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※6月26日、テキストを追加しました!

 「時代性のおかしさみたいなものに、僕たちは危機感を持っています。見ていて耐えられないくらいおかしいんですよ」

 特定秘密保護法に反対し、デモや集会を続けてきた学生有志からなる「SASPL」を前身とする「SEALDs(シールズ、自由と民主主義のための学生緊急行動)」は、2015年6月上旬から国会前で「戦争立法」に反対する金曜行動をスタートした。SEALDsのメンバー9人が、2015年6月24日、参議院議員会館で行なった記者会見で、メンバーの一人、明治学院大学4年の奥田愛基さんが、立憲主義を否定する安倍政権の横暴なやり方を「むちゃくちゃ」だと批判し、憤った。

明治学院大学4年 奥田愛基さん

  • 日時 2015年6月24日(水) 17:00~
  • 場所 参議院議員議員会館(東京都千代田区)
  • 主催 SEALDs

 これまで、3度の国会前集会を行なったSEALDsだが、参加者の数はすでに2500人を超える。他団体と共催した6月14日の東京・渋谷デモには3500人が集結し、27日に予定している渋谷ハチ公前での街宣アピールにも、すでに高い注目が集まっている。

 東京だけではない。SASPLの動きは地方にも波及し、150人のメンバーがいるという関東圏だけではなく、SEALDs関西も始動した。21日には、京都で2000人を集めるデモが行なわれたほか、前日20日には沖縄で、また、26日には北海道で19歳の女性が同テーマでデモを企画するなど、若者が声をあげる動きが自然発生的な広がりを見せている。

SEALDsは勉強をしながらバイトをこなす普通の学生の集まり

 SEALDsとは何なのか。

 記者会見では、SEALDsが掲げる理念や安全保障法制に反対する理由、また、今後の行動予定についてメンバーがそれぞれ説明した。

 10代後半から20代前半を中心に構成されているというSEALDsだが、学業とバイトの合間を縫って、集会やデモの準備や運営にあたっている。明治学院大学4年の林田光弘さんが話した。

明治学院大学4年 林田光弘さん

 「僕は今朝5時に起きて、7時から午後2時半までバイトをしてここに来ています。一週間の中で、勉強やバイトの時間を含めると、遊ぶ時間は全然ありません。バイト代も交通費やみんなとのミーティングでの食事代でなくなります。そういう学生が200人集まっているわけです。みんな、友だちの誰々が来ているから参加しているわけではないんですね。自分で勉強して来ています」

 長崎生まれの林田さんは、被爆3世だという。

 「僕は被爆3世です。おじいちゃんが被爆しています。そういう僕個人のバックグラウンドもあって、小さい頃からずっと戦争について考えてきました。なぜ、『被爆3世』という重いものを背負っているんだろうと。考え、本を読んで、過去の人の言うことに耳を傾けてきました。

 『(SEALDsのメンバーは)国会を見てないんじゃないか、安全保障について考えてないんじゃないか』と批判されますが、(国会中継は)見ています。その上でおかしいと思って来ています」

 林田さんは、SEALDsはバイトをしながら学業をこなす普通の学生が、個人で参加しているという点を強調した。

「護憲」か「改憲」かという問題ではなくなっている

 金曜日の国会前行動は、19時30分から約2時間続けられる。学校を終えた学生や仕事を終えたサラリーマンなど、平日や日中に足を運べない層の受け皿になればと、金曜日を選んだ。

 集会ではSEALDsのメンバーがスピーチするほか、毎回、専門家を署名人をゲストに招いているが、初回は改憲派で知られる憲法学者の小林節氏が雨の中訪れ、学生たちを激励した。2回目は元経産官僚の古賀茂明氏やジャーナリストの津田大介氏、3回目の19日には、憲法学者の権威である樋口陽一氏も姿を見せ、安倍総理について「人間としてあまりに不真面目だ」と批判した場面もあった。

 「『憲法を守れ』という意味が単純に『護憲』という意味ではなくなってきている。だから、改憲派の小林さんが、わざわざ雨の中来て挨拶をするわけですね」

 奥田さんは、安保法案の中身も問題だが、立憲主義を蔑ろにする安倍政権に強い危機感を感じているという。

 「今はもう『護憲』か『改憲』かという問題ではなくて、この国の根幹、法治国家としてこれが許されていいのかということです。安倍総理は去年(2014年)、『最高責任者は私である』という発言をしています。自民党の改憲草案にも繋がる話ですが、今のこの国の総理、政府は、立憲主義を理解されていないのでないでしょうか。

 中学の公民の教科書にも書いてあることですが、憲法というものが権力を縛り、それに基づいて政治を行なう。教科書に書いてあるようなことが、守られていない。それに対し、危機感を持たないといけない。渋谷に数千人集まったと言ってもたかだか数千人。『オール沖縄』『オール大阪』のように、保守や革新を超え動きが出てきた時に政治の動きは変わるので、そういう動きにならなければいけないと思います」

 国会前には今後、野党議員も訪れる予定だといい、「全野党の議員にオファーを出していて、次世代の党を除く、ほぼ全ての野党議員が集まってくれるのではないか」と、奥田さんは期待を寄せる。

法案の問題点をカラフルなブックレットにして配布

集団的自衛権の違憲性など法案の問題点をカラフルなブックレットにまとめた

 SEALDsは、法案の問題点を3つにまとめ、一冊のブックレットにまとめた。その内容について、明治学院大学4年の牛田悦正さんが説明した。

1. 集団的自衛権を行使できるように、戦争に参加する可能性が高まる
2. 「後方支援」という名目の参戦により、自衛隊員と国民のリスクが高まる
3. そもそも「憲法違反」で、議論の仕方さえもメチャクチャ

 政府は集団的自衛権を含む武力行使のための「3要件」を示したが、その一つである「存立危機事態」が具体的にどういう事態なのか、政府は明確にしていないとSEALDsは批判する。

 日本共産党の志位和夫委員長も国会質疑の中で、「密接な関係にある他国への武力攻撃が発生したことにより、存立危機事態に陥った国が世界に一つでもあるのか」と問いただすと、岸田外務大臣が答弁し「実例を挙げるのは困難です」と回答している。さらに、政府は、石油の入手が困難になった場合や電力不足を存立危機事態の具体例の一つに挙げているが、「エネルギー」を理由に戦争に参加することは、国際的にも非常識だという専門家の指摘もあると牛田さんは話す。

 さらに、ブックレットでは、国連が非難決議を出した違法な戦争に反対してこなかった日本が、米国の支援要請を断れるのかと問題提起。米国に無批判な政府が「巻き込まれることは絶対にない」といくら言っても、その発言に根拠はないとも指摘した。

 ほかにも、「後方支援」という言葉は、戦争に参加する印象をうすめようとしていると批判。これまで禁じられていた「弾薬の提供」など、限りなく戦闘行為に近づく活動を認めている上、自衛隊の活動範囲がこれまでの「非戦闘地域」から「戦闘地域」へと大きく近づくことで、自衛隊員のみならず、海外の日本人がテロにあうリスクを著しく高めると、「後方支援」の危険性を訴えている。

次の世代に、私が生きてきた繁栄や平和を残すために

 記者会見では、メンバーがそれぞれ、SEALDsに参加している動機や法案に反対する想いを口にした。

筑波大学3年 本間信和さん「なぜ『戦争法案』に反対しているかというと、プロセス自体に問題がある。時の政権が、一時的な判断で、憲法の解釈を大幅に変えてしまう前例ができてしまうと、何でもできるということじゃないですか。さらに加速し、収集がつかないことになる可能性がある。これが、未来にとっての前例になってしまう。法案自体、もっと議論されるべきだし、プロセスに明らかな欠陥がある。絶対に止めなければならない。

 政治の話をすると薄ら笑いを含むような、茶化されるようなことになっているが、生き死にに関わることなので、一生懸命、考えなければいけないと思います」

上智大学3年 柴田万奈さん

上智大学3年 柴田万奈さん「反対する理由は、みんなが言った通りで、これは生き死にに関わる問題。私も戦争に行きたくないし、弟にも、子どもにも孫にも友だちにも行ってほしくない。デモや抗議をしている理由は、自分がおかしいと思ったときに、おかしいと言える場所があまりにも日本には少ないと思っていて、その一つとして国会前がある。だから、行っています」

立教大学大学院 神宮寺さん「戦争をやって当たり前という国々の中、『戦わない』という本当の意味での理想を掲げる国、それがある意味では、日本という国のプロジェクトだった。それが、70年間も実際に続いたという、ある意味では奇跡的なことがここで終わりそうになっていることが、本当に危機だと感じています。次の世代に、私が生きてきた繁栄や平和を残すためには、今、ここで非暴力によって、言葉によって闘わなければいけないと思っています」

世代を超えて繋がるのは当たり前

 政府が95日間の国会延長を決めたことで、SEALDsも9月までの長期的な行動を続ける予定だというが、今後の展開について本間さんが記者からの質問に答えた。

 「いわゆる、『若者が政治に無関心』だと思われるのは、人との出会いや接触が少ないからであって、こういうパンフレットやPVを作ることを増やしていけば、政治に興味を持つ層というのは、実は多いのではないか。今後は、そういう層にアクセスすることを心がけていきたいと思っています」

 奥田さんもSEALDsに対する反響の大きさとデモや集会に集まる人数について答えた。

 「反響が大きいことに驚いている面もありますが、これぐらい集まって当たり前だなとも思います。

 それから、世代を超えている、ということを強調したい。集会では、60〜80代の人が来てスピーチをします。ちょっと時間に余裕がある20代と、学者を引退したくらいの60代後半が手を組めば、大きな動きになるんじゃないかと、大学の先生に言われたことが印象に残っています。世代間闘争にならず、20代や60代が世代を超えて繋がるのも当たり前だし、政治に無関心だと言われる30代や40代にも来て欲しい」
(取材:松井信篤、写真:芹沢あんず、記事:ぎぎまき)

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■岩上安身によるインタビュー記事

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