2012-01-26 すごいの一言
■ウィザードリィらしさとは
ウィザードリィオンラインのプロデューサーってウィザードリィZEOの原案の人だったんだ……手を出さなくてよかった(笑)。
- 作者: 福原蓮士,岩原ケイシ
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2010/06/17
- メディア: コミック
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私はウィザードリィフリークの中でも比較的保守的ではない方で、エルミナージュはもちろんのこと、真ウィザードリィTRPGリプレイのアークデーモンとの駄洒落合戦とか剣と魔法と学園モノまで許せてしまう方なんだけど、さすがにこれは一読して後悔するレベル(笑)。
魔術師のローブを身にまとい、身の丈を越える大剣を背負った少年・ゼオ。ある者は、彼を最高レベルの魔法戦士と称え、ある者は、ただのシロウト冒険者と罵る。だが、真の姿を誰も知らない‥‥。闇天使(あくま)と契約を交わし、禁忌の秘術を得た魔術師ということを。伝説のRPG『ウィザードリィ』の世界を漫画化!!
事前にAmazonのこの煽り文句を知っていたら回避してたんだけど……この2〜3行の文章だけでウィザードリィ関連作品としては突っ込める場所が4つも5つもあるっておかしいよね(笑)。*1
もちろん、ウィザードリィっぽくなくても面白ければ問題ないんだけど、私にとってはそうでもなかった(よくあるラノベっぽいという感想しか湧かなかった)。*2
面白いか面白くないかについては、主観が混じるから人によって評価は変わるだろう。でもこの漫画が(煽り文だけではなく中身も)「全然ウィザードリィに見えない」のは客観的な評価だと思う。
私は1巻しか読んでいないのだが、魔法の名前がウィズじゃないとかそういう表層的なレベルじゃなく*3、根本から何かが違ってる。そもそもダンジョンに潜るシーンがほとんどないという時点で「これのどこがウィズなんだ」という印象なんだけど、冒頭から「冒険者はギルドから依頼を受ける」(ウィズの世界にギルドなんてなんてあったか? ウィザードリィで冒険者を作成するのは「訓練場」なんだけど?)とか「モンスターの遺骸を酒場に持ち帰ってくる冒険者」(モンハンか?)とか、もうツッコミどころが満載。第1話「孤高の超戦士」というタイトルを見てウィザードリィのタイトルだと思う人がどれだけいるだろうか?
もちろん、舞台となっているハザなんとか大陸なんて関連作品で聞いたこともない。逆に言えば、ウィズとの類似点は1巻通してたった一箇所、「レッサーデーモンの造形」だけである。
つまり、この原案の人はウィズらしさを何か勘違いしてるんじゃないかな、と思うのだ。ZEOの原案者なら、ウィザードリィオンラインを今のような形でゲーム化したのもなんとなく頷ける(というかああいうゲームをウィズだと言い切るのも頷けるというべきか)。実際ウィズオンラインの制作にあたって「ウィズらしさは人によって違うからそこについて議論はしない」と言ったそうだ。もちろん全てが旧来のウィズと同じである必要はないのは納得できる。しかし、ならば次は「じゃあウィザードリィという色眼鏡を外し、単体のゲームとしてみた時面白いかどうか」となるのは当然だ。
私には「通信ラグで動けない間に殺され課金アイテムを身包み剥がれるRPG」や「後ろから2秒で詠唱できる束縛呪文/その後攻撃呪文の2発で殺されるRPG」や「ファイターだけが図抜けて強く全人口の6割がファイターで他のジョブは要らない子」「パーティを組むと非効率なのでずっとファイターでソロ」なんていうオンラインゲームが面白いとはどうにも思えない。もちろんウィザードリィだとも思えない。
逆に言えば、ウィザードリィZEO第1話の時点で、ウィザードリィオンラインの展開がどうなるかも予測可能だったのかもしれない。ちなみにこの原案の人が関わっている他のウィザードリィはあの悪名高いDS版の「生命の楔」と「忘却の遺産」である……。
*1:例えば……ぱっと思いつくだけでも 1.ウィズの魔法使いは剣を使えない。 2.ウィズに魔法戦士というクラスはない(いるとすれば「サムライ」)。 3.ウィズに「闇天使」なるモンスターはいない。 4.「闇天使」なのに「悪魔」のルビが振られているのは何故か。ウィズの世界でフォールンエンジェル・堕天使とアークデーモン・悪魔は別種のモンスターである(作中では、「闇天使」というのは召喚魔法で召喚されるモンスターのこととされている。そりゃ召喚師が登場するシリーズ作品もあるけどさ……) 5.ウィザードリィの世界を漫画化とあるが具体的に何作目のどの世界なのか。
2011-11-22 あたいったら最強ね
■シビアならWIZなのか?
名作「Wizardry」を独自解釈でMMORPGに落とし込んだ「Wizardry Online」レビュー
うーん、悪いけどこれは私が持っているWIZのイメージとは違うなあ……。
ゲームバランスが厳しいとかアクション要素があるのはWIZじゃないとかそういうんじゃなくて、どこが一番違和感を覚えるかっていうと、PKの部分。これで善悪の戒律を表現してるのかもしれないけど、私の中のWIZは「隣り合わせの灰と青春」とか「風よ竜に届いているか」のイメージが強くて、PKバンバンするのが悪の戒律にはどうしても思えない。
隣り合わせの灰と青春―小説ウィザードリィ (集英社スーパーファンタジー文庫)
- 作者: ベニー松山,緒方剛志
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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- 作者: ベニー松山,高橋政樹
- 出版社/メーカー: 創土社
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- メディア: 単行本
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実はこの二編の小説でもPKシーンはあるんだけど、両方とも相応の理由を持つ作中では不可避の場面だし「相手のアイテム目当てで私利私欲のために相手を殺す」とか「死んだ冒険者の遺骸から装備を剥ぐ」というシーンはない。元祖WIZでもパーティバトルはできないし、善と悪は「友好的なモンスターに対してどう対応するか」という差異だけだ。
ウィザードリィの世界は過酷であるがゆえに善であろうが悪であろうがパーティ内の結束は固く、人間同士で争っている余裕などない*1、っていうのが私が抱いているWIZのイメージで、いつ同じ冒険者に寝首を掻かれるかわからないシビアさ、っていうのは旧来のWIZのそれとはちょっと違うんじゃないかな、っていうのが正直な印象だ。そんなのお前の勝手な想像じゃないか、と言われればそこまでなんだけどね。
*1:正確には、そんな奴はすぐに淘汰されてしまう
2011-07-27 3DダンジョンRPGへの憧憬
ダンジョンRPGを盛り上げるためにどのような変革が必要なのか
エルミナージュ、とともの、アンチェインブレイズレクス。3つの3DダンジョンRPGを開発した3つの開発チームによる鼎対談。ゲームの濃さの割に無難な結論だな、というのが正直な印象だった。
ただ、一つだけ言うなら、前置きにある
しかし今,ダンジョンRPG市場にはかつてほどの勢いがなく,若いゲーマーからは“時代遅れ”と評されることもある。「Wizardry」発祥の地であるアメリカですら,今ではダンジョンRPGの姿を見かけることはほとんどなくなってしまった。
というフレーズにはちょっと違和感を覚えた。少なくとも日本のコンピュータRPGにおいて、3Dダンジョンは「勢いがあった」と言われるほど主流を占めたことはないからだ。ブラックオニキスよりドルアーガ、ウィザードリィよりドラゴンクエスト、ダンジョンマスターよりファイナルファンタジー。特に日本で最初に爆発的ブームを巻き起こしたドラゴンクエストが3DダンジョンRPGではなかったため、日本では「RPGといえばダンジョン」という時代はほとんどなかったと思っている。
業界人の人気が高いのがエルミナージュで、しかもこの場にいる開発者たちが全員世界樹をプレイ済みというのにはなるほどと思わされた。本当はこのインタビューに世界樹のスタッフとかエルミナージュの生みの親である小宮山氏が加わっていればさらに面白かったのだけれども。
そんな私が生まれて初めてプレイした3DダンジョンRPGは……今おぼえている人はどれだけいるのだろうか。セタの「あやかしの城」というゲームだった。
というわけで、これから何回かに分けて3Dダンジョンゲームの思い出について語っていきたいと思う(インタビューの感想はその最後に)。
2010-08-01 ウィザードリィらしさとは
うーん……。ゲームが面白いかどうかについては主観の入る部分もあると思うんだけど、ほとんどのレビューが「WIZっぽくない」という評価をしているのが気になる。
なら、お前は古き良きWIZとまったく同じでなければ買わないのか、というとそうではなくて(エルミナージュとか、WIZとは結構違う部分も多い)、むしろソフトを作った側が「これは古き良きWIZだよー」といって売っているのに実際はちょっと違う、となると躊躇するという話だ。
逆にととモノのように、キャラクター作成システムを持つ3DダンジョンRPGでありながら、あえて古いWIZらしさみたいなものを排除して作られているゲームもある。アクワイヤのあの方向性は、正しいかどうかは別にして勇断だった。どう考えても昔のWIZが好きな層には拒否反応が出そうなベクトルだし……。
いずれにしても、このアマゾン専売のシリーズは、ちょっと方向性がよくわからない。個人的には店頭で扱っていないので気軽にちょっと手を出すという気分になれないのが大きいかな。売る側としてはアマゾン専売であるメリットも大きいとは思うのだけどね。