しか道路を通行しない大正時代制定の規定であることを中心に検証しています。)
・ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)
予め今回記事を要約しておくと、「日本の現在・今後の自転車政策と環境整備は、自転車の車道通行原則を謳うことは出来ない」ということ。
これを道路交通法の規定や整備事例を引用し、説明していきます。
1. 「自転車は車道走行が原則」に関する道路交通法の規定 |
まずは検証の前提となる、「自転車は車道走行が原則」に関する道路交通法の規定から見ていきます。
※今回の道路交通法からの引用は、分かり易さのため説明に関する箇所を抜粋し行います。省略箇所は根幹と関わらない部分ですが、気になる場合は道路交通法を直接参照ください。
道路交通法
第一章 総則
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
三 車道 車両の通行の用に供するため縁石線若しくはさくその他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。
八 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
十一 軽車両 自転車、荷車その他(後略)
十一の二 自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(中略)をいう。
第三章 車両及び路面電車の交通方法
第一節 通則
(通行区分)
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(中略)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。(後略)
上記の定義と交通方法の通り、自転車は軽車両であり、軽車両は車両であり、車両である自転車は車道を通行しなければならないとされる。これが「自転車は車道走行が原則」である根拠とされるものです。第一章 総則
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
三 車道 車両の通行の用に供するため縁石線若しくはさくその他これに類する工作物又は道路標示によつて区画された道路の部分をいう。
八 車両 自動車、原動機付自転車、軽車両及びトロリーバスをいう。
十一 軽車両 自転車、荷車その他(後略)
十一の二 自転車 ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(中略)をいう。
第三章 車両及び路面電車の交通方法
第一節 通則
(通行区分)
第十七条 車両は、歩道又は路側帯(中略)と車道の区別のある道路においては、車道を通行しなければならない。(後略)
しかし「法律」とは、その全ての条文、そして実際の日本の状況を踏まえ総合的に解釈する必要があるもの。一部の規定だけによる軽率な判断は避けなければなりません。
では、上記に関連する他の規定とは何か。それは「自転車道」と「歩道」です。
道路交通法
第一章 総則
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 歩道 歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された道路の部分をいう。
三の三 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
第十三節 自転車の交通方法の特例
(自転車道の通行区分)
第六十三条の三 (前略)普通自転車(中略)は、自転車道が設けられている道路においては、(中略)自転車道を通行しなければならない。
(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。(後略)
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるもの(後略、他に施行令で定める高齢者や障害者)であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
まずは「自転車道」、これは自動車の車道と構造的に分離された、自転車の専用スペースのことです。第一章 総則
(定義)
第二条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
二 歩道 歩行者の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された道路の部分をいう。
三の三 自転車道 自転車の通行の用に供するため縁石線又はさくその他これに類する工作物によつて区画された車道の部分をいう。
第十三節 自転車の交通方法の特例
(自転車道の通行区分)
第六十三条の三 (前略)普通自転車(中略)は、自転車道が設けられている道路においては、(中略)自転車道を通行しなければならない。
(普通自転車の歩道通行)
第六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。(後略)
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるもの(後略、他に施行令で定める高齢者や障害者)であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
そしてこの自転車道が設置されている場合、普通自転車(=いわゆる一般的な自転車、今回記事では自転車=普通自転車として扱う)は、自転車道を通行する義務が生じます。
また道交法上では、自転車道も車道の一部ではあるのですが、今回記事では道交法の規定と乖離する場合を除き、構造分離の自転車道≠車道として説明します。
一方の歩道については、本来は言うまでもなく歩行者用の空間ですが、以下の場合は自転車も通行可能とされています。
①「普通自転車歩道通行可」の場合 ②子供・高齢者・障害者
③安全確保のためやむを得ない場合
上記3要件のどれかに合致すれば、自転車は歩道通行が可能。ただしこれはあくまで「通行することができる」であり、車道走行が原則であることは変わらない、このような主張が見られます。
次は、この歩道通行可の要件について更に整理します。
2. 自転車が歩道を通行できる要件 |
自転車が歩道を通行できる条件について、再度列記します。
①「普通自転車歩道通行可」の場合 ②子供・高齢者・障害者
③安全確保のためやむを得ない場合
このうち②子供・高齢者・障害者は今回のテーマでなく検証対象外。
車道は歩道より安全だと主張する行政・警察・自転車研究者自身が、何故か②は(危険な)車道を避け歩道を走るのも止むを得ないとしていることから、これらの車道走行回避については特に異論が生じません。
次は①、これは以下の標識が歩道上に設置され、自転車も歩道通行可だとされる場合です。
・標識令: 規制標識(325の3)自転車及び歩行者専用
しかしこの「普通自転車歩道通行可」は、実はそれが設置されているかどうかは、独立した歩道通行可の要件にはならない。
なぜかというと、本標識が設置されていること自体、その箇所の車道が自転車にとって危険だと警察が認めているという前提があるため。
これは警察(厳密には「公安委員会」だが、今回は実態上差が無い警察で統一)による規制標識の設置基準。
この「対象道路」には車道が危険な場合等の明記はありませんが、「規制目的」には「安全な通行を確保する」ためとある。
つまりこの歩道通行可は、双方向通行化による利便性向上のためではなく、あくまで車道が危険だと警察が判断した場合に設置されるものです。(※P163の「並進可」では「交通の安全と円滑を図る」ためと利便性を明示している)
そして警察が危険だと判断するような場合なら、自転車利用者も基本的には危ないと感じる道路。この①歩道通行可が指定されている場合は、③の危険だと認められる場合に含有されます。
一方で逆に、①歩道通行可が指定されていない場合でも、③の危険だと認められる場合には歩道通行が可能。
これらをまとめると、自転車が歩道通行可かは、その車道が危険と認められるかどうかに一元的に集約されていることが分かります。
3. 安全確保のための「自転車走行空間の整備形態」 |
では、やむを得ず歩道通行をせざるを得ない程に車道が危険な場合とは、どのようなケースなのか。
多車線の幹線道路で、猛スピードの自動車が大量に通行していく道路であれば、車道と分離した「自転車道」が無ければ安全とは言えない。一方で自動車の少ない生活道路であれば、特に対策をしなくとも危険とは言えない。
危険かを判断する手段の一つに、その道路が「自転車走行空間の整備基準」を満たし、安全確保に必要な整備形態が実現しているかを判定する方法があります。
その整備形態選定基準として、現在事実上の全国標準になっているのが、「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」です。
・国土交通省ホームページ:国土交通省の自転車施策(html)
・「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」の地方説明会に関して(html)
・資料2:『安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン』について
P12(14/94)(pdf)
・「安全で快適な自転車利用環境創出ガイドライン」を補完する地方説明会資料
・ブログ主要記事まとめ
このガイドラインでは、上記説明資料の通り要約すれば、
・法定速度60km/hの道路では構造分離の「自転車道」が必要
・一定以上の自動車が通る法定50km/h・40km/h道路では「自転車レーン」が標準
・法定40km/h以下で自動車交通量も少なければ「車道混在」で可
としている。
これらの形態が整備されて、想定通り機能していれば、歩道通行可が必要なほど危険とは言えないと考えることが出来ます。
ただし、法定50km/h道路で視覚的分離の自転車レーンを標準とするこのガイドラインの規定は、世界で類を見ないトップクラスに「危険」なもの。
諸外国では自動車が1~2万台以上通行する50km/hの幹線道路では「自転車道」が必要だとしており、日本のガイドラインに則り法定50km/h路線に自転車レーンを着色したところで、本来自転車にとって安全とは言えない。
【参考:ガイドラインの欠陥】
・(1)自転車走路の整備形態選定基準
・(1-0)「自転車走行空間の整備形態」を選定する国外基準:
東京の幹線道路に自転車レーンを整備してはならない
・(1-1)自転車レーンの危険性を軽視する歪んだ研究
・(1-2)整備形態選定の根拠を隠蔽する国土交通省
この問題は置いておくとして、ここでは上記ガイドラインに則った整備が行われ、想定通り機能すれば、歩道通行が必要なほど危険ではないとして今回は先に進みます。
4. 安全な車道走行を実現しない、日本の車道走行促進政策 |
上記の形態が実現されず、或いは整備しても機能していない場合、自転車は危険な車道ではなく歩道通行が可能となる要件に該当することになる。
自転車の車道通行が原則通り実現するかは、整備形態の実現と機能の有無にかかってくるものです。
では近年の日本における、自転車の車道走行促進政策に基づき整備された各地の路線は、現状どうなっているか。状況の実態が問題となります。
4-1. 路上駐停車問題の放置 |
車両である自転車は車道走行が原則の掛け声のもと、車道の左隅を青く着色し、自転車以外の通行を禁止する交通規制を行ったもの。平成20年3月に整備された上記事例等を契機に、現在の日本の自転車通行空間聖母の主流とされています。
しかし「安全で快適な」走行空間の建前とはかけ離れ、スペースが潰される事例が多発している。
路上駐停車による自転車レーンの封鎖。自転車レーンは従来「停車帯」として利用されていたスペースに着色しただけの物が殆どであり、このように潰されるのは整備前から容易に予想がつくものです。
自動車に潰された走路を回避するため、自転車は自動車の前に飛び出すケースも生じ、
従来歩道を走っていた高齢者のママチャリは、回避が出来ず立ち往生。
そしてこの平成20年の事例とまったく同じ問題を、平成27年の現在に至るまで、殆ど改善されないまま全国の行政が繰り返し続けている。
これらケースでは、駐停車台数が数台で済むことは少なく、大抵は複数台が路線上に散在している。その場合自転車は度々右からの回避を余儀なくされ、その都度自動車車道に飛び出すことを強いられる。
自転車の唯一の走行空間の封鎖、そして自転車の頻繁な進路変更の発生は、危険な状況だと十分に認められる。安全確保のためやむを得ず、歩道通行が可能になる要件を満たすものです。
※注意:一方でこれら路上駐停車の行為自体は、必ずしも強制排除が望ましいものではない。根本の問題は、自転車走行空間と駐停車スペースを同時実現しない道路整備の欠陥にあります。
・自転車の交通ルール(番外編1)「駐車」「停車」の定義と自転車レーン上の駐停車問題
4-2. 安易な「車道混在」への逃げ |
次に「自転車レーン」整備で頻繁に見られる欠陥は、最も安全対策が必要なはずの交差点付近で、安易に自転車レーンを解除する事例が乱発されていること。
直線部では自転車レーンになっているものの、
・同、茅ヶ崎市国道1号
交差点手前で自転車レーンが解除され、「自転車ナビライン」による車道混在に変化。それは何故かというと、
自動車交通の円滑化に必要な右折レーンを設けるため、自転車の安全対策に必要な自転車レーンを分断しているから。
こちらも単路部での自転車レーンが、
自動車車線の維持のため分断され、自転車と自動車の混在を余儀なくされる。
こちらは最初から交差点前後を車道混在にしている事例。これも結局は、
自動車交通の円滑化に必要な右折レーンを、自転車レーンより優先して確保しているため。
再度ガイドラインの基準に戻ると、これら路線では自転車レーンが必要だとしていながら、自動車交通の円滑化のため、自転車の安全確保に必要な整備形態を安易に分断する事例が乱発されている。
しかもこの整備形態の分断は、ガイドラインを作成した国土交通省と自転車研究者が率先して推奨しているという救いようの無い事態になっている。
・安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会 (html)
・配布資料(html) 資料2設計にあたっての技術的な課題について(pdf)
・「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会」第3回の検証(その2)より
・配布資料(html) 資料2設計にあたっての技術的な課題について(pdf)
・「安全で快適な自転車利用環境創出の促進に関する検討委員会」第3回の検証(その2)より
自転車を車道に出すことを目的化させた国土交通省と学識経験者は、「当面困難な場合」という釈明を全国行政に認め、安全確保に本来必要な形態の整備には拘らない方針をガイドラインに上書き。
しかしこの暫定形態は、事故リスクを抱えながら現状車道走行を行う自転車への対策に過ぎない。
本来の安全確保が為されていない以上、車道混在の整備をいくら繰り返したところで、安全上やむを得ない場合に認められる歩道通行可の要件を崩せるものではありません。
上記の茅ヶ崎市内等の事例のように、行政が「自転車専用レーン」を整備したと謳う路線でも、実態は「専用」とは名ばかり、交差点の度にレーン分断と車道混在を余儀なくされる。
レーン分断箇所ではその危険性から歩道通行を認められ、加えて歩道と車道を行き来するのは国土交通省自身も危険であると認めている。つまりこの「車道混在」に行政が逃げた路線では、基本的に全線にわたって自転車の歩道通行が認められると言えます。
4-3. 「安全運転義務違反」を犯す自動車の危険運転の黙認 |
上記の自転車ナビラインによる車道混在では、自転車と自動車の走路が重複するため、両者が無関係に通行すれば交差点で交錯することになる。
その場合に殺傷されるのは当然自転車であり、混在は自動車が自転車に配慮しなければ成立しません。
にも関わらず実際の車道混在路線では、自転車の安全確保に配慮しない自動車の「安全運転義務違反」が乱発。
そして更に悪質なのは、警察がこの自動車の危険運転に対する取締りを放棄していること。
その最たる例は、国土交通省東京国道事務所と警視庁が国道246号で行った自転車ナビライン=車道混在。
本来は最低でも1.0m程度の側方間隔で追い抜かなければ、自転車に対する安全運転義務違反が課されるはずながら、本路線では離隔50cm程度での危険追抜きが常態化。そして警視庁の取り締まりも一切実施されない。
【参考】
・自転車を自動車が追抜く際の側方間隔
しかも警視庁の倫理観を疑うのは、上記は「バス専用レーン」の規制時間帯であり、本来普通自動車は通行できない筈でありながら、それすらも警視庁は黙認していること。
車道混在の最低限の実現に必要な、自転車に対する自動車の配慮さえ、警視庁がその促進を放棄している。
車道混在箇所における警察の対応は全国で大差なく、この状況を黙認する行政、自転車ナビライン整備主体の姿勢も同じ。
自転車にとっての安全確保が為されていない、この事例においても当然のように、自転車の歩道通行可の要件が適用されます。
4-4. 構造分離の自転車道の整備の放棄 |
この国道6号は法定速度60km/hであり、本来構造分離の「自転車道」が必要になる路線。しかし車道削減による整備を避けたい行政が、構造分離不要論を唱える学識経験者を根拠づけに利用し、自転車レーンで済ませたという安全軽視の事例。
更には、かつて自転車道を整備しながら、隣接区間の整備が自転車レーンに改悪されたという事例さえ存在する。
平成23年に整備されたこの「国道19号桜通り自転車道」は幅3.0mと広く、日中の自転車の86%、通勤時に限れば95%もの自転車が自転車道を利用するという、国内の他事例に例を見ない圧倒的な整備効果を発揮。
自転車と歩行者を分離するという目的がほぼ達成された、国内では「好事例」と言えるものでした。
にも関わらず、自転車の右側通行は害悪、自動車が自転車に配慮すれば構造的分離は不要という自転車研究者の持論を国土交通省は全面的に受け入れ、隣区間で平成27年度に整備されたのが以下の劣化形態。
幅わずか1.5m、一方向通行限定の自転車レーン、
そして自転車の安全を大きく削る整備に劣化させながら、必要な安全対策を行うわけでもない。
※同、名古屋の整備事例
車道左側走行を徹底させると口では繰り返しながら、自転車の安全確保に努める気など一切無い。
この事例でも、自転車は安全確保のために当然のごとく歩道通行が可能となります。
以上が自転車の車道走行促進を目指す、日本の自転車政策がもたらした一般的な状況です。
5. 日本の自転車政策は、「自転車の車道走行原則」を謳えない |
以上のように、現在の日本で行政が行う自転車走行空間の整備は、駐停車スペース未整備によるレーンの封鎖、車道混在の連発、自動車の危険運転黙認、自転車道整備の放棄により、その大半が自転車の安全確保が為されていない。
これら路線ではすべて、自転車が安全確保のためやむを得ず歩道通行可能な要件に該当する。
「自転車は車道通行が原則」を謳いながら、実態上その殆どで、歩道通行が安全上必要な手段として可能になっているということです。
改めて本記事のタイトルに戻ると、「自転車の車道走行は原則ではない」と言い切ることは出来ないかもしれない。
たとえ全てのケースで例外が適用されるとしても、あくまで例外を認める原則は車道通行であり、道路交通法の規定上の原則であることには変わりがない。
よって今回、最も適当な表現に変えるとすれば、以下のようになります。
自転車の安全確保のための道路整備を怠る行政、
自転車の安全確保のための交通規制を怠る警察、
「車道走行は安全」という嘘を繰り返す自転車研究者に、
「自転車は車道走行が原則」を謳う資格はないということ。
円滑な自動車交通の維持のため、行政に都合のいい主張で政策への介入実績を増やすため、安全・安心・快適な自転車利用環境実現を妨げるこの三者には、自転車に車道通行原則を強いる資格はない。
一方の現在の日本の自転車利用者に対しても、次のように提案します。
日本の自転車利用者は、
行政・警察・自転車研究者に唆されて安易に車道を走ることは、
自分の身を守るためにやめた方がいい。
この提案に対し、容易に想定される反論があります。「おまえは自転車の歩道通行を推奨し、歩行者を危険にさらし続けるのか」と。
本ブログを見て頂ければご理解いただけますが、従来の全国の行政が繰り返してきた「自転車歩行者道」の整備に対し、最も具体的な批判を行っているのは本ブログであるという自負があります。
【参考】
・ブログ主要記事まとめ
・「道路構造令自転車道」の欠陥構造と解決策(※自転車歩行者道を含む)
自転車は本来歩道を走るべきではないというのは当たり前、やむを得ない通行時の徐行必須も当たり前、歩道を中心とした整備が愚策であることも当たり前。
これを誰よりも理解している上で、今回の記事があります。日本の自転車利用者は、安全確保のため現在の車道を走るべきではないと。
なら日本の自転車は、どこを走ればいい?残念ながら日本に自転車が安全・安心・快適に走れる空間はほぼ存在せず、今後当面の自転車政策もその空間を創出しようとはしていない。
是が非でも自動車中心の道路交通を崩したくない行政と警察は、一方で歩行者保護の必要にも駆られ、自転車研究者を利用して車道が安全になる整備を行ったという嘘を繰り返し、自転車を車道に誘導しようとする。
自動車交通の確保と歩行者の要望への対処のため、自転車の安全確保を蔑にし問題の鎮静化を図ろうとしているということ。
この行政らの姿勢は、例えば前述の茅ヶ崎市の事例で露呈している。
整備者の国土交通省横浜国道事務所自身が、「自転車の大半が自転車レーンでなく、歩道を走行している」と認める状況。警察も「自転車レーン供用直後は自転車は皆自転車レーンを走行していたが、次第に歩道を走行するようになった」と認める。
この問題が、駐停車による走路封鎖、自転車レーン分断による車道混在など、整備前から全国各地の事例で分かり切っていた問題に拠るものだと認識せざる得なくなっている。
これに対し、整備主体の国道事務所でも取り締まりを行う神奈川県警でもないものの、市民の安全確保の責任がある茅ヶ崎市役所が採ったのが以下のような行動。
安全な自転車通行空間を確保したのに、歩道通行等の「危険な運転」を繰り返すわがままな自転車を歩道から排除するために、自転車レーンの「走りやすさを体感」させ利用促進を目指す。
・・・なぜタイトルの「自転車専用レーン」から、いきなり嘘をつくのか。自転車専用レーンが交差点の度に分断され、専用空間の消滅が連発されているからこそ、自転車は危険を感じ歩道通行を余儀なくされている。
歩道の普通自転車通行可が外れないのも、上記国道事務所が認めているように、自転車走行空間が確保できず車道が危険だから。
このケースで車道通行原則の例外が認められるのは、13歳未満の子供や70歳以上の高齢者だけではない。この路線では全自転車が、安全上やむを得ない場合として歩道通行が認められる。
この体験走行会の実施により、どのような成果が出たかは分からない。実施で露呈したのは、自転車の安全確保より円滑な自動車交通を優先し、通行の危険性を伝えず車道に誘導しようとする行政の姿勢。
日本の行政はいずれも、この姿勢と大差がありません。
・・・
最後に今回記事をまとめます。
本ブログは、行政による自動車交通優先自体を批判しているわけではありません。自動車交通の円滑化の最優先を、その地域の総意として採用するのは自由です。
ただしその場合、当地域は、歩行者優先と自転車優先を謳う資格は無い。自動車交通を妨げない範囲で歩行者・自転車を泳がすのに過ぎない。
自転車走行空間を路肩着色にとどめ、その着色幅すら狭めるような状況なら、自転車に車道走行原則を強要する資格も無い。
自らの身を切る安全確保から目を背ける行政に、車道走行原則を謳う資格はない。自転車利用者も安易に原則を信じ車道に出ることは避けた方がいい。
今回記事は以上です。
【参考】
・道路交通法の欠陥:「車両である自転車は車道走行が原則」
(1)自動車の通行方法との差異
(2)原則の設定経緯と妥当性
(3)自転車道の規定と総括
(※自転車の車道走行原則は、自転車・馬車・路面電車しか道路を通行しない大正時代制定の規定であることを中心に検証しています。)
・ブログ主要記事まとめ
(※国内外の自転車走行空間の整備事例、事故分析、自転車政策の検証などを行っています。)
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