NHK俳句 題「朝顔」 2015.08.08


「NHK俳句」司会の岸本葉子です。
第1週の選者は池田澄子さんです。
よろしくお願いします。
よろしくお願いします。
そして今日のゲストは日本語学者の金田一秀穂さんです。
はいおはようございます。
よろしくお願いします。
ようこそおいで下さいました。
金田一さんは俳句がお好きと伺いました。
あの〜例えば…そうですね。
俳句ってとっても大切な文化だと思うんですけれどもまあ私が好きなのは例えばこの俳句なんですが…。
あの〜まあ季語が…いわゆるない無季の俳句だと思うんですがとてもこうリアルに感じられるんですね。
あの〜白泉は実は公会堂か何かで廊下で兵隊さんが立ってるのを見たんだと。
それでこの俳句を作ったんだというふうな話を聞いた事があるんですけどもでも私は実はそういう事はあんまり思ってないんですね。
なぜか冬で暖かくこう…親戚同士が集まってワイワイ騒いでてそしてふっと手洗いか何かに立って寒い廊下に立った時にその廊下の向こうに戦争が立っていた。
いつの間にか戦争の気配がそこに現れていた。
何かそういう感じがこれを読んでしてしまうんですね。
とてもこう…怖い。
いつ戦争があるかどうか分からない。
でもふと気付いたら戦争がすぐそばにいたんだっていうそういうこう恐ろしさを感じてしまう。
あの〜普通言葉にならない事を俳句ってやる訳ですけどこうやって言葉に表された途端に本当にそういう気持ちが分かるように伝えられる。
すごい事だなと思うんですねこの俳句。
そうですね。
池田さん冒頭の句でも「エノラ・ゲイ」という言葉が出ました。
こちらの句は…?そうですね。
あの〜白泉の句に続いてはちょっと恥ずかしいですけれどまあ作者としては追悼の気持ちとそれから祈りの気持ちを書いたつもりですけどあの…通じるかどうかはね私には分からない。
この句の兼題「朝顔」ですけれどもこちら普通夏の花というイメージがありますけども実は秋の季語。
今回のテーマが「夏か秋か」というテーマなんですけれどもね普通の感覚では学校なんかが「夏休み」っていう名前で…「夏休み」っていう名前で1か月ありますよね。
ですから8月は夏だと当然のように思っていますよね。
はい。
で朝顔も小学校の生徒が持って帰ってきてそれで観察日記をつける。
それが夏っていう感じですからだから朝顔も夏の花って普通の人は当然のように思っていますよね。
でも私も「歳時記」で知ったんですけれども知ってみると朝顔って秋の花ですね。
秋きれいなんですよね。
ではその「朝顔」でどんな句が出てきたか早速入選句をご紹介していきましょう。
あの〜少しだけ…ちょっと人生を思わせたりしますね。
軽いがっかり。
でこんな事も期待とちょっと違うんですね。
でもだからって大した事ではない。
こんな事も俳句になるんですね。
2番にいきましょう。
過疎っていう言葉決まり文句を使わないで一年生がいないっていう事実を語った事の強さじゃないかと思います。
こんな村ありそうですね。
そうですね。
でもなぜか明るいんですよね。
そこが不思議ですよね。
老人ばかりの村なんだなって事は分かるんですけどその明るさがちょっとすてきですよね。
2年生はいるんですよね。
きっとね。
ハハハ…。
3番です。
堤を波が越えたといえば津波をね思わない訳にいかないしそこにたくさんの不幸があったって事も思わない訳にいかないですね。
でもそこに朝顔が生きていた。
ねっ。
こちらも救いを感じますね。
はい4番です。
あの〜とても地味な句なんですけれどもねいかにも暮らしの中にありそうな一こま。
で褒められても朝顔っていうのは一枝切ってあげるって訳にいかないんですよね。
そういうところが何か…先に一句にしてしまった人の勝ちっていうか…。
この「約しけり」は約束した。
種あげるよって事ですね。
ええ。
5番です。
「客になる」っていう事で作者とそれから色水を作って遊んでいる子どもとの関係が景色として見えてきますね。
金田一さん何か昭和の遊びを…。
そうですよね。
ふっと忘れてましたけどああそうだ。
朝顔で色水作ったよな。
あの〜思い出しますよね。
その感じがいいですね。
6番です。
え〜朝顔の種は5月の初め頃にまきますよね。
でそれから花のあとに種が出来る訳だけれども次々と花が咲きながら花が咲いている間に種になっていくんですね。
どっちの種かっていう事はこの句では書かれてはいませんけれども朝顔の種の真っ黒で硬くてそういうちょっと変な形ですね。
それであの〜何だろう。
「決意あり」っていう言葉。
ちょっと思いつかなかった世界だなと思います。
これは種を見てるというと…そうすると季語は種まきの方に近づくんでしょうかしら?どっちでもいいんじゃないんですか?あの〜5月頃に種まく事と朝顔の種が出来るっていうのは朝顔は花が終わって秋になって実がなるんじゃなくて咲き継ぎながら種が出来ていきますね。
はい分かりました。
7番です。
え〜ごく早朝の朝顔。
明るくなったばかりなんでしょうね。
で一日が始まる時刻のその初々しい太陽っていうのかしら。
日光ですね。
それが朝顔の前面に当たっている。
もちろんこの朝顔の後ろだけじゃなくてまだすごく明るくはなっていない朝っていう感じがしました。
金田一さん何か余韻を感じますね。
う〜んそうですよね。
ふと読むとよく分からないけれどああそっか。
夜中の事なんだな。
うしろの闇っていうのが利いてますよね。
朝顔ととっても対比されてて面白いなと思いました。
何か時間を感じさせる句でありました。
8番です。
「真つさらな」っていう言葉が自然への敬けんな思いのように感じられますね。
で「まづ」っていう優先順位もばっちり決まってると思います。
一日の始まりへの感謝っていう句でしょうか。
金田一さん先ほどの時間をね…闇が残る。
今度は光の方から見て…。
「まづ」ってのがいいですよね。
一番最初って…最初にって言いたいんだけどそこで「まづ」っていう言葉を見つけてくる。
そこがうまいなって思わせますね。
最後9番です。
朝顔の季節に朝顔の切手を貼った便りを下さった。
そういう人。
それが「あのひと」なんですね。
でそれ以外は「あのひと」についてもそれから手紙をもらった自分の気持ちについても一切何も書いてないんですよね触れていないんですね。
そこがとても大胆でおしゃれな句だと思います。
これ切手の朝顔を詠む事へのこう…何かちょっとためらいみたいのもあるんですけどもどう乗り越えたらいいでしょうか?季語としてですか?うん…ギリギリのところですよね。
でもねこの句の場合は朝顔の季節に「朝顔の切手」を貼ってあったから「あのひと」っていう言葉が出てきたんで…。
もしも違う季節に朝顔の切手が貼ってあったなら「あのひと」じゃない…「あいつ」ぐらいになっちゃいますね。
何かウケてますけど…。
面白い面白い。
確かに「あら今どき朝顔なんて不粋ね」みたいにほかの季節だったらなってしまうけれどもこの季節だから…。
その季節でなければ「あのひと」とは言わない。
なるほど。
はい以上が入選句でした。
それではここから金田一さんと私で本日の特選句を予想していきます。
視聴者の皆さんも是非一緒に予想なさってみて下さい。
こちらの九句入選句です。
金田一さんこれ澄子さんきそうだなと思うのってありますか?今澄子さんのお話伺ってて「ああそっか」と思いながら「なるほどな俳句ってのは読みがいろいろあるんだよな」と思いながら…思ってたんですが私は8番。
「朝顔へまづ」やっぱこの「まづ」っていう言葉がとってもすてき。
それでしかも「真つさらな」。
「まづ真つさらな」「ま」「真」と続く訳ですよね。
そして「日の光」。
何とも言えず開かれていく。
その音の感覚がとてもきれいだな。
「朝」から始まって「まづ」「真」で「日の光」。
この音の感覚がとてもすてきなんで僕は8番がいいなと思いました。
確かに一日の始まりへの祝福感みたいなのが「あ」っていう口を大きく開く音で感じますね。
私は自分の懐かしいのを思い出して5番の「朝顔の色水屋さんの客になる」。
懐かしかったですね。
入選句3句あるんですけどあと一句じゃあ…これは一押しというのでも結構です。
う〜ん…多分「あのひとの」9番じゃないですかね。
何かそういう人との関係っていうのが俳句って割と難しいだろうと思うんですよね。
何か人を感じさせる事って少ないですけどもこれはお話を伺っててですよ。
「おおなるほど」と思って…。
池田澄子さんはここら辺かな?ハハハ…。
はいさてどの句が選ばれるんでしょうか。
それでは本日の特選句です。
まず三席から。
はい続いて二席をお願いします。
いよいよ一席です。
すばらしい!金田一さん以心伝心というんでしょうか。
予想されたのが2つとも入っていましたね。
でも「ああそうか。
手紙の切手そうだなあ」って思いながら…。
やっぱり俳句素人はこういう「朝顔の切手」で「季語か?」と思ったりしますけれども…。
怖くてちょっとね…。
言われてみれば本当にそうだよな。
その時期の切手なんだ。
だからその切手が季語なんだっていう…。
なるほどなと思いました。
ギリギリなとこでね…俳句でね。
そこを果敢に詠んでいたところがよかったでしょうか?池田さん。
ねえ。
あの〜本当に自分をわざわざ…何も言ってないところがいいですよね。
…と思いましたね。
以上が今週の特選でした。
続いては添削のコーナーです。
ここをこうすればもっとよくなるというポイントを教えて頂きます。
今日はこの句ですね。
この句なんですけれども何を待つんでしょうね?例えば葉っぱが伸びていく茎が伸びていくのを支柱になって待ってみたい。
つるに絡まれたいとか…。
ねっ。
それから花を咲くのを待ってみたい。
それから花を咲かせて人を待っていたい。
いろいろ考えられますよね。
そう思っていくとだんだん読んでる私の方が欲が出てきまして…。
あの〜もうちょっとね「待つ」というところに情念をちょっと粒立てたくなるんですね。
でこんなふうにしてみました。
これあの〜「なって」と「待って」が口語ですよね。
最後「みたし」。
文語で決めている訳ですね。
違和感を感じる方もいらっしゃるかもしれませんけれども私はそのちょっとした違和感がむしろ何かその情念をまた更に際立ててくれるようなそんな感じがするんですけれどもいかがでしょうね?金田一さんどう鑑賞なさいますか?あえて交ぜると。
文語口語を…。
「待ってみたし」っていうんでもう「俺は待つんだぞ」っていう感じが強いですよね。
「待ってみたい」だとただぼんやりと会す句だけの感じがする。
確かに「し」にすると強いんですね。
随分違いますよね。
「みたい」っていうのとね。
変わりますね。
以上俳句作りのご参考になさって下さい。
それでは池田さんの年間テーマ「びっくりして嬉しくなる俳句」についてお話を伺っていきましょう。
今日はどんな句がびっくりでしょうか?あっ出ましたね。
はい。
あの〜虚子の俳句には本当に度々びっくりしてきました。
例えばですね「遠山に日の当りたる枯野かな」とかそういう端正な俳句をたくさん詠みながら時々とても普通の人には思いつく事ができないような主題。
それから見つけられないような小さな事ね。
それから凡人には思いつかないような言い回しですか。
言葉遣いをなさるんですよね。
それでもう本当にびっくりする度に私は俳句って面白いなって思って教えられてきました。
例えばこの俳句の一番最後を「かな」で終わる俳句ってのはいくらでもあるんですよね。
で大体は名詞に「かな」をつけるって場合が一番多いと思うんですけれどもこの場合は「えーツ屑屋でござい」っていうようなあの呼び声に「かな」がついてんでしょう?散文ならあそこをかぎ括弧で囲みたくなるところ。
「おはようございますかな」みたいな使い方じゃないですか。
もうびっくりします。
で虚子っていう人は俳句を非常に広いものに考えていて捉えていてさまざまな可能性にねこう…あるいはタブーに挑戦した俳人だというふうに私は思っているんです。
金田一さん先ほどの句いかがでしょうか?あの〜とっても面白いなと思うんですけどこれが俳句だっていう不思議なところですけど…。
私なんかが気になるのはこの「朝顔にえーツ」っていうこの「えーツ」っていうとこですね。
これが長音の後ろに小さい「ツ」が入る訳ですよね。
こういうのっていうのは…。
あの〜最近こういう表記ってのはするんですよ。
そうですね。
劇画の吹き出しの…。
漫画とかね。
でもその時代じゃないですよね。
高浜虚子といったらかなり昔の方ですけれども…。
あんまり昔と言ってもいけないのかもしれない。
でもこういう恐ろしくモダンなといいますかね革新的な表記法をやる。
でその長音の後ろの小さい「ツ」が片仮名なんですよね。
でこれもやっぱり虚子の意図なんでしょうけども。
発明ですかね?発明なんですかね。
でもこれでまねしたっていう人もあんまり聞いた事ないですよね。
だから本当に普通の取り上げる言葉ももちろん革新的ですけど表記の面でもとても冒険をする人だったんだなと。
本当に自由な発想で俳句を作られたんだなと思いました。
金田一さんには「びっくりして嬉しくなる俳句」ってありますか?はいえ〜っと池田さんの句なんですけど…これなんか本当にびっくりしちゃうんですよね。
「そんなのありか?」って思いますでしょ。
でも「明るくしてあげた」っていうこの「してあげた」の「あげた」がとっても気になるんですよね。
で何か嬉しそうなんだ。
でも誰が喜んでるんだろう?そのピーマンが喜ぶ…。
ピーマンは多分恥ずかしがるはずだろうと思う訳ですね。
あの〜切った人が喜んでる訳でもないですよね。
でも何かこう喜びっていうんですかね。
ピーマンを切る事の嬉しさみたいなものが伝わってくる。
あの〜う〜ん面白いなって…。
確かにピーマンでこういう句に出会う事はないですね。
私も一つびっくりした句を挙げましょう。
出るかな?これあの〜季語以外のところで結局言ってる事って「いや〜パリに和服でいたら目立ってさ〜」みたいなねそれしか言ってないのにそれをてらえなく言った。
私俳句始めて間もない頃出会って…。
俳句ってもっと季語以外のところに情趣みたいのを乗っけないといけないのかなと思っていたんですけどもそれでなくていいんだっていうちょっと俳句観が変わるぐらいのびっくりでした。
この句はね見られているのが「和服の私」じゃないんですよね。
そっか!「和服の私」だと全然面白くない。
「私の和服」が見られているところが俳句じゃないですか。
なるほど!そこは読み取っていなかったな〜。
金田一さんほかに何かありますか?え〜っとですね…これはですね読んだ時にびっくりして「何だ?これ」と思ったんですけども「多分だが」ってそれがずるいですよね。
「多分だが」って言ったら何だって言えちゃうじゃないですか。
「磯巾着は義理堅い」でもいいけど「サザエの殻はおいしい」とかね何だって言えちゃうでしょ?じゃ何だって言えてしまう金田一さん。
実は池田さんのリクエストで句を作って頂いたんです。
さあ出しにくくなったかな?お願いしましょう。
恥ずかしいんですけれどもこういうのを作りました。
お読み下さい。
私の句でございます。
恥ずかしい事で…。
大胆な句ですね〜。
これはどんなところから着想なさったんでしょうか?あの〜ムクゲが飛んでくるだろうなと思ったんです。
ムクゲ見てたら。
で飛んでけばいいなと思ってどうやって飛ばそうかと思ったら坪内稔典という人の「たんぽぽのぽぽのあたりが火事ですよ」。
まあ有名な俳句があって「あっ『ぽぽ』だから言葉を飛ばしちゃえばいいんだ」と思って「ムクゲのム」。
ちょっと何かこう発射台みたいな字じゃないですか。
私はね片仮名の「ム」がね三角形でしょ?これ三角じゃないですけど…三角形なんで矢印のような感じを受けました。
ところでねあの〜あれなんですよ。
実は普通の「春の宵」なんていう句でね作った時に私ご一緒したんですよ。
金田一さんがお作りになったもう一つの句…。
ところがやっぱり一筋縄ではいかなくて「春の宵」というとちょっとムードがあるでしょ?ムードがなくてね…。
「春の宵」何でしたっけ?「みそ汁の具を買いに行く」。
こういう事をおっしゃるの。
これは今日の一番のびっくりかもしれません。
みんながびっくりしたところで時間が来てしまいました。
今日はゲストに金田一秀穂さんをお招きしました。
金田一さん池田さんありがとうございました。
またお目にかかりましょう来週。
2015/08/08(土) 14:00〜14:25
NHKEテレ1大阪
NHK俳句 題「朝顔」[字]

選者は池田澄子さん。ゲストは日本語学者の金田一秀穂さん。今回のテーマは「びっくりして嬉しくなる俳句」。高浜虚子や選者の句を例にあげながら、俳句の楽しさを伝える。

詳細情報
番組内容
選者は池田澄子さん。ゲストは日本語学者の金田一秀穂さん。今回のテーマは「びっくりして嬉しくなる俳句」。高浜虚子や選者の句を例にあげながら、俳句の楽しさを伝える。【司会】岸本葉子
出演者
【ゲスト】金田一秀穂,【出演】池田澄子,【司会】岸本葉子

ジャンル :
ドキュメンタリー/教養 – 文学・文芸
趣味/教育 – 生涯教育・資格

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