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 長崎で被爆した深堀柱(あきら)さん(85)=長崎市=が、被爆したマリア像をモチーフに絵を描いている。原爆で亡くなった仲間のことを思って4年前に描き始め、これまでに30枚以上を完成させた。

 マリア像は、爆心地近くの旧浦上天主堂に置かれていた。カトリック信徒の家庭に生まれた深堀さんは、原爆が投下される前、毎週日曜のミサでいつもマリア像を見つめていた。働くため家族と離れて、東京で暮らしていた母の存在と重ねていた。

 しかし、被爆時に像は天主堂とともに倒壊。首から上だけが見つかったが、目が焼け落ち、ほおが黒くこげた無残な姿になった。

 深堀さんは旧制鎮西学院中4年の時、学徒動員先の兵器工場から伝令に走った消防署で被爆した。爆風で体が宙に舞い、壁や床にたたきつけられた。大きなけがはなかったが、自宅は全焼。遺体を焼く手伝いをした時、遺族が故人の名前を叫びながら、火がついた遺体にしがみついていたことを今も思い出す。

 戦後は、地元テレビ局の記者として働いた。80歳を過ぎ、人生の終わりを考え始めると、あらためて思うようになった。「私は、原爆で亡くなった人たちの犠牲で生かされてきた」