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 民間の戦争犠牲者らを追悼する名古屋市主催の慰霊祭が8日、同市千種区で初めて開かれた。空襲で左目を失い、国に救済制度を求め続けている近くの杉山千佐子さん(99)や、高校生ら約50人が参列した。

 市が昨年、千種公園に建てた碑の前で、杉山さんは「亡くなった仲間も喜んでいる」とあいさつ。その後、会場を移し、動員先の兵器工場が空襲に遭って当時の生徒が犠牲になった金城学院高校と東邦高校(いずれも名古屋市)の女子生徒らとの座談会があった。

 杉山さんは「よく生き残れた」と防空壕(ごう)で生き埋めになった経験や、「お国のために尽くしたのに、なぜ救ってもらえないのか」と戦後の苦難の日々を語った。生徒からは「私たちにできることはないか」との問いかけや、空襲被害を語り継ぐため、「名古屋空襲慰霊の日」を条例で制定するよう求める意見が出た。同席した河村たかし市長は「担当部局に検討させる」と前向きだった。

 名古屋市では60回以上の空襲を受け、市民約8千人が亡くなった。市は2010年に民間戦災傷害者援護見舞金制度を始めた。千種公園に建てられた碑には、空襲で燃える名古屋城などがあしらわれている。(伊藤智章)