2015年8月8日03時16分
■御巣鷹と歩む
2階のリビングに木漏れ日が差し込む。ベランダまで伸びた柿の木は、今年もたくさんの実をつけ始めた。
「パパが守ってくれている気がします」。谷口真知子さん(67)=大阪府箕面市=は、そっと手を寄せた。
1985年8月。日航ジャンボ機墜落事故で、夫の正勝さん(当時40)を亡くした。
ボーイスカウトの指導者で、毎週のように息子2人をキャンプやハイキングに連れ出した。真知子さんが叱るたび、2人は正勝さんに抱きついた。事故後、当時小学3年だった次男の誠さん(39)は、パパのシャツを抱いて眠った。
その秋。庭の柿の木が初めて実をつけた。5年前、「息子に食べさせたい」と正勝さんが苗木を植えていた。肥料も与えていないのに、甘かった。「パパからのプレゼントだ」。3人で泣きながら食べた。
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